EC店舗は実店舗のノウハウを盗むべき
世界初「White atelier BY CONVERSE」に注目
インターネットの普及とともに広がり、多くの人に利用されるEC。ECの進化によって、以前までは考えられなかったような物まで自宅にいながら購入することができるようになった。とても便利なECだが、実際に商品を手にとって確認できないがために販売側と消費者側での認識がずれてしまうトラブルは、ECの弱点とも言えるだろう。
そこで、そういった販売側と消費者側の温度差をなくしていくために、様々なEC店舗・企業が対策に乗り出している。たとえば、オーダーメイドシャツをECで販売するフレックスジャパン株式会社は、二枚の写真を送るだけで写真から細かい部分のサイズを計測してくれる自動採寸サービスを提供している。写真を送るだけで採寸が可能とは驚くべき技術であり、サービスを利用した消費者の感動は大きいはずだ。
こういったサービスがECで実現され始めたことで、確実に消費者にとってECが利用しやすいものになってきている。しかしそうして、ECの利便性が高まっている中でも、まだまだEC店舗が実店舗から学部べきことは多い。そう感じさせてくれるのが、コンバースジャパン株式会社(以下、コンバース)が東京都渋谷区に世界で初めてオープンさせた「White atelier BY CONVERSE(ホワイトアトリエ バイ コンバース)」である。
EC店舗を持たない実店舗の集客
「White atelier BY CONVERSE」は、自分好みでオリジナルのコンバースシューズを作ることができる、世界でもまだ渋谷店一店舗しか存在しないショップなのだ。2015年7月にオープンして以来、若い世代を中心に幅広い世代から支持を集めている。
また、オリジナルのコンバースシューズを作る際に、真っ白なコンバースシューズに自分の好きなプリントを施したり、チャームを付けたりしてアレンジを加えるのだが、この真っ白なコンバースシューズというのが、世界でも「White atelier BY CONVERSE」でしか手に入らない限定品なのだとか。その他、コンバースファンにはたまらない限定グッズが販売されているなど、”限定品が揃っている店舗”という点が、消費者の注目と購買意欲を高めているのではないだろうか。
そうして人気を集める「White atelier BY CONVERSE」だが、意外にもECサイトをもっていない。世界でも一店舗しかないことから、ECサイトでのサービスを展開させれば、全国のみならず、全世界の消費者から注目されそうな気もするが、ECに頼らずとも連日多くの人が足を運ぶ「White atelier BY CONVERSE」からはEC店舗も大いに学べる部分があるはずだ。
ちなみに「White atelier BY CONVERSE」は、販促ツールとしてSNSを上手く利用している。特に印象的なのが、Instagramの活用だ。Instagramとは画像共有SNSであり、そのオシャレさから多くの有名人にも利用されている。「White atelier BY CONVERSE」のInstagramをのぞいてみると、さすがコンバース!と言わんばかりのオシャレでファッショナブルな写真が投稿されている。
そうして、自分の店舗にあったプロモーションができていることも、「White atelier BY CONVERSE」の強みのように感じる。
EC店舗が実店舗から学ぶこと
実店舗を持たないEC店舗さんの話を聞いていると、「実店舗をオープンさせるだけの費用や運営費がかかる割に、ECよりも大幅に上回る集客数を見込めない。」という声が多く上がる。たしかにECの良さは場所をとらず、消費者へのアプローチも地域が限定されない点だ。
そして、小売業界にEC化の流れが押し寄せているのも事実だ。先月は、スウェーデンのファッションブランド「H&M」が日本上陸から8年も経った今になって、ECサイトの運営を開始させたばかり。
しかし、「White atelier BY CONVERSE」のように、ECサイトを運営せずとも多くの人から支持を集める実店舗も存在している。たしかに、”コンバース”というブランド力や、”限定品”の品揃えなどが、消費者の関心を惹いていることはベースとしてある。ただ、そのうえで、斬新なサービスの提供や自分の店舗に合ったSNSの活用法など工夫されている部分が、元々の人気に拍車をかけているのは間違いない。
そういった実店舗がどのように消費者の心を掴んでいるか、EC店舗は注目し、ノウハウを吸収するべきなのではないだろうか。