後払い決済とは?EC店舗が売上を伸ばすための常識集

福島 れい

 EC店舗において複数の決済手段を揃えておくことは、売上を伸ばす大きな要因になると言われている。多数の決済手段があるが、特に新規顧客の獲得に効果を発揮するとされる「後払い決済」をまとめた。

後払い決済とは?

後払い決済とは?
 後払い決済とは、EC店舗で注文した商品が購入者の手元に届いた後、請求書を使用してコンビニや銀行、郵便局などで支払いをする決済手段のことをいう。EC店舗での決済は多くの場合、商品の到着より”前”に行われるのに対し、後払い決済は商品の到着後に支払いができるため、安心感があるとして購入者から人気を集めている。EC店舗としても、購入者から人気が高い決済手段を備えることで、結果、購入率が高まるとして導入店舗が増加している。

後払い決済のニーズ
 総務省が発表する「平成25年通信利用動向調査」によれば、インターネットで購入する際の決済方法として、63.7%が「クレジットカード払い」、43.8%が「代金引換」、38.9%が「コンビニでの支払い」、30.8%が「銀行・郵便局の窓口・ATMでの振込・振替」を選択するという(複数回答)。このうち「コンビニでの支払い」や「銀行・郵便局の窓口・ATMでの振込・振替」の多くは後払い決済を利用していると考えられる。かねてよりEC店舗を開くなら必須と言われてきた「クレジットカード払い」だけで満足せず、後払い決済も備えておくべきだとわかる。

後払い決済の仕組み
 後払い決済は、未回収リスク保証の形をとっている場合、サービス提供会社が、EC店舗へ商品の購入代金を立替払いし、購入者に商品が届いた後、請求を行う。購入者は商品到着後に届いた請求を、サービス提供会社に支払う仕組みになっている。購入者はコンビニや銀行・郵便局などで支払いができる。

後払い決済の盛り上がり
 ECサイトで取引を行う上で決済は欠かせないが、決済サービスもはじめから現在のように充実していたわけではない。1960年代に提供が開始されたクレジットカードを皮切りに、インターネット、ECサイトの普及と共に様々な決済サービスの提供が進んできたのだ。それは後払い決済においても同様で、2002年にネットプロテクションズが「NP後払い」の提供を開始、その後、2007年にキャッチボールが「後払い.com」、2012年にニッセンが「ニッセン@払い」、2013年にGMOペイメントゲートウェイが「GMO後払い」の提供を開始している。さらには宅配の分野から、ヤマトクレジッファイナンスが「クロネコ代金後払いサービス」、佐川フィナンシャルが「SAGAWA後払い」を提供するなど、EC市場の盛り上がりに伴い、後払い決済サービスも充実している。



購入者から見る後払い決済

購入者から見る後払い決済

後払い決済 購入者のメリット
・クレジットカードを持っていなくても購入できる
・安心感が高い
・注文から支払いまでに時間的猶予がある
・支払可能場所が多い

 ネットプロテクションズが行った調査によれば、初めて利用するEC店舗で商品を購入する際、最も利用したい決済手段として、約60%のユーザーが”後払い決済”と回答したという。この理由の1つとして「初回購入のハードルの高さ」が挙げられる。はじめて購入するEC店舗においては、「本当に商品が届くのだろうか?」「クレジットカード情報などが流出しないだろうか?」など、対面しない購入であるが故の心配が生じることとなる。この心配に対し、「商品が届いた後」「クレジットカード情報などを入力せずに」購入できるという後払い決済の特徴が好まれているとの見方ができる。

 また、後払い決済においては、支払い期限が商品到着後2週間程度で設けられることが多く、注文時点での手持ちがなくとも購入できる、コンビニや銀行などで支払いができるため、自宅に現金を用意する必要がない、高校生をはじめとするクレジットカードを持たないユーザーであってもEC店舗で購入できるなど柔軟な支払いが実現するという点においても購入者からの評価が高い。


後払い決済 購入者のデメリット
・手数料がかかる
・支払いに手間がかかる

 クレジットカードを利用して決済を行う場合、支払手数料は無料としているEC店舗が多いのに対して、後払い決済を利用する場合には数百円の手数料が発生するEC店舗が多い。安心感がある後払い決済ではあるが、この点は購入者にとってデメリットと言えるだろう。また、コンビニや銀行など支払ができる場所は多いものの、支払用紙を持って支払いに行くということを手間に感じる購入者もいるだろう。

EC店舗からみる後払い決済

後払い決済 EC店舗のメリット
・新規顧客の獲得の機会が増える
・未回収リスクがない
・後払い決済の請求書の発送作業が不要
・入金確認の手間がかからない

 ネットプロテクションズの調査によれば、希望する支払方法がない場合「購入をやめる」「希望する決済手段がある他のEC店舗で購入する」などの理由で約70%のユーザーが「離脱する」と回答している。つまり、様々な決済手段を備えておけば、それだけかご落ちを防ぐことができるのだ。初回購入のユーザーに対して安心感を与える効果を持つ後払い決済では、新規顧客の獲得に期待ができる。

 また通常、商品到着後の支払いを認める場合、代金の未払いのリスクが生じる。しかし後払い決済代行サービスにおいては、未払い金は後払い決済代行会社が保証してくれ、EC店舗は未回収リスクを負う必要がないのだ。代行会社は請求書の発送作業も行ってくれるため、出荷や集客など様々な業務に取り組むEC店舗にとってはメリットが大きいと言える。

 銀行振込をはじめとする前払い決済では、EC店舗は注文を受けた後、入金確認をし、確認が取れてはじめて商品の発送作業ができる。その間、注文情報や在庫などの管理が必要になり手間がかかるのだ。代行会社が請求書の発送から代金保証まで行ってくれる後払い決済を利用すれば、注文を受けたその日に発送でき、スムーズに注文・在庫の管理を行うことができる。


後払い決済 EC店舗のデメリット
・導入時、後払い決済代行会社との契約・審査に時間がかかる
・後払い代行手数料がかかる
・自店が利用するカートやシステムが、導入したい後払い決済サービスと連携している必要がある

 EC店舗のメリットとして未回収リスクがないことを挙げたが、見方を変えるとそのリスクは後払い決済代行会社が負っていることがわかる。それゆえに、信頼に足る店舗なのかどうか商材や顧客属性などの審査が行われるのだ。審査が終わり、利用を開始するまで時間がかかる点は考慮しておくべきだろう。

 後払い決済に限ったことではないが、代行サービスの利用には手数料が発生する。月額の固定費、取引ごとに発生するサービス料に加え、請求書発送にも手数料が発生することは頭に置いておきたい。

 自店で利用しているカートやシステムとの連携についても確認が必要だ。後払い決済の導入で作業の効率化を図ろうと思っても、カートやシステムと連携ができなければかえって手間がかかる可能性もある。


記者プロフィール

福島 れい

ECのミカタ編集部に所属するバドミントンと和服、旅好きの記者、通称れーちゃん。ミニ特集「アパレルECの未来(https://goo.gl/uFvr2C)」等、これからEC業界がどんな風に発展していくのか。に注目しながら執筆しています。2017年の執筆テーマは、”私にしか書けない記事をタイムリーに”。

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