郵便ネットワークは EC業界の物流と 近いところにある。

ECのミカタ編集部

長きにわたり培われてきた郵便のネットワートと信用。日常の暮らしにとけ込んでいる日本郵便のサービスは、EC業界の今後にどう馴染みどう活用していけるのか? 日本郵便(株)郵便事業総本部営業本部ゆうパック事業部長(現 日本郵便(株)ソリューション企画部長)
の長谷川氏に、EC業界の物流の特徴と日本郵便の今後の戦略をうかがった。

——日本郵便では、EC業界のこれからをどう見ていますか。

政局などと絡んでくるところではありますが、非常に伸びていく業界だと思っています。EC業界は日本郵便のネットワークと近いところにあり、ゆうパックもその発展の一助になれればと、私たちも将来性に期待しております。

——日本郵便の「ものを運ぶ仕組み」は、一般的な物流会社と違うのでしょうか?

基本的には同じかたちです。ただ、日本郵便の特長としては、バイクで毎日ご家庭へ郵便を運ぶ「郵便配達」をやっていることが大きい。基本的なネットワークとしては、自動車で運ぶ「ゆうパック」と郵便は別ということになっています。しかし中間部分で、ハブからハブへゆうパックと郵便を一緒に輸送することによって、効率的なネットワークを作っています。最近ではゆうパックでも、通販業界で「薄物」「小物」と言っている、本やCD・DVDなど、郵便と荷姿が似ているものの配送が増えています。そういったものを郵便のネットワークで、バイクで運ぶということも増えています。

——ECショップには、メール便などポスト投函で商品を送っている事業者も多くいると思います。

日本郵便のメール便は、そのままポストに投函できて郵便に近いかたちで荷物を運ぶことができます。メール便のシェアは日本郵便が50%以上あり、人気の理由のひとつは「転居届」にあります。皆さん引っ越しの際に、郵便局に転居届を出されたことがあると思いますが、この転居届はゆうパックなどの荷物の転居先への転送にも対応しています。届けを出していただければ、日本郵便のメール便やゆうパックを1年間転送しますので、これが荷主様に大変に好評です。荷主様の立場からすれば、お客様が転居されていて送った荷物が戻ってくると、転居先を調査して再発送するコストがかなり厳しいものになっている。その点、郵便局であれば転送サービスがあるということで、ご支持いただいております。

——ECショップではアパレルや雑貨、化粧品、健康食品などが多いジャンルですが、それらも規定に合えばポスト投函で運べるんですね。

薄いものであればポスト投函のメール便で運べます。ポストに入らなくても、小物であれば小回りがきくバイクで運べるのでコストが抑えられます。これは他の事業者では無いかたちです。通販は昔から、アパレルや家具などの大きいものが中心でしたが、最近ではDVDや健康食品など小さいものが増えています。そういうものが、ECとしても特にお客様と馴染むのではないかと考えています。

——楽天市場の事業者向けに、海外販売を支援するサービスをされていますね。

日本郵便はバイクでの郵便と同様に、国際的な面でも昔からネットワークを強化してきました。EMSは世界120以上の国や地域に、荷物をスピーディーに送る国際郵便のサービスで、海外の郵政事業体と連携してサービスを行っています。最近ではECでも外国から直接輸入するとか、日本のものが欲しいという外国の方に直接輸出する、という形態も発展してきています。そういった荷物も昔から取り扱っていましたが、楽天市場とのシステム連携による国際郵便の発送ラベルやインボイス作成支援サービスも、非常に好評いただいています。

——海外へ直接商品を送れるECサイトのリンク集も設けていますね。

海外のEMSのセールスパーソンがお客様のところを回っている時に、「ポータル的なサービスが欲しい」というニーズが大きくありました。サイトの作りとしてはまだまだですが、海外に目を向けるEC事業者様を支援していきたいと思っています。

——EC業界に向けた今後の戦略をお聞かせください。

これから郵便の量は、なだらかに下降していくでしょう。一方、荷物の量はこれからまだまだ増えていく。輸送はかつての汽車からトラックへと切り替わっていきました。日本郵便では、駅前の郵便局からインターチェンジ近くの物流施設へと、時代に合わせたネットワークの再編を進めています。日本郵便はこれまでは配送だけをやってきました。一方で、ニーズとしてはもっと上流部分、荷物の加工やDMでのPRまで含めた戦略についてもお問い合わせをいただいています。今ではDMによるダイレクトマーケティングや、レンタルしたものを専用封筒でポストに投函するという回収物流のサービスも行っております。ECショップでも、お客様のところに「どう届けるか」ということは色々考えると思いますが、お客様から「どう回収するか」という時にポストをご利用いただくのはひとつの方法だと思います。ポストは歩いていればあるもので、皆さん自宅から一番近いポストは把握されていると思いますから。返品や不良品を回収するパッケージも提案しております。今後は配送にとどまらず、物流加工、さらにその前段階の広告宣伝からマーケティングまで、一括して提供するサービスを提供していきます。


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