「川下」から「川上」へ 静脈を活用する事業者が 間違いなく伸びる。

ECのミカタ編集部

ECの潮流、仕組みの変化とともに浮かび上がる物流課題を、いかに解決していくのか。物流でEC市場を支える佐川急便(株)は、今までとは全く違う角度からECの今後を見つめている。東京本社商品企画部長 黒川氏にお話しをうかがった。

——物流の立場から、EC業界全体をどう見ていますか。

今後、少子高齢化など様々な環境変化、社会変化に付随してEC市場は、当然のことながら拡大していくと考えています。また、サービスが多様化し事業規模が大きくなればなるほど、EC事業者様の課題は多くなり、その内の一つがロジスティクスだと思います。
事業規模に応じて、どのタイミングでどこまでを自社で、どこをアウトソースするかなど、投資、コストに大きく影響し、その結果が利用者の利便性に大きく影響してくると考えます。

——今後、EC業界の物流はどうなっていくと思われますか。

最近では、事業者様が如何に消費者様のメリットを理解し、ユーザビリティを高めることで成長を図る傾向が伺えます。
このような観点から返品などに対する利便性を高めることで、ECに対するイメージも変わってくると思います。EC業界の物流は、川上から川下に流れる動脈物流の仕組みは出来上がっていますが、川下から川上へ上っていく静脈物流の仕組みは、確立されていないのが実態です。

今後、回収した商品の物流、更に回収した商品をどうするのか?
中古市場・リサイクル市場(二次市場)も含めた物流改革が必要不可欠になってくると考えています。

我々、物流事業者も従来のサプライチェーンからバリューチェーンまでを考慮したロジスティクス提案が必要となり、今まで運送事業者としては、センター機能からエンドユーザー間の配送が主領域と思われがちですが、生産元、メーカーなどからセンターに入るまでの調達物流、ラストワンマイルである宅配便、そして回収物流と言った循環型物流モデルに変化してくると思われます。

——それは全く新しい視点ですね。

返品、回収については、従来、販売側にしてみるとあまり良いものではなく、多いより少ない方が良い。その結果、サイト内でもなるべく返品については目立たないように訴求する傾向が強かった。
しかし、最近では、購入者様のユーザビリティを高める事で、リピーターに繋げて行くため、返品・回収対応も重視していく流れがあります。

実は、サイト内での返品手続きについては、ショップ様側、購入者様側双方にとって手間と負荷作業が発生しています。購入者様には住所など様々な情報を入力していただき、ショップ様は、購入商品との紐付けから運送会社への回収依頼作業など双方にとって非常に使い勝手が悪い。更にシステム上、購入者様が回収申込をする場合、配送先の運送会社の会員登録をしないとならない。その結果、近くのコンビニなどから送り返すなど購入者様に依存した回収対応となっています。故に不親切、使い勝手が悪いとなりその手間が直接、ショップ様へのブランドイメージとなっていきます。
そこでECショップのシステムと連携させていただいて、会員番号もしくは商品場号と引取の希望日をいれるだけで回収に伺い、必要に応じて立替で返金処理までも行える「回収サポートシステム」というサービスを開始しました。

——このサービスが誕生したきっかけは何だったのでしょう。

実際に通販事業者様からユーザビリティの悪さがストレスになって、リピートの購入者様が返品回収をきっかけに離脱してしまう、ワンクリックで簡単に返品の申込ができる仕組みが必要と、お客様の声から生まれたサービスです。
また、弊社ではリコールや自主回収などの対応としてトータルソリューションの一つで商品代金の返金を行うサービスを先行して展開していたので、これらの既存サービスをクロスする事で更にお客様の立場で利便性が向上したサービスになっています。

——2014年度の動きや、5年後10年後のビジョンをお聞かせください。

中長期的に見て、このEC業界が衰退することはないでしょう。ただ、社会、経済、様々な環境変化にともない主力となるプレイヤーは変わってくると思います。返品回収、買い取りなどセカンダリーマーケットの需要も見込まれる中、動脈だけではなく静脈を上手に利用し、アフターを拾える事業者様が成長するのではないかと考えています。
佐川急便では、静脈物流専門のセクション(リバース・ソリューション課)があり、従来の3PLに併せて回収物流モデルを一緒に構築することが可能です。


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