緊急対談! 新しいEC時代を切り開くライブコマース。成功の鍵は○○に!?
中国で白熱中のライブコマース。ユーザーは3.5億人にのぼり、日本でいうインフルエンサーのような役割を持つ「KOL」の中には1億円以上稼ぐスターもいるという。ライブコマースは日本ではまだなじみが薄いものの、生中継でユーザーとやりとりしながら商品の魅力をリアルに伝えられ、効果測定がしやすいなどメリットは多く、EC事業者なら今のうちに注目しておきたい。
ライブコマースのCMSパッケージ「Live kit」を運営するスタープ株式会社 代表取締役CEO 渡邊裕馬氏と、中国のライブコマース事情に詳しい株式会社オプトホールディングの上席執行役員 吉田康祐氏にお話を伺った。
ECトレンドの最先端「人格EC時代」が中国にきている
渡邊氏 先日、中国(北京)にビジネス視察に行ってきたばかりなのですが、とにかく現地の企業がものすごいスピードで成長していることに衝撃を受けました。市場価値も日本では考えられないほど大きく、たとえばキュレーションメディアの頭条(Bytedance)という会社は、創業5年で2兆円の時価総額、3千億の売り上げがあり、社員数は1万人超。ちなみに社長は僕と同世代の36歳です。個人的には同世代で、世界的に輝いている経営者が中国にいる、ということにも驚きでした。
一般に、中国は安く業務を委託できる市場というイメージが強かったと思いますが、あるビジネスの専門家にいわせれば、すでに中国のIT技術は日本に勝っているそうです。
僕らの時代でITを成長させていかないと、僕らの子どもや孫の時代には、さらに日本の技術は遅れ、今よりもっとガラパゴス化してしまうでしょう。だから僕らが新しい時代を、具体的にいえば中国を超えるような企業価値を作っていかなければいけない。その手段のひとつが、ライブコマースだと僕は考えているんです。
吉田氏 中国ですでにライブコマース市場は大きく、2016年でベンダーは300社近く、ユーザーは3.5億人にのぼります。市場規模は50億ドル、約6千億円の市場まで成長しています。
なぜこんなにライブコマースが流行ったかというと、いくつか理由はありますが、中国ではECの進化が大きく、EC化率は15%です。対して日本はたったの5%。中国ではいかにネットでものを買うことが習慣化しているかがわかると思います。ネットでものを買うことが習慣化した一方で偽物が販売されていたり、写真だけでは商品の品質を判断しにくい、という課題をこのライブコマースが解決したというのが大きいですね。
また中国のECトレンドの流れとして、最初に「大手プラットフォーム時代」がありました。大手プラットフォームに出店、出品すればものが売れる時代です。その後に「ライフスタイル特化時代」が訪れました。たとえば今まで大手プラットフォームで化粧品を買っていたユーザーの、「もっと化粧品のことを細かく教えてくれる店で買いたい」という需要が高まり、専門ECが流行ります。
そして、中国では次の段階である「人格EC時代」にきています。これに欠かせないのがライブコマースです。とくに90年代以降生まれの「90後(ジョウリンホウ)」と呼ばれる世代は、商品を買う際にスペックよりも、自分とライフスタイルの似通っている憧れの人が使って「いいよ」と勧めてくれるものを買いたがる傾向がある。そして商品の魅力を30秒とか1分程度の短時間で、わかりやすく知りたがっている。こうした需要と、商品を勧める魅力的なKOL(Key Opinion Leader)と呼ばれる人たちの登場によって、中国ではライブコマースが広く普及してきたわけです。
年収1億5千万の人も! ライブコマースに欠かせない「KOL」とは?
渡邊氏 日本では信じられないことですが、中国のライブコマースでは、商品やブランドよりも、発信者であるKOLが主役なんですよね。
吉田氏 商品に、KOLの人格を付与して発信する手法が受けて、ものが売れています。たとえば、仕事や育児に忙しくて困っているという設定のKOLが「このフェイスマスクを使うと、スピーディーで効果的に夜のスキンケアができて助かるの」といったことをライブコマースで発信する。すると、同じように忙しい女性が自分に重ね合わせながらそれを見て、商品に価値を感じ、購入するのです。
渡邊氏 KOLは、新しい職業として確立されていて、先日視察してきた花椒(Huajiao)のTop10の平均年収は1.5億稼いでいるとか。
吉田氏 ユーザーはKOLをアイドルのような目で見ていると思います。ライブコマースが受けている理由のひとつに、普段絶対コミュニケーションがとれないような憧れのKOLとやりとりができる点もある。そこにEC機能も付帯されて、ライブコマースが市場として成長しているわけですね。
以前、日本のイベントで中国からKOLを招き、タオバオにつないで、中国のユーザー向けに日本の商品を販売してもらったことがありましたが、40分程度の配信で42個のものが売れ、収益は10万円になった。ユーザー心理としては衝動買いに近い感覚かもしれませんね。時間を長くかけたからといって売れるものではない。いかにわかりやすく、発信者が伝えるかがキモなんです。
双方向コミュニケーションで商品をリアルに紹介、効果測定も正確に
渡邊氏 ライブコマースの強みは、嘘くささがないところだと思います。一方通行で飾り立てた商品画像や情報を見せるようなテレビショッピングと違い、ライブコマースでは、発信者とユーザーが双方向のコミュニケーションとることで、ユーザーに商品の魅力を伝えられる。たとえばユーザーから「その服は、身長が低くても着られますか?」と質問がくれば、発信者が「私も身長150cmだけど、こんなフィット感だよ!」などリアルなコメントで返し会話することが可能です。短い時間で答える必要があるから取り繕うことはできないし、そもそも発信者も嘘をつけば自分の信頼度に関わってくるので、誠実に答えるんですね。ユーザーは商品を深く理解した後で購買するわけですから、満足度もおのずと高くなります。
吉田氏 中国のKOLの中には企業から出演料をもらわず、自分で商品を買い取り、ライブコマースで販売している人もいます。中国ではそうしたエコシステムできあがりつつあるんです。
KOLが自分の仕事を継続するためには、ファンとのエンゲージメントが大切ですから、そもそも自分が納得した商品しか仕入れないし、ユーザーからの質問にも真摯に答えます。
渡邊氏 ライブコマースは、効果測定が正確にとれる点もメリットだと思います。テレビの視聴率などとは違い、配信のPV、UU、CVなどの数字が明確になります。ライブコマースの文化が広がれば、広告のあり方も変わってくると思います。
いち早くライブコマースにチャレンジするために、今できること
渡邊氏 弊社ではライブコマースを手軽にスタートできる「Live kit」を運営していますが、本当に売れるのかどうか半信半疑な事業者さんは多い。そこで事業規模問わず、低リスクでライブコマースにチャレンジしていただけるよう、今後はよりイニシャルコストを抑えるなどの工夫をしていく予定です。
吉田氏 中国は「まずやってみよう」という考え方が浸透していて、PDCAが日本の数倍速く回る印象です。一方、日本で新しいことを成功させるには、まず文化を浸透させて、マーケットをつくらないと難しい。ライブコマースについても同様のことがいえると思います。
日本でも、すでにトレンドに敏感な企業はKOLのような存在の育成に着手するなど、ライブコマースに積極的な動きを見せており、EC業界全体としても今後ライブコマースがくるという仮説を立てています。明確なファクトはまだありませんが、今後時間をかけて市場は成長していくと思います。
ですから今EC事業者さんがやるべきことは、最低限のリスクをヘッジしながら、「Live kit」などを活用して、とりあえずライブコマースを試してみることだと考えています。いざライブコマースが流行したときに、今から走らせて仕組みをつくりあげていった事業者さんと、そうでない事業者さんとの間には大きな差が出てくる。やったもん勝ちだと思います。
渡邊氏 僕はEC事業者さんや、ものづくりに関わる人で、KOLのような存在になりうる人もいると思うんです。
また、今さかんにうたわれている地方創生やダイバーシティを実現するには、一人一人の生産性を上げて、個が活躍できる環境をつくることが必要。そうした意味でもライブコマースで個人が発信する文化が広がれば、日本経済もよりよくなってくるのではと思います。
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定員:50名
申込期限:2018年01月23日(火)