THE WEB EC SUMMIT 2014開催、体験レポート 「ウェブサイトはできた。次はどうする?」

ECのミカタ編集部

EC時代を生き抜くプロ達のトークセッション ウェブサイトの未来を考える「次」への想い

EC時代を生き抜くプロ達のトークセッション ウェブサイトの未来を考える「次」への想い

9月25日(木)、都内品川コクヨホールにて「THE WEB EC SUMMIT 2014」という、EC業界に身をおく事業者のための一大セミナーイベントが開催された。
THE WEB EC SUMMIT 2014とは、「BASE」、「STORES」、「Bind Cloud」、「minne」、「Jimdo」というウェブサイト、ネットショップの分野において、近年新しい情報発信や販売手段として選ばれているサービスが一堂に会したイベントである。本サミットでは、各サービスの事業責任者や経営者が、ウェブサイトオーナーやネットショップオーナーにオンラインビジネスで成功するためのヒントを伝え、各企業の経営者が考えるウェブサイト、ネットショップにおける未来を共有するという趣旨でプログラムが組まれている。
冒頭のトークセッションを中心にレポートしていく。当日の空気感を感じて頂けたら幸いである。

オンラインビジネスにおける「成功」とは? 中小機構/販路開拓支援アドバイザー 河野 吉雄氏

オンラインビジネスにおける「成功」とは? 中小機構/販路開拓支援アドバイザー 河野 吉雄氏

冒頭のトークセッションでは、中小機構の販路開拓支援アドバイザーの河野吉雄氏が登壇した。オンラインビジネスにおける成功の定義を、インターネットの黎明期から約20年ほどの普及の流れを振り返り、今どういう位置付けに変わってきているのかということの説明を踏まえて考えていく。
具体的な数字が続く。
2000年前半のインターネットの利用者数は4,700万人だったが、現在では1億人を超えている。さらに、インターネット広告費は2005年で3,777億円であったが、9,381億円という市場規模にまで拡大してきている。これより伸び率が高くなっているのは、スマホ所有率。2010年の時点では10人に一人持っている数字だったものが、昨今では二人に一人を超え、半分以上のユーザーがスマートフォンを所有しているという数字が出ている。その他、データの国内の流通量は、2005年から現在で比較すると1千%以上まで膨れ上がっている。これは、パソコンでインターネットをしていたという時代からモバイル端末が登場し、家電などもネット接続が可能になった現状が背景にある。
これらの背景を踏まえ、20年ほど前からの変遷を分かりやすくたどると、

・調べる、利用する / 1995年~2000年代前半
(パソコン、ポータルサイト、EC、掲示板、検索エンジン、テキスト、写真)
例:Google、Amazon、2ちゃんねる、Yahoo!、楽天

・参加する、繋がる / 2000年代前半~2000年代後半
(携帯電話、ブログ、ECサイト、mixi、CGM、wiki、Flash、動画、ポッド)
例:YouTube、Hatena::Diayr、mixi、WIKIPEDIA、livedoor Blog、価格.com

・参加する、生み出す / 2000年代後半~現在
(スマートフォン、アプリ、ソーシャルメディア、クラウド、キュレーション)
例:facebook、LINE、twitter、Gunosy、GREE、DeNA

このような流れとなっていることが分かる。ユーザーが能動的なアクションを起こしインターネットを利用するという初期段階から、コミュニティに参加し、ネット上で繋がれるようになり、その延長として現在は繋がりの中で新しい価値や体験を生み出し、共有したりできるようになってきている。
このような、誰もが自由に発信が行えるインターネットで、どのような価値を生み出すことが「成功」といえるのだろうか。

ネットショップで売上アップ、海外への販路拡大、ファンとの交流や囲い込み、時間や場所を気にしない顧客サポート。様々な成功要因が考えられるが、ここに共通的に当てはまることは何になのかと考えた際、Web上でのコミュニケーションに制約やストレスがなくなってきた現在だからこそ「ユーザーファースト、顧客目線でのWeb運営」という考え方が大切なのでないかと河野氏は定義する。

この定義を3つほどに要素分解し、ポイントを押さえてみると

1:お客様との接触機会をたくさん持つ
~お客様が求めるタイミング、メディア、ツールでコミュニケーション~

2:お客様のメリットを具体的に伝える
 ~運営側でなく、お客様が主語になる表現やコミュニケーション~

3:お客様を楽しませ、ファンにする
 ~ストーリーや体験といった価値を提供し、価格や機能以外で差別化~

ということが考えられる。
これら各要素の実例を踏まえ、考察を深める。

1:新潟県のパン屋さん「サン・フォーレット」の事例。
新潟県三条市に店舗展開する「サン・フォーレット」というパン小売店では、ユーザーが求めるタイミング、メディア、ツールでコミュニケーションを取れるよう動きかけ、店舗だけでなく、Facebookやメルマガ、地元メディアへのプレスリリースなどにも積極的に力を注ぎ、ウェブサイト単独だけではリーチをかけれないユーザーに対してうまくコミュニケーションを取りに行った。タイムセールや定休日などの情報をリアルタイムで発信し、新商品の紹介はもちろん開発中の商品も披露し、うまくいかなくて悩んでいるなど投稿。地方ならではの特色を活かし、親近感と人間味をアピールし共感を得るやり方での情報発信とコミュニケーションを行った。

2:大阪府の塗装店「永建工業」の事例。
戸建て住宅の塗装を下請けで行う業者の永建工業では、「説明がよく分からない」「営業がないか不安」「以前の塗装業者に不信感」「塗装業者選びに疲れた」など、ユーザーの「結局どこに頼んだらいいの?」というクエスチョンを、ユーザー目線で解決する取り組みを行った。運営が主語の「私達はこんな事ができます」という提案ではなく、ユーザーを主語にしての表現で「この悩みに対してはこうできます」と具体例を並べるなどの工夫をする。「よく、お客様目線とは言われているが、できているようでできていないことが多い」と河野さん。初期の頃は2~3ヶ月に一回くらいしか来ていなかった問い合わせや見積もり依頼が、今では20~30件ほど来るようになったという。

3:雑貨や食器を販売する「北欧、暮らしの道具店」の事例。

海外から輸入した商品を販売するECサイトの「北欧、暮らしの道具店」では、差別化を計りにくい商材を扱っているため、実際に運営スタッフが商品を使ってみて日記やコラムでライフスタイルの提案など行い、様々なテーマでお店や商品の魅力や使い方を伝える方法で差別化を試みた。雑誌を眺めているようなユーザーエクスペリエンスを付加価値として与えることにより、ブログ作者との共有感を持ち非常に人気のあるサイトへと成長していったという。ブログやコラムによる集客も、よく言われることだが実際にコンバージョンにつなげることは容易ではない。真のユーザー目線の有無が問われるシーンである。

この3つの要素と実例をまとめると、ビジネスをオンライン化していく上で「ユーザーファースト、顧客目線でのWeb運営」という考え方が重要になるテーマであると言える、と河野氏は締めくくる。Webサイト構築ツールではなく、ユーザー(お客様)をもてなすための接客ツールという考え方が、様々な価値観で共通した「成功」を手にする一つのキーになるだろう。

この後、河野氏のトークセッションのテーマであった「ユーザー目線」をサービスに取り入れた各社による、「ネットショップ、Webサイトを簡単に作りカスタマイズできる」ツール紹介プレゼンへと続いていった。

・小さな可能性を大きな力へ ~BASE~
 BASE株式会社/COO 進 浩人氏

・STORES.jpのサービスデザイン
 株式会社ブラケット/デザイナー 河原 香奈子氏

・BiND クラウドが掲げるWebの未来
 株式会社デジタルステージ/
 代表取締役 熊崎 隆人氏 / プロジェクトマネージャー 弓削 伸弘氏

・売りたいものでなく知りたいことを提供
 株式会社KDDIウェブコミュニケーションズSMB事業本部/本部長 神森 勉氏

河野氏のセッションで提唱された視線をもって各社のサービスプレゼンを傍聴すると、単なる機能やツールの説明というカタチではなく、これらを使ってEC事業者がどのようにしてユーザーをもてなすのか、という明確なポイントが見えてくる。
続くパネルディスカッションでは、河野氏が振り返った変遷と提唱する視線、各社プレゼンにより見えてきたポイントを切り口に、「オンラインビジネス成功のためのツールとは?」「ネットショップの変遷から見る、ネットショップ成功のカギ」というテーマについて討論が展開された。

EC事業者として経験が長くなればなるほど、できている、やっているつもりになってしまいがちな「ユーザー目線」であるが、今一度見つめなおし、真摯に取り組んでいる事業者の言葉や実例などに耳を傾けると、改善の余地が見え隠れしないだろうか。オンラインビジネスにおける「成功」について考えるとき、ユーザーの立場と気持ちになって自社を眺めてみると、意外な答えが潜んでいるかもしれない。


取材/文/写真:島名


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