経営戦略としてのCRM−−マーケティング4.0時代のキーワードは間違いなく“ドローン”
CRMのリーディングカンパニーであるアーカス・ジャパン株式会社。人工知能で多段階分析を行うパーソナライズCRMシステム『EMOROCO』を提供する同社は、デジタル時代のCRMについて啓蒙を続けている。同社が、ドローン向けIoTシステムソリューョンを開発・販売するリベルダージ合同会社と提携し“CRMとドローンを結びつけた”という情報をチャッチし、代表取締役社長 松原晋啓氏に突撃した。
「ドローン前提社会」目前!今すぐ準備を始めなければ遅れを取ることになる
2017年度に503億円だったドローンの市場規模。これが2024年度には3,711億円になるとも5,000億円に達するとも言われている。しかし、現状でドローンを活用している企業はごく限られているだろう。
「ドローンをどう取り入れて活用するのか、今はまだ誰もイメージがつかないと思います。だからと言って『自分たちには関係ない』と言っている会社は、これからはやっていけないでしょう。今年度中にも無人地帯での目視外飛行の許可が経済産業省から下りる見込みで、そうなるとドローンの利用は一気に加速します。しかしそれから動き出したのでは遅い。今から準備をしておく必要があります。ドローンの運航には国土交通省の許可が必要ですが、リベルダージが提供する「DroneDeploy」のように自動運航システムも揃っていて、これからさまざまな場面で使えるツールになる。ロボットと同じリモートセンシングのIT技術ですから、CRMに活用することができるのです」松原氏はそう力説する。
ドローンで上空から撮影された映像などは近年よく見かけるようになったが、一体どうCRMに活用できるのか。答えは、顧客理解をテクノロジーで推し進めてきた同社だけがなし得た、世界初の「ドローン×CRM」という視点がある。
あらゆるチャネルの情報を集め、分析し、活用するCRMとドローンとの接点
さまざまなチャネルからお客様の属性や特徴を人工知能が学習し、パーソナライズ化してサービスへとつなげるCRMソリューションがEMOROCOだ。松原氏によるとドローンはそのチャネルの1つとなり、お客様の理解をより深めることができるのだと言う。
「お客様を理解するためには、どの経路を選択したのかを知ることが大切です。そのためにはあらゆるチャネルが必要で、その1つが実店舗に設置される顔認識センサーやドローンなのです。そしてそこから、どうしたら買ってくれるのか、買わないお客様にどうアプローチしたら買ってくれるのかを導き出します」と松原氏は言う。
どういう動線で商品を見て購入に至ったのか、あるいは離脱したのか。実店舗であれば、顧客情報と紐づけることはできないものの、同一人物が何回来店しているのかや購入の可否などまでデータとして取ることはできる。
EMOROCOを使えば複数のチャネルから集めてきたデータを分析し、そこからさらに共通点を見つけ出したり、傾向を導き出したりする。
「CRMは経営戦略の上位概念。ECはCRMの数あるチャネルの中のひとつですが、CRMの持っているデータは使い方次第ではかなりECの役に立ちます。EMOROCOでWebチャネルを総合的に管理し、集めてきたデータを人口知能で分析して、お客様について深掘りをしていくのです。この流れの先に、ECやコールセンター、人工知能のロボット、そしてドローンもある。
リモートセンシングのロボットで物流改善するのと同じで、マーケティングオートメーションの全ては分析にあります。いかに多くのチャネルからさまざまな情報を集めてくるかが大切で、EC・実店舗・メールのやり取りなど、その全てを集めてこなければ分析できません。EMOROCOは人工知能を使うので、もっと広い全方位的な情報が必要になりチャネルの数が重要になります。
CRMはフロントエンドで、お客様と接点となる先頭部分とその後ろとはつながりにくいですが、それをつなげることがEMOROCOでありドローンなのです。そして裏側の生産管理の部分も含め、この全てを管理する仕組みが本当のCRMと言えます」。
ドローンをどう活用するかは企業次第。「こうしか使えない」はない!
たとえばドローンの活用方法の一つに、トレーサビリティでの活用がある。これは、農家が生産したものを正しく安全に消費者に届けられているかを明確化するものだ。センサーをつけたドローンで畑を上空から撮影すれば生育状況監視や糖度測定もできるし、その映像を使用して商品プロモーションにもつなげられる。他にもリベルダージでは農業用ドローンを保持し、農薬散布や種蒔きにも活用している。
工場の生産・出荷過程を記録することで安心安全の流れを補完することや、VRをつなぎ、ドローンからの景色をバーチャル体験できる工場見学サービスの利用なども考えられる。
「お客様に安心していただくための技術のひとつとして使いながら、裏側ではデータを取って活用できるのです。ドローンが監視してくれれば人が動いて見に行かなくてもいいし、6次産業にもつなげられます」そう松原氏は話す。
時代とともに消費者の購買行動は変わり、効果的な施策も変わってくる。変化が激しい時代において、「ドローン×CRM」という最先端の仕組みは有効なツールになるに違いない。
「EMOROCOでは『今はどういう傾向にある』という指標すらも作り変えます。その上で利用者の感応度を計り、そこから売り上げの予測を立てたり効果的な施策になるかを導き出したりして、サイト内の動線やMDに役立てるのです。CRMはすべてのチャネルを扱い、リモートセンシングもCRMが管理するのが基本。ドローンによるトレーサビリティや高所の点検し、修理が必要な場合にサービスパーソンのディスパッチなど、全部つながってくる。今後このかたちが広がっていくでしょう」。
デジタル時代のCRMの旗振り役を担うEMOROCO、次なる展開は
業務のコアエンジンとして使えるEMOROCOだが、今後はマッチング機能を充実させていくと言う。
「ECサイトとしてもマッチングはすごく大事です。Amazonのレコメンデーションが近いと思いますが、レコメンデーションが受動的なのに対し、能動的にできるサジェスチョンができればロングテール戦略が取れる。そうなるとお客様の潜在ニーズが強くなり、そこにマッチングが必要になるのです。
お客様が本当に望んでいるモノ、楽しいと思えるモノはなにか?それを深層学習してCRMが理解し、その先にマッチングが存在します。さまざまな分析が取れるのでセルフアナライズもできるし『あなたが本当に望んでいるのはこれです』と提案することができる。プレゼントを贈るなら、相手の属性を入れれば『こういうアイテムが喜ばれますよ』とか『このギフトだったらこういうシチュエーションで渡すと良いですよ』ということもできます」。
今までは考えられなかった新しいECの時代が、すでに到来しているのかもしれない。
「マッチングをした後、さらにその先のマッチングを提案することができたら、それはサイトの付加価値になりますよね。今までの常識の範囲内で考えてしまうと、ただサイトがそこにあるだけ。でもサイトの裏側にあるシステムがあらゆる情報を得ることによって、そのサイト自体に付加価値がつけられるのです。あとはそのEC事業者がどれだけ自社だけの付加価値を出し、他のショップとの違いをつけていけるかです」。
10月24日〜26日に開催されるJapan IT week 秋ではEMOROCOの展示と併せて、リベルダージと協力してドローンパイロットとドローンを活用したい方のマッチングサイトも公開する予定だという。
すべての情報を集め、すべての情報を活かすCRM。マーケティング4.0時代の経営戦略のために、本気で向き合う必要がありそうだ。