物流価格を適切にカスタマイズ 三井物産グローバルロジスティクスの強みとは
昨今の配送・物流コストの増加をきっかけに、物流業務の外部委託や移行を検討するEC企業は多い。物流センター選びのポイントとなるのが、コストはもちろんだが、自社の商材に関する取扱実績有無や、提供される物流品質、業務の効率化に向けた対応速度なども挙げられるのではないだろうか。こういった点がしっかりしていないと、いくら安くても、ミスやクレームの対応、ユーザーの信頼低下などから、結果的に高くついてしまうことになる。
今回紹介する三井物産グローバルロジスティクス株式会社は、アパレルと健康食品・化粧品に多くの実績を持ち、すべての業務を自営することで高い物流品質を保っている。同社 営業第一本部 国内営業部 営業開発室 室長 古山 晴章氏に、昨今の配送・物流事情のなかで、どのようなサービスや対策を行っているのか伺った。
すべて自社運営、一気通貫で高い物流品質と荷主の負担軽減
三井物産グローバルロジスティクス(以下「MGL」)は、国内の拠点として関東、中部、近畿、九州に物流センターを持っている。消費財を扱う物流センターの総面積は約15万坪、そのうち約2万坪でEC通販の荷物を扱っているそうだ。
MGLの強みのひとつが、物流倉庫内の作業をすべて自営で行っていることだという。WMSなど物流センターで利用するシステムも、社内のIT部隊が開発・管理している。このことが、物流品質の高さにつながっている。
「自営により管理が行き届くことで、ピッキングミス、誤出荷の発生率はかなり低く抑えられています。とあるお客様の場合、年間の出荷が約1,000万件で、誤出荷は1件のみでした。また、社内にITの専門部隊がいるので、現場の声をすぐにシステムに反映でき、使いやすく、ミスの起きにくいシステムになっていると思います」。(古山氏)
荷主の商材は、国内で製造されたものだけでなく、海外からの輸入品も多い。輸入商材の物流において必要となる、フォワーディングや通関業務などもMGLがすべて自営で一括して対応しているため、荷主である事業者の手間が大幅に省かれることになる。
「我々が一気通貫で対応することで、製造業のお客様には製造に、小売業のお客様には販売に、より時間を割くべき根幹の業務に集中していただけると考えています」。(古山氏)
健康食品・化粧品、アパレルのEC物流におけるニーズ
MGLでEC通販の荷物が増え始めたのは、2002年頃だそうだ。EC通販では健康食品・化粧品とアパレルの利用が多い。健康食品・化粧品の場合は、自社サイトに注力しているメーカー系企業の事例も多いという。規模はさまざまで、出荷が月1,000件程度の事業者から、月2万件程度の中堅企業、月100万件程度の大企業まで、企業ごとの課題に向き合ってサービスを提供している。
「弊社の場合、10年、20年と長くお付き合いいただいているお客様が多くいらっしゃいます。そのなかで、実店舗やカタログ通販メインだったところから、EC通販にシフトされているケースも増えています」。(古山氏)
健康食品・化粧品のEC通販では、特にロット管理が重視される。健康食品の場合、誰にどのロットを出したかというトレースの正確性も求められる。MGLでは、出荷時にバーコード検品を行うなど、健康食品・化粧品のEC物流に必要なノウハウを蓄積している。
アパレルに関しては、BtoC専用センターと、実店舗や卸などのBtoBとBtoCの両機能を有しているセンターとがある。MGLではいずれにも対応しているが、ここ数年は、後者のBtoBとBtoCの在庫を一元管理したいという要望が多いという。また、検品やささげ業務など、物流の周辺業務も物流センター内で一括して行いたいという要望も多いそうだ。
「物流センターによって機能に違いはあるのですが、お客様のご要望に対してはできるだけ対応できるようにアレンジしています。EC物流のフルフィルメント機能、特に、ささげ業務や、手直し、検品の必要性を強く感じており、今後、そのような機能を拡大させサービスを充実させていきたいと考えています」。(古山氏)
機械で自動化、省人化により人手不足を補う
今、配送会社の運賃改定により、地方から関東など消費地の近くに物流センターを設置しようとする流れがあるという。その背景として、配送料の改訂が、関東では早いうちから適用される一方、地方では段階的だったのが、ここに来て一気に値上げが進んでいる可能性があるそうだ
「EC通販のユーザー数は関東が圧倒的に多くなっています。これまでは関東の物流センターから出荷するより地方の物流センターから関東に送るほうが安いケースがあったのが、それがなくなってきたと考えています」。(古山氏)
配送会社の運賃改定は人手不足が主な原因だが、物流業界でも同じように人手不足が問題となっている。MGLでは、物流センターで扱う荷物に応じて、製函、梱包や荷札貼付、作業の自動化やソーターなどを導入し、省力化を進めているそうだ。そのための専門部隊も設置しているという。
「なんでも機械化すれば良いのではなく、人の手のほうが向く複雑な作業もあります。どこに焦点を当てるかが重要です。単純な作業ほど機械化に向いていて、EC物流ではそういった作業が多いので、省人化の余地はまだあると思いますまた、荷主様にも導入する機械の特性や能力、仕様などを十分ご理解頂く事も重要です。機械化による効果は期待できますが、一方で制約条件も伴います。この点は、導入する物流事業者だけでなく、関係する荷主様へもご理解が必要なのです。」。(古山氏)
定例会議による改善点の共有
MGLでは、物流センターを利用している荷主の企業と、月1回定例会議を開催し、在庫や返品などに関するレポートと、それに基づく改善提案を行っている。
「定例会議で改善点が見つかることが多いです。店舗・卸先からの具体的な返品実績資料をご提供したり、旧シーズン在庫が多い場合、販売部門の方に早急に指定店舗やセール対象品としてへ出荷指示を出して頂くようご提案することもあります。見える化をする事はもはや一般的ですが、原因の追求と対策の立案実行まで、スピード感をもってお客様と共に対応していく事が重要です。」。(古山氏)
そういったレポートに加え、配送に関する定例会を設ける事例もあるそうだ。EC通販では特に、ユーザーから配送に関する指摘が入ることが多い。そういった指摘が、どの配送会社にどれだけあるのかを数値化し、改善策を提案することもあるとのこと。
「たとえば、配送会社の得意不得意エリアを実績データから分析し、適正な配送会社へ振り直す事で品質改善に繋がった事もあります。」(古山氏)
配送料の値上げにどう対応するか
EC物流で今、一番大きな問題と言っても良いのが、やはり配送会社の運賃改定だ。この問題への対策として、ひとつには、物流業務の効率化が挙げられる。MGLでも、前述の通り、機械の導入による省人化を進めている。ただ、それだけでは限界もあるという。
「物流センターの効率化を進める一方で、たとえば健康食品・化粧品で比較的安価な商品については、梱包の形状を見直して宅配便からメール便で送れるように検討するであるとか、返品が多く廃棄品となっているフローを、良品化する事でキャッシュフロー改善できないかなど、お客様と一緒に考えていく必要があると思っています」。
そういった相談もしやすいのが、物流業務を自営で行っている、MGLならではと言える。
物流業務をワンストップで行うという点では、現在も一部の物流センターで実施しているささげ業務、手直し、検品などのフルフィルメント機能を、各地の物流センターに広げていくことも考えているそうだ。
「アパレルのEC通販では、BtoBとBtoCの在庫を一緒に管理したいと考えておられる企業様には、ぜひご相談いただきたいです。健康食品・化粧品のEC通販に関しては、物流センターを移したいと考えておられる企業様など、弊社で対応できることは多いと思います。その他、新規で考えられている企業様にも、さまざまなご提案を致しますので、まずはご相談いただきたいです」。(古山氏)
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