市場の変化をデータで切る!配送コスト高騰で、私たちは何をするべき?

伸びゆくEC市場の中で、EC事業者の「人手不足」といった課題が深刻化している。EC事業者の負担を減らしつつ、市場を拡大させていくためには、まずEC市場に存在する課題を正しく把握しなければならない。そこでECのミカタでは、課題を明確化するために、OMS、WMS一体型の物流代行SaaS『LOGILESS』を開発する株式会社ロジレスと協力して「物流」に焦点を当て、「EC事業者の受注・出荷業務」に関する実態調査を実施した。その調査結果をもとにして行った、株式会社ロジレス 代表取締役 西川真央氏と、MIKATA株式会社 代表取締役社長 小林敬介の対談をお届けする。

Q1.EC業務における課題を教えてください

西川:配送事業者の配送費値上げを受けて「配送コストの高騰」を課題に感じているEC事業者は多いですね。すぐにドライバー不足といった問題が解消されるわけではないため、しょうがないと受け入れているEC事業者が多いのではないでしょうか。

小林:受け入れた上で、何をやっていくかを考えるのが重要ですよね。出荷を自動化したり、受注管理システムとカートを連携したり、配送コストの高騰をカバーできるよう、業務をシームレスに行える仕組み作りがカギを握っている気がします。

西川:そうですね。あとは、2位以下の課題である「業務の属人化」「複数サイト運営に伴う受注業務の煩雑化」「事業拡大に伴う人手不足」「問い合わせなどの顧客対応にかかる人的コスト」が、すべて人的リソースの話であることも興味深いです。

小林:「ECはデジタル化されているから、人手は必要ない」と思われがちですが、むしろその逆です。実店舗はお金を受け取って商品を渡し、その場で完結しますが、ECは配送の伝票番号を送ったりサンクスメールを送ったり、実店舗には発生しないさまざまな業務をしなければなりません。お客さんのもとに商品が届くまでどれほどの工程をこなしているかを考えると、EC業界の人的リソースの課題は根強いと思います。

Q2.物流代行サービスを利用していますか?

西川:物流代行を利用している事業者は多くて20%ほどだと思っていたので、37.1%は意外な数字でした。23.7%が「検討のみしたことがある」と答えているため、物流代行サービスは今後も広がっていくと思います。お客さんが重要視するのは商品や顧客対応、顧客体験の部分であり、商品がどこで保管されて誰がパッキングしようが関係ありません。そのため、EC事業者は物流部分をプロにアウトソースすることで、その分商品開発やCRMなどに時間をかけられるようになり、顧客満足度を高められるでしょう。

小林:調査を見てみると、物流代行に感じるメリットとして挙げられているのが「人件費、保管費など費用が安くなった」など。一方で、物流代行をやめた理由として「利用前と比べてコストが高くなった」、物流代行を利用しない理由として「費用が高くなりそうだから」が挙げられていて、真逆の結果になっています。

西川:物流代行の費用感がブラックボックス化している結果が現れていますね。実際、物流代行を使うことで、現状よりも利益率が高くなる可能性があるので、見積もりをもらってしっかりシミュレーションするべきです。プラスに転じる可能性があるなら、最初はトライアルとして少量から委託をスタートさせる。そして、うまくいきそうと確信したときに、100%アウトソースする。まずは知ることが大切だし、賢く物流代行を利用する余地は大いにあると思います。

小林:賢く物流代行を利用するべく「コストを下げるために自社でできることがあるか」を考えることも重要ですよね。例えば、物流倉庫の担当者に「一番安い段ボールのサイズはなんですか?」と確認し、その段ボールの形状に合わせた商品を設計する。配送コストや資材コストを逆算して商品を作るのも、物流コストを下げる方法のひとつです。あとは「物流費用をお客さんからいただく」と考えるのもアリだと思います。送料が上がったことをお客さんに分かってもらい、これまでと変わらないクオリティでサービスを提供するためにも、商品代金に物流費を乗せていく。

西川:考え方によって、いくらでも工夫のしようがありますよね。それぞれの物流倉庫の得意分野を見て、複数の業者にお願いしてもいいですし。資材ありきの商品設計に関しては、EC事業者に協力してくれる物流倉庫が増えています。そのため、ただアウトソースするだけではなく、EC事業者と物流倉庫がパートナーシップを結び、コストを下げられて効率化も実現する仕組みを考えていくのが大切でしょう。物流業務のアウトソースは、しっかりと組み立てられれば、人件費や採用費を考えてもコストパフォーマンスが高くなると思います。

Q3.受注管理システムを利用していますか?

小林:ECのミカタとしてEC事業者さんとお話しすると、受注管理システムを知らない人も意外と多くいます。そう考えると、受注管理システムの利用率である55.9%という数字は、まだ伸びていきそうだと感じます。

西川:受注システムの利用率のうち、外部システムが38.3%、自社開発システムが17.6%とありますが、これから外部システムの利用率が増えていくと思います。自社開発システムは特別な機能を必要とする一部の大手企業が作るだけで、SaaS型のシステムがどんどん普及していくでしょう。

小林:「機能」といえば、調査を見ると、受注管理システムを選ぶ基準として「機能の充実性」を挙げている方が多くいました。一方で、受注管理システムに感じる課題として挙げられているのは「機能の不十分さ」。物流代行と同様に、受注管理システムのアンケート結果も矛盾していますね。

西川:扱う商材ジャンルや商品サイズ、販売店舗、出荷件数、売り上げ額など、さまざまな要因によって受注管理システムに求める条件が細かく変わります。そのため、どれだけシステムがたくさんあっても、理想にピタリとハマるものを見つけるのは不可能に近いのです。とはいえ、欲しい機能を網羅したシステムを自社で作るとなると、大きな開発費用がかかってしまう。そのジレンマを少しでも埋めるためには、日々の業務に忙殺されてシステム選びをないがしろにせず、しっかりと比較検討して選ぶことが大切です。

小林:私もEC事業者の立場として、SaaS型の受注管理システムを選んだことがありました。そのときに思ったのが、「理想を100%叶えてくれるシステムはない」と理解したうえで、「自分たちが譲れないポイント」を見極めるのが重要であること。自社と同じジャンルの商品を展開するEC事業者が、どんなシステムを使っているのかを参考にしながら、最低限求めたい機能が入っているシステムを選びました。

西川:今後、物流に関して戦略的に考える時代が来るはず。それは、単に安い高いの世界ではなく、最適化した物流工程をどう設計していくかを追求する世界です。そのため、受注管理システムも戦略的に選ばなければなりません。これからどんどん便利な機能が登場する中で、頻繁に機能をアップデートするシステムを選ぶとか、拡張性が高いシステムを選ぶとか、そういった視点が必要だと思います。

Q4.倉庫管理システムを使っていますか?

西川:倉庫管理システムの利用率は30.1%、妥当な数字だと思います。「自社で在庫を管理しているから、出荷がうまく回れば、在庫数が1〜2個合わなくてもなんとかなる」など、倉庫管理システムを導入しなくても日々運用できるEC事業者さんが多く、後回しにされがちですから。ただ、適切な在庫管理は行うべきですし、事業が拡大していくと必ず必要になってくるので、早い段階から導入を視野に入れておくべきだと思います。

小林:物流代行を使うことになったり、卸を通して出荷するようになったりしたら、社内の人間だけでは完結しません。こうしたなんらかの外的変化が発生したときが、在庫管理システムを導入するタイミングだと思います。その際に避けたいのが、間に合わせの感覚で安いシステムを選ぶこと。一度導入すると乗り換えが手間になるので、「機能がアップデートされるSaaS型」といった時代とともにパワーアップするシステムを選ぶのがいいのではないでしょうか。

「EC事業者の受注・出荷業務」に関する実態調査の調査データはこちらからダウンロードできます
https://ecnomikata.com/knowhow/26591/

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