Webとリアルの循環が顧客との関係性を築く
顧客動向の変化や販売手法の多様化にともない、急務になっているオムニチャネル強化。しかし実際には、うまく推進できていない企業も多く、そんな中で事業者のWebにおけるさまざまな課題を解決してくれるのが、株式会社ecbeingだ。これからの小売業は、どう店舗と向き合い、最適な形を実現してくべきなのか。同社の森英一氏に話をうかがった。
対策必須だけど難しい、オムニチャネルの強化
――ecbeingの考えるオムニチャネル強化とはどのようなものでしょうか?
顧客(ユーザー)視点で見たときに、ECで買うか、実店舗で買うかの垣根を設けるのではなく、どちらで買っても、どちらで比較しても良い、そういう循環型のプラットフォームを作っていくことがオムニチャネルだと考えています。オンライン・オフラインの境界線をユーザー視点で変えていく、また、そういう機会やサービスを提供していくのが、「オムニチャネルを強化すること」だと当社は考えています。
――今のタイミングで「オムニチャネルが重要」だと考える理由は何ですか?
新商品の認知チャネルが、今までのテレビCMや雑誌からWebに移行してきたことが大きいです。ユーザーの認知導線はかなり変わってきていて、オムニチャネルは実店舗とECだけの話ではなく、まわりのコンテンツとWebの最適化、Web全体とアプリ、実店舗との連携がマストになってきています。
ただ、コンテンツを充実させるのは手間や知見が必要ですよね。それをサポートするためのさまざまなサービスを当社では提供しています。
――どのようなサービスがあるのでしょうか?
当社と同名の『ecbeing』というECプラットフォームでは、商品管理や受注管理ができます。そこに『SiteMiraiZ(サイトミライズ)』という当社グループのCMSを組み合わせると、コンテンツ管理や配信するメルマガの管理などもできます。両者を連動させたサイト作りを行い、ふたつのシステムでオウンドメディア運用をしていくことをご提案しています。そうすることでWebコミュニケーションが最適化され、実店舗との連携も図りやすくなります。
さらにメディアコマースを行う場合、口コミやレビューが重要になってくるので、それを集めやすくするための『ReviCo(レビコ)』というツールを提供していたり、インスタグラムユーザーの一般投稿を集めるツール『visumo(ビジュモ)』でメディアコマースを支援したり、といったサービスも提供しています。
システムは全て連携しているので、都度ログインする必要はありません。それと「分析」もオムニチャネルを推進するために必要な要素の一つです。オムニチャネルが進むとWeb広告のアトリビューション測定の重要性が増すので、実店舗(オフライン)とオウンドメディア(オンライン)が全て「分析」というキーワードでつながる分析ツール『Sechstant(ゼクスタント)』を当社で開発し、それをTableauと連携させています。
オムニチャネル強化に必要な具体的な手段や課題とは
――ecbeingのサービスの強みは何だと思いますか?
当社はあらゆるWeb領域の事業支援をワンストップで展開しています。ECのプラットフォーム構築、ECサイトのデザイン制作にとどまらず、オウンドメディア全般の集客やマーケティング、さらにはWebの事業コンサルティングも行っていますし、Webプロモーションもサポートできます。運用支援をするディレクターも、制作するデザイナーもコーダーも社内にいます。Google analyticsの分析資格(GAIQ)を持っているメンバーも多数います。
そのため、どの工程も同じ原資や情報を使って対応することができます。これは費用面で優位なだけでなく、今一番大事なことは何かを、Webの全領域を俯瞰してお客様ファーストに考えることができます。それが一番の強みです。
―――オムニチャネルを推進していく際に難しさを感じるのはどんなところですか?
KPIの設定がとても難しいですね。オムニチャネルではコンテンツを作ったからといって、それがすぐ売り上げにつながるわけではありません。でもそれがECにつながっているために、「結局いくら売れたか?」の話に直結してしまいます。
「全ての施策はもうけに直結するべき」という考え方を捨てないと、オムニチャネルの実現は難しいでしょう。また、例えば大企業だと各部署が縦割りになっていることが多く、どこが行うのかが難しい。逆に規模が小さすぎるところだと初期投資の費用が捻出できないこともあります。
オムニチャネルを進めるには、企業の社内体制を変えていかないといけません。それがオムニチャネル化に必要な課題だと考えています。各部署から担当者が集まってタスクフォースを組み、オウンドサイトのメディアコマース化に成功しているクライアント様もいらっしゃいますので、会社ごとの文化に合ったプロジェクト推進が必要だと思います。
顧客とのつながりを最適化し、価格勝負からの脱却へ
――時代の変化に今後どう対応し、事業者をどのようにサポートしていこうと考えていますか?
アパレル系などでは、セール依存で苦しんでいるクライアントが多いのですが、オムニチャネルはそこから抜け出す一つの方法だと考えています。
コンテンツが用意されていて、商品の使い方や価値がWebでしっかり語られていれば、その商品の付加価値が分かる。「安売りされているから買う」のではなく、「意味や価値があるから買う」というユーザーマインドの醸成に、オウンドメディアの最適化やメディアコマースは一役買うと考えています。単純に安売りではない価値をうまく出してあげる、そういう支援をもっとしていきたいです。
また、オムニチャネルとは垣根を取っていくこと、つまりはユーザーと売っている企業とのつながりの最適化だと思います。そのために何が必要かを一緒に考えていきたいですね。当社もECベンダーという“立場”を、あえて考えないようにしています。ECにこだわらず、ユーザーにとって今何が必要なのか、ニーズをしっかりと形にしていくことを意識しています。
MD的な部分もやりながらWeb全体、もしくは実店舗の販売促進までいろいろ話をさせてもらうこともあります。小売業界にとってのオムニチャネルやメーカーにとってのD2Cを、クライアントと一緒に考えて、作り上げていくためのサポートを今後も強化していこうと思います。