『楽天市場』が目指す、三方よしの世界

ECのミカタ編集部

楽天株式会社 執行役員 コマースカンパニーCOO&ディレクター 野原 彰人氏

EC業界を黎明期から引っ張ってきた『楽天市場』。多くのEC企業、消費者を抱える巨大なプラットフォームとして今もなお業界の最前線にいます。しかし、急成長をした結果、楽天が目指す世界を知らない店舗も多いのではないでしょうか。今の時世を踏まえ、「楽天市場」が目指していることについて執行役員の野原氏に伺いました。

楽天市場はなぜ巨大プラットフォームに成長できたのか

楽天市場はなぜ巨大プラットフォームに成長できたのか

楽天は、創業してから今でも変わらず「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」という理念の下、ビジネスを展開しています。社会的な課題を解決したいという私たちの考えに共感していただく方も多く、一緒に歩んできたと考えています。楽天市場に関しても、オープン当初から出店いただいているEC事業者の方々が、理念に共感いただいているからこそ、私たちのやり方に合わせていただくことで事業を展開していくことができたと考えています。

そして、時代が変わりさまざまなプラットフォームが増えた2020年、より良い購買体験ができるプラットフォームはどこなのかを消費者は考えながらショッピングをしています。

そのため楽天市場として、消費者の方々により良い購買体験をしていただき、さらには悪い体験をさせない。当たり前のことですが顔の見えないECでは度々発生してしまう課題をいかに解決していくかが、私達に求められているミッションだと考えています。

共通の送料込みラインは購買体験を良くするための施策

ECでの買い物は消費活動としては身近な存在になっています。そしてお客様が購入する場所も多岐にわたるようになりました。私たちプラットフォームとしての責任は、お客様により良い購買体験をしていただき、また楽天市場で買い物をしたいと思っていただくことです。これが巡り巡って楽天市場出店店舗様の販売促進にもつながります。出店店舗様がいくら良い商品をそろえて価格を頑張っても、楽天市場にお客様が集まらなくては意味がありません。そのため、私たちの基準ではなくお客様の基準で施策を進めてきました。共通の送料込みラインの導入についても多くのお客様から寄せられた意見が発端でした。

もともと、送料価格は統一性を持たせるのが難しく、お客様からすると非常に分かりにくい仕組みです。同じ商品でも提携している物流倉庫や倉庫場所によって価格が変わってきます。しかし、お客様からすると送料価格に透明性がなく、なぜ発生するのか、なぜ高いのか、といった形でトラブルになってしまうことも多々ありました。出店店舗様の商品をお預かりし販売する、売り場のプラットフォームとしての責任を考えると、訪れたお客様に不利益な購買体験をさせないことは楽天市場として優先すべきことなのです。

このような背景もあり、楽天市場では2020年3月18日から、準備の整った店舗様とともに共通の送料込みラインを導入しました。この件については、導入前から店舗様より厳しい意見も頂きました。

そのため、導入する際にご協力いただいた出店店舗の皆様のためにも必ず結果を出す必要がありました。そして2020年3月18日から開始している送料込みラインですが、実際に始めてみると思った以上にお客様の反響が数値として表れています。

送料込みラインを導入している店舗の流通総額の対前年成長率は、導入していない店舗に比べると、約20ポイントの差があります。お客様のニーズをしっかり汲み取るためにも、楽天市場としても送料込みラインの導入意義について、店舗様へ引き続き説明を続けていこうと考えています。

商品が手に届いてからも良い体験をしてもらうための物流投資

出店店舗様には商品力・価格・品ぞろえを頑張っていただく一方、楽天としてもより多くのお客様に選ばれるよう、プラットフォームとしての魅力を高めていくことは我々の使命です。大型セール・キャンペーンの開催、UI/UXの向上、そして購入された商品を安全にお客様にお届けすること。購入から商品がお手元に届くまでのプロセスをより最適なものとするために、今後も全力を尽くしていきます。そして今、私たちが戦略的に投資を行っている領域が物流になります。

専業で物流配送を展開している各社に比べると、まだまだ改善していかなければいけないことは多々あります。しかし私たちが物流に力を入れることには大きな意味があるのです。
例えば楽天市場で購入した商品が仮に届かない場合、配送面を私たちで対応していないとなぜそのようなことが発生したのかの把握が難しい。そのため、次の改善にも生かしづらいという課題があります。だからこそ、私たちがECに特化した物流網を持つことで、出店店舗様の商品を責任持って販売から配達まで支援できると考えています。さらにはECに特化させることで、サプライチェーンの改善も図れると考えています。最終的には効率化以上に、お客様満足度のさらなる向上にもつなげられると思います。ECの成長に対して物流はまだ変化しきれておらず、お客様の要望を反映する余地は大きいです。楽天市場というお客様と常日頃から接している私たちだからこそ実現できる物流展開を引き続き目指していこうと考えています。

新型コロナによる 楽天市場への影響は

コロナによる巣ごもり需要の影響もあり、Q2/20の楽天市場を含む、楽天のショッピング Eコマースの流通総額は前年同期比+48.1%と幸いにも伸びています。さらには店舗様の支援にもオンライン施策を取り入れています。店舗運営の動画や楽天市場クーポンの使い方ウェビナーなど、多くの店舗様にご活用いただいております。もちろん巣ごもり消費は全てのECに良い影響をもたらすものではありません。もし運営についてお困りのことや相談したいことがあれば、楽天市場ではコロナに関するお問い合わせフォームも用意しているのでお気軽にご相談いただきたいと思います。何かしらの形で運営のお手伝いができるかもしれません。

楽天市場はどう進化していくのか

楽天市場はどう進化していくのか

今、ECには新規のお客様も多く増え、1段階フェーズが上がったと感じています。裾野が拡大し、ユーザー層のオフラインに充てられていた時間がオンラインに移行してきています。
この結果、オフラインで体験していた購買体験を求めるお客様が増加すると考えています。従来のECの強みはスムーズに買い物ができ家まで商品が届くといった利便性です。しかし、コロナ後は利便性に加え、多様性やエンターテイメント性も顕在ニーズとして表れてきます。

楽天市場としてはさまざまな店舗様のユニークネスをさらに促進し、セールなどで消費を盛り上げていきたいと考えています。もちろんこれらの消費者ニーズの土台にあるのは安心・安全ですので物流の投資も引き続き行っていきます。

楽天としては、店舗様・お客様・楽天の「三方よし」を目指していきます。理念の通り、あらゆる人をエンパワーメントするためには出店店舗様だけ、お客様だけ、楽天だけの考えでは実現できません。関わる方々、全てにメリットがあって初めてエンパワーメントできると考えています。

全ての人を対象にするため、確かに険しい道のりであることは間違いないですが、だからこそ走り続けることに大きな意味があります。そのために楽天市場としてすべきことは何かを見極めつつ、これからも事業の強化・改善を続けてまいります。

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