EC運営に欠かせない、Instagramの効果的な活用方法とは。新規獲得からリピート促進まで、効果的な施策を紹介
ソーシャルテクノロジーによる生活者マーケティングの実現を支援するアライドアーキテクツ社では、今年の8月~9月にかけて、Instagramユーザーを対象に「SNSをきっかけとした購買行動・口コミ行動調査」に関するアンケートを実施した。
今回は、その中でも「アクティブユーザー」と呼ばれる、利用頻度の高いユーザーに焦点を当て、企業の「Instagramマーケティング」に関する効果的な施策について、同社のプロダクトカンパニー Promotion本部長 井出修二朗氏にお話をうかがった。
調査概要
調査名称:SNS利用に関する調査アンケートへご協力のお願い
調査主体:アライドアーキテクツ株式会社
調査方法:モニプラ(同社保有メディア)
調査対象:Instagramアクティブユーザー
調査期間:2020年8月26日~9月2日
回答人数:2,908人(うち、閲覧アクティブユーザーは1,479人、投稿アクティブユーザーは771人)
SNSそれぞれの個性を知ってEC運営に活かす
EC運営には、SNSの活用が必要不可欠となりつつある。SNSを効果的に活用してECの売り上げを伸ばすには、SNSそれぞれの特徴をつかみ、特徴にあった活用をすることが重要だ。
特にInstagramは、日本国内だけでも3300万人(2019年6月時点、Facebookより引用)のユーザーが利用していることから、企業が上手に活用することで、ECサイトの売り上げを伸ばすことができるツールとしても利用することができる。
しかし明確なノウハウがないことから、「アカウントは作ったが、日々投稿するだけでフォロワーが伸びない」、「効果的な広告の使い方がわからない」など、悩んでいる事業者は多いようだ。
企業のInstagram運用は兼任担当が多く、売上貢献が課題
――企業のInstagram活用実態と課題感を教えてください。
日々のマーケティング支援事業や調査等を通して、企業のアカウントの総数はかなり増えてきていると感じます。Instagramのユーザー数が伸びていることを機会と感じて、アカウントを作成する企業が多いようです。
多くの企業がアカウントを作成すると、まず規模を拡大するためにフォロワー数を伸ばそうと考えられます。そこで、フォロワーを伸ばすための「Instagramキャンペーン*」が昨今非常に増えており、弊社の調査では現在、推定で年間1000社以上が実施していると考えています。Instagramキャンペーンとは、Instagram上でユーザーにフォローやいいねをしてもらい、そのインセンティブとして企業側が特典を提供することで、認知の拡大やフォロワー獲得をする手法です。
*2020年11月現在、Instagramではキャンペーンの実施は認められておりますが、現金の提供や全員プレゼントといった方法はガイドラインに抵触する可能性があります。
参考:【2020年11月版】Instagramポリシー・ガイドラインとInstagramキャンペーンにおける注意事項のポイントまとめはhttps://service.aainc.co.jp/product/echoes-instagram/blog/instagram-policy">こちら
しかしながら、Instagramアカウントは兼任担当などで片手間に運用されていることが多く、そもそもInstagramの活用目的や目標が定まっておらずフォロワーを増やすことがゴールになってしまっていたり、売上貢献が見えない(少ない)から予算・リソースが投下されない、という悪いスパイラルに陥っている企業が多い印象です。原因として、売上に結び付ける明確なノウハウがないことから、どうしたらうまくいく、という「勝ちパターン」を容易には見つけられないことがあげられ、大きな課題だと感じています。
新規獲得のために重要な施策
――新規顧客獲得にはどういった施策が有効でしょうか。
商品のビジュアルや話題性・新規性でパルス消費(その場での購入)を促せる商材の場合は、フィードや発見タブ、ストーリーズでダイレクトレスポンス広告を行うことが有効です。一方で、購入までにブランドや商品・サービスの理解、エンゲージメントが必要な商材は、Instagramプロフィールに誘導してフォローによりアカウントと繋がるキャンペーンが有効でしょう。
フォロー&いいねをしたユーザーのなかから抽選で、商品やクーポンをプレゼントするなどのインセンティブを提供する手法は様々な企業が実施しています。しかし、InstagramにはTwitterの「リツイート」に相当する機能がないため、キャンペーン情報が拡散しにくいことや、キャンペーンのみではターゲティングがしづらいなどの欠点があり、これをInstagram広告やメディアタイアップ等で補う必要があります。
Instagramアカウントでは、「ショッピング機能」という、企業側がフィード投稿した写真にタグ付けされた商品名・値段などの情報をユーザーがタップすることで商品購入ページに遷移する機能や、24時間で自動的に消える「ストーリーズ」投稿(フォロワーが1万人を超えるとリンクがのせられるようになる)を活用し限定セールやクーポンを配布することで最初の購買につなげる、といった施策が有効になるため、フォロワー数を一定以上に増やすことは重要です。
一方で前述のとおり、その規模拡大やターゲティングのためには広告での初期投資が必要と考えるべきで、もしその投資判断が難しい(スモールスタートしたい)ということであれば、例えば既存顧客や商品・サービスのモニター体験者を中心にUGC(User Generated Contents:ユーザーから生まれた投稿)を増やし、クチコミから自社アカウントへ誘引するような設計が必要になります。
「繋がり度」を重視したアカウント運用
――リピート促進に効率的な施策を教えてください。
リピートの促進には、当然ですが既存顧客とInstagram上で「繋がる」こと、そして「繋がり度」を強め、投稿が届く状態を維持することが大切です。
既存顧客とInstagram上で繋がる手法には、商品発送の際にInstagramアカウントのQRコードなどを同梱することでフォロワーになってもらったり、メルマガなどのCRMでの周知や、ECサイトにリンクを掲載したりするなど、様々な方法がありますが、これらはECのコンバージョンを邪魔しない限り、積極的に実施していくべきだと考えます。
また、投稿においては、Instagramのアルゴリズムを意識することが大切です。Instagramでは、いいねやフォロー、コメント、保存などすべてのアクションを記録しており、それらを元にパーソナライズされます。フォローしているアカウントに対しては、ユーザーが反応(いいねやコメントなど)をしているかどうかを基準に、反応する回数が多い=繋がり度が高いアカウントに対しては、投稿が優先的に表示されるようになっています。
――繋がり度を高められる投稿のコツを教えてください。
日々の投稿の質をより高めていくことはやはり重要です。反応を促すためには、ただ商品を紹介するだけでなく、ビジュアルで分かりやすく使い方を提案したり、商品の背景にあるストーリーを表現したりすることが必要になってきます。
また、運営しているアカウントが、様々な商品を取り扱うモールなどであれば、普段の商品紹介投稿でユーザーの関心を維持したり高めたりすることができますが、「自社商品の紹介だけだと投稿数が増やせない」「投稿制作に十分なコストが掛けられない」といった場合には、キャンペーンで既存顧客のUGCを集めて自社アカウント上で紹介(ストーリーズシェアやリポスト)する施策が、投稿の頻度を高められると同時に、紹介を通じて顧客との繋がりを深めることが出来るため、おすすめです。
――投稿する時間やハッシュタグなど、効果的なものを教えてください
一般的にInstagramなどのSNSは、平日朝の通勤通学時間帯、昼食時間帯、夕方~22時くらいまで、休日であれば夜の時間帯によく見られています。ターゲットによってはこの時間は違ってくるため、Instagramのインサイトを用いてフォロワーがアクティブな時間を分析し、時間を合わせて投稿すると効果的です。
ハッシュタグは、「投稿に合ったものを適切に付ける」ことが重要です。関連性が低いハッシュタグを多く付けてしまうと、アルゴリズムの関係から低評価とみなされ、タイムラインに表示されづらくなる可能性もあります。ハッシュタグはリーチを伸ばすために重要ではありますが、基本的にはフォロワーとしっかりとコミュニケーションをとり、繋がり度を高めることが顧客のアカウントでの優先表示につながります。
「毎日更新しなくてはいけない」わけではない
――ユーザーがアカウントのフォローを外してしまうタイミングってどんな時でしょうか。
アンケートの結果から、「同じような広告的なコンテンツが、高頻度で流れてくるとフォローを外すきっかけになる」という傾向がわかりました。しかし同時に、そのブランドやアカウントを見ることで新商品などの情報も知りたい、という気持ちも大きいようで、投稿をする際、線引きがとても難しいと言えます。
様々な商品を取り扱うモールなどの商品紹介投稿と比較して、自社商品だけで同じような商品紹介投稿を繰り返し続けることは、ユーザーに不快感を与え、フォローを外すきっかけにつながります。商品点数の少ない企業の場合、特にフィード投稿は、必ずしも高頻度で行うものではないと考えています。
これは、投稿を制作するコストが大きい、負担だという場合も同様です。「毎日投稿しないといけない」といって質やバリエーションを担保できない投稿を続けてしまうと、結果として投稿が届かなくなり、成果が下がることもあります。
その場合は、初期投稿でしっかりと作り込んだプロフィールにした後はフィード投稿の頻度を下げ、ストーリーズを中心としたライトなコミュニケーションを増やす、外部からのアカウント誘引を増やす、といった施策に力を割くべきでしょう。
――Instagramをうまく活用できていないと感じたら試してほしい、ということはありますか。
アンケートの結果から分かった意外なことですが、ECサイトでの購入のきっかけとして、自ら検索して欲しい情報を見つけたユーザーよりも、フィードやストーリーズなどから情報を得た受動的なユーザーが多いことがわかりました。
日本では海外と比較し、ハッシュタグ検索を活用しているユーザーが多いとされていますが、Instagramのユーザー層が広がり、能動的に使いこなしてはいない人が増えたことや、Instagram上のコンテンツが増えて競合性が高まっていることから、検索で見つけてもらうことはより難しくなっているのかもしれません。
そういった視点では、ハッシュタグの工夫といったテクニックや、投稿の見栄えを良くするために撮影にコストを掛けるよりも、既存フォロワー向けの限定クーポンといった顧客への直接的なメリット提供や、UGCをシェアしたりするといった顧客との交流を深めてクチコミを増やすような顧客を中心とした施策は、繋がり度を深めるだけでなく、リーチやアカウント流入を増やしてInstagram施策を持続拡大していくうえで、大切になります。
「新規顧客に見つけられること」も大切だが、「既存顧客を大事にすること」も大切
お話をうかがい、事例を紹介していただくなかで、Instagramをうまく活用できている企業には、Instagramを通じて顧客をはじめとしたユーザーとしっかりとコミュニケーションが取れている印象を受けた。また、ユーザー側は、アカウントそのものに「一体感」があるという部分に魅力を感じていることが分かった。
Instagramは、ほかのSNSとは違い「写真を投稿・閲覧する」ことが主な使われ方である。このユーザーの行動を踏まえ、Instagramで広告やキャンペーンを打ち出す効果や購買へのシナリオを考えることが重要だ。
InstagramはほかのSNSよりも拡散しづらい分、地道に関係性を蓄積する必要がある。しかし日々顧客やフォロワーの目線に立ち、「お客様を大事にする」アカウントの運用をすることで、結果的に新規顧客も増えるような効果的な運用ができるようになるはずだ。