作品の魅力を丁寧に伝え、 購入の継続につなげる

ECのミカタ編集部

GMOペパボ株式会社minne事業部マーケットグループ
マネージャー 廣㟢圭氏(右)
ディレクター 宮良眞美氏(中央)
ディレクター 角田亜也子氏(左)

アクセサリーや生活雑貨、食品など、作家・ブランドの作品を販売・購入できる国内最大のハンドメイドマーケット「minne(ミンネ)」。運営元のGMOペパボ株式会社minne事業部では、作家・ブランドや作品の魅力を適切に購入者に伝えるための1to1のWeb接客を意識している。配慮している点や具体的な施策、成果についてお話を伺った。

ユーザー間のコミュニケーションが生まれるマーケット

廣﨑: minneはハンドメイド作品を買いたい人、売りたい人をつなぐ国内最大のハンドメイドマーケットです。

展示・販売されている作品ジャンルはインテリア、アクセサリー、ファッション、キャンプ用品、最近ではギフト向けの作品など幅広い取り扱いがあります。9年目を迎える2021年1月末時点で作家・ブランド数は73万件を超え、1295万件以上の作品が売買されています。

ユーザーの多くは20〜40代の女性です。個性的で人とかぶらないものを求める傾向があり、カラー展開や名入れをオーダーメイドするなど、作家・ブランドさんと購入者さんとの間で密なコミュニケーションが生まれる場所でもあります。

ユーザーに魅力を感じてもらうための1to1マーケティング

廣﨑:minneでのWeb接客は作品の魅力をより適切に伝えたいという想いからスタートしています。
Web接客に注力する前は、膨大な作品が出品される中で、ユーザーに適切な作品の情報が届けられていないという課題がありました。例えば、当時メルマガやプッシュ通知は一斉配信で同じ情報を届けていましたが、開封率が低迷しており、一部のユーザーにしか情報がマッチしていないという実感がありました。

宮良:そこで、より一人一人のユーザーに向き合った施策を行うべく、メールやプッシュ通知など、チャネルを横断したコミュニケーションができるツールを導入しました。

それにより、ユーザーのアプリ使用頻度や趣向に合わせて、メッセージの内容や配信量を調整し、運用できるようになりました。例えばminneにはハンドメイドキット作品を取り扱っていますが、子どもがいる方には「お子さんと一緒に作りませんか」といった内容を、それ以外の方には「長期休暇中に作ってみませんか」といった内容を送り分けるなど工夫しています。

角田:メルマガは、一斉配信していた時の開封率と比べ、閲覧や購入カテゴリなどの行動履歴に基づいたセグメント配信に変えたところ、開封率が220%改善し、顕著に成果が出ました。

廣﨑:世間では、メルマガは廃れゆくチャネルという扱いですが、minneではアプリを利用されないユーザーもいらっしゃるため、大事なチャネルの一つだと捉えています。

宮良:別の施策として、継続利用率という指標を追いかけ、初回起動者にプッシュ通知でシナリオ配信(ユーザー状況に応じ条件分岐でコミュニケーションを図る手法)をすることで、一週間以内の再訪率が112%向上したという事例もあります。

角田:どんな施策であっても、買って欲しいという訴求をするだけではなく、作品の価値も伝えることを意識しています。

ユーザーの趣向を捉えるためには データの活用が不可欠

廣﨑:ツールを使ったメールやプッシュ配信施策で苦労したのは、初期段階のデータ整理や設計です。

購入・閲覧に関するデータの整理に加えて、年代や地域などデモグラフィックやユーザー像を捉える各種アプリ内のイベント情報も必要なため、それらを取得するための設計に手間をかけました。

宮良:ユーザーの特徴や趣向を捉えるには、ユーザーがたまたまクリックしたもので判断するのではなく、閲覧した作品の名前や検索ワード、よく見るカテゴリなど、細かなデータが必要です。

minneで蓄積したデータも使い、ツールと連携して正しい判断ができるよう運用しながらブラッシュアップしてきました。

例えば、アプリインストール後の再訪問率を高めたいという目的に対しては、訪問動機や行動、趣向を細分化し、一人一人に対して配信内容や方法を組み立てます。仮説がはまらない時もありますが、トライ&エラーを繰り返していくうちに、より精度高く趣向を捉えるために必要なデータが見えてきます。そのような試行錯誤を積み重ねた結果、再訪率が大きく向上しました。

角田:データを基にチームで話し合いながら仮説を立てて効果検証をすることで、納得感を持って施策を進められていると思います。

廣﨑:普段からKPTというフレームワークで現状分析も行いながら、みんなで目的を立てた上で、集中して進めてくれています。直近では目標管理のフレームワークであるOKRも導入したことで、成果への速度・確度が上昇し進んでいます。

コミュニケーションを 適切に行うことは他の施策の 成果にもつながる

宮良:ユーザーに合わせたコミュニケーション設計を行うことは、他の施策にも有効です。

例えば、セグメントしたユーザーへクーポンを付与することで、初回購入が約130%向上、2回目購入が約150%向上しました。また配布するクーポンの内容もタイミングに合わせて変えており、円割引またはパーセント割引か、ユーザーが選べる形のクーポンを実施した際は、キャンペーン期間中の注文金額が約140%向上しました。

角田:minneの公式Instagramでは、利用者のペルソナを立て、仮説・検証を繰り返しながら投稿内容をブラッシュアップしたり、ハッシュタグを活用したユーザーへの投稿促進を行ったりした結果、全体のリーチ数が111%向上、新規ユーザーへのリーチ数は341%に跳ね上がりました。

ECに不慣れな人にも 使いやすいWeb接客を

廣﨑:minneはメーカーと違って私たちが製品を持っていないので、作家・ブランドさんの作品を魅力的に伝え、ファンを増やすことを大切にしています。そのため作家・ブランドさんに売れる体験をしていただき、定期的に作品を出品してもらうための、作家・ブランドさんへのWeb接客も重要だと捉えています。

ECにスポットが当たっている2021年、今までとは違うアプローチも必要だと考えています。

食品事業者などさまざまなカテゴリに属する事業者の方が、新規でECを始められており、そこを手助けできるよう、より利便性を整えたいと考えています。購入者さんには引き続きツールを活用したパーソナライズ接客を行い、それ以外の部分でもユーザーと作品の出会いを生み出すマッチング力を高めたいと思っています。

現状の課題としては、ユーザーが広告で見た作品が欲しくてアプリをインストールしても、アプリ内でお目当ての作品が見つかりにくいケースがあり、それを先回りして見つけやすくしたいと思っています。

角田:アプリでお買い物をするのが苦手だった方も、minneで購入してくださるようになりました。

ECに不慣れな方に使っていただくことで新たな課題も出てきますが、私たちがWeb接客に注力することは、minneがより使いやすくなることにつながるので、今後も前向きに取り組んでいきたいです。

宮良:今後はAIも取り入れ、データで読み取れる部分は機械的に行いつつ、販促、企画、コンテンツ制作のチームとも連携し、ユーザーの良質な体験や出合いをコミュニケーションによって創出できればと思います。

(ECのミカタ通信vol.21から転載)

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