EC業務を内製化せよ! ギルド型法人inc.が仕掛けるインハウス化支援の成果と効果
EC市場が拡大する中、「売上が伸びない」「広告運用がうまくいかない」といった悩みを持つ事業者は少なくない。こうした時は外部の支援企業に業務を委託しがちだが、中長期的な視点で考えればEC業務は内製化したいもの。人材育成やノウハウの蓄積という点で、後々大きなアドバンテージになるはずだ。今回はEC事業者向けのインハウス化支援で実績のあるinc.合同会社(本社:東京都港区)の編田琢也代表と、そのサービスを受けてEC事業を急成長させたTOYO JAPAN株式会社の阿部洋介社長に、EC業務を内製化する重要性やその成果・効果などについて話を聞いた。
サイト構築・改修や広告運用が自走で行えるように
――まずは両社の事業内容や提供サービスの特徴について教えてください。
inc.合同会社 編田琢也代表(以下、inc.編田) 当社はネットショップの構築から広告運用、マーケティング支援などを総合的に行うECプロデュース企業です。最大の特徴は、高い専門性を持つフリーランスをネットワークする“ギルド型法人”であること。案件に応じてその都度最適なプロフェッショナルをアサインし、クライアントがEC事業を内製化(インハウス化)できるように支援します。
TOYO JAPAN株式会社 阿部洋介社長(以下、阿部) 当社は東京ミッドタウン日比谷の「Restaurant TOYO Tokyo」、自由が丘の「Restaurant Solfège」、5月に目黒にオープンしたカウンター焼肉レストラン「きゅうこん」などを展開する企業です。レストラン事業を中心に、ケータリング事業や調理ノウハウを生かした監修事業を展開しています。「きゅうこん」には急速冷凍機や肉加工用のスライサー、ジェラートマシンなどを備えた専用のキッチンを併設し、現在はEC事業にも力を入れはじめています。
――TOYO JAPAN様がEC事業に参入したきっかけは何でしたでしょうか。
阿部 直接的なきっかけは新型コロナウイルス禍です。もともとEコマースには関心がありましたが、国内で初めて緊急事態宣言が出され、店舗がクローズになった2020年5月に、当社としては初めてEC事業に乗り出しました。当初は無料のネットショップ作成サービスを利用していたのですが、事業をよりグロースさせるため知り合いを通じて編田さんをご紹介いただき、その年の10月からコンサルティングをお願いしました。
もちろんいくつかの支援企業を比較検討しましたが、編田さんの人柄というか、仕事の進め方や実績を鑑みてinc.様にお願いすることにしました。ちょうど当社としてもD2Cを強化するため、インハウス化を進めて高度なEC人材を育成したいと考えていた時期でもありました。
――インハウス化についてはどのような支援をされたのですか。
inc.編田 具体的にはECサイトの構築・更新のお手伝いと広告運用の支援です。サイト全体の方向性の決定やSNSの運用なども、しっかりとコミュニケーションを取りながらOJTで進めました。最初のサイト構築は当社でお手伝いさせていただきましたが、その後のリニューアルはインハウス化支援の中でご担当者様が得た知識・ノウハウだけでサイト構築ができましたよね。
阿部 そうですね。オンラインで同じ画面を共有しながら、なるべく担当者に手を動かしてもらうというのが編田さんのスタンスで、最初の頃はかなりの時間を費やしていただきました。そのおかげで当社のEC担当者も非常に早いスピードで成長できましたし、今では完全に独り立ちができています。7月に開設した職人(料理人)特化型ECサイト「GOCHISOH(ごちそう)」も、インハウス化支援で鍛えられたEC担当者が完全にひとりで立ち上げたサイトです。
inc.編田 お付き合いが始まって2年ほど経ちますが、僕らは戦略的なアドバイスをする程度で、現在ではTOYO JAPAN様ご自身でECサイトの運用や更新はもちろん、広告運用や事業の立ち上げに至るまで、ECビジネスを“自走”できるようになりました。通常の運用はほぼ社内スタッフで回せるようになっているので、インハウス化支援としては良い成果を残せたと思います。
現場に寄り添い担当者のモチベーションを上げる
──EC事業者の皆様は、インハウス化支援依頼をどの段階で依頼すると良いのでしょうか。すでに外注などしてしまっている場合は、難しいものでしょうか。
inc.編田 社内で内製化の方針があるのであれば、どの段階でも構いません。すでに外注先さまがいらっしゃる場合でも、そちらの状況をお伺いしたうえで、より良い体制へと進めていきます。インハウス化支援でお付き合いさせていただく場合には、支援先様の社内に弊社が半身置くような形になるので、外部パートナー様の選定も一緒にやらせていただいております。必要に応じて、弊社から他社パートナーをご紹介することも少なくないです。とにかく、今、「社内でやるべきこと」「社外に依頼すべきこと」を適格に判断するのも私たちの役目だと思っております。ここがうまくできていないために、もったいない状態に陥っている企業さまがとても多いと感じます。
――インハウス化支援をするにあたり、inc.様が気を付けているポイントはありますか。
inc.編田 大切にしているのはコミュニケーションです。担当者のモチベーションを上げ、少しでも能力が引き出せるように、現場に寄り添い密にやり取りすることを心がけています。
多くの企業を支援してきて感じるのは、担当者のやる気がなかったり、デジタルマーケティングに対して興味がなかったりすると、覚えも悪いし成長もしにくいということです。スキルやノウハウの提供はもちろんですが、担当者とのコミュニケーションがインハウス化の成否には大きく関わってくると感じています。
――インハウス化支援を受けて、TOYO JAPAN様ではどのような成果・効果がありましたか。
阿部 当社にとって一番大きかったのは、ECという販路が確立でき、新たな顧客が得られたことです。EC向けの商品を開発したらサイトにアップし、ホームページやSNS、メールマガジンなどで顧客に知らせ、さらに広告で集客を後押しするというフローが社内で確立できました。
売上が伸びたことで、次のステップとして焼肉レストラン「きゅうこん」にオンライン・テイクアウト・デリバリー専用のキッチン「ORANGE BASE」を開設するなど、将来を見据えた投資もできるようになりました。
――従業員の働き方やモチベーションの変化についてはいかがでしょう。
阿部 ECを始めたことで、料理人が予約の状況に応じて流動的に働いたり、出産・育児で休職していた女性パティシエがライフスタイルに合わせて仕事をしたりできるようになりました。
これまで結婚や出産を期に店を離れた料理人が、現場復帰するためには高いハードルがありましたが、ORANGE BASEを設けたことで、料理人の多様な働き方を支援できるようになりました。ECで得られた顧客の反応や広告運用の結果をふまえた商品開発を行うなど、相乗効果も出たと思います。
編田さんはこちらが聞いたことに対して的確に答えてくださいますし、TOYOのブランディングを含めた様々なご提案をしてくださいます。経営サイドと現場の“橋渡し役”として機能していただいているので、当社の場合はインハウス化が非常にスムーズに進められました。
自社の言葉で伝えることが熱狂的なファンを生む
――インハウス化支援はどのような事業者にもっとも効果的なのでしょうか。
inc.編田 プロダクトにこだわりがあり、良いものを作っているという自信がある企業で、ECでの売り方やSNSにおけるコミュニケーション手段がよくわからないという事業者には非常にマッチするサービスです。特にD2Cに取り組んでいる企業であれば尚更です。自社の言葉で商品に対する想いや熱量を発信できれば、よりエンゲージメントの高い顧客の獲得につながるはずです。
もちろん事業フェーズによっては一部業務をアウトソーシングした方が、成長スピードを早められることもありますが、やはり社内のEC人材育成・ノウハウの蓄積という観点からも徐々にインハウス化は進めていくべきだと思います。
――最後に、今後の計画や目標などがあれば教えてください。
阿部 当社では料理人=職人が活躍できる場を創造したいと考えています。飲食業界の主役は間違いなく職人ですが、その担い手は年々減少傾向にあります。業界特有の長時間労働や低賃金がその要因で、当社はこうした固定化されたイメージを払拭するために職人がしっかり稼ぎ、活躍できる場を提供していきます。そのための手段のひとつがECです。
職人の中には、客前でのパフォーマンスを得意とする人もいれば、厨房で黙々とした作業を好む人もいます。多様性を持った職人が、それぞれ得意とする分野で輝ける機会をEC事業で創出していきたいと思います。
また、次工程としても、ECを軸とした、ブラントとしてのコミュニティづくりにも、注力をしていきたいと思っております。食ビジネスは、ファンマーケティングだと思っております。クラウドファンディングや、トークンの発行などもチャレンジしております。
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職人を支えるECキッチン立上げファンド
https://www.securite.jp/fund/detail/7569
黒毛和牛を ”せり、育て、いただく”。見届ける畜産 × 食育プロジェクト「KYUKON WAGYUプロジェクト」始動!「次世代の畜産流通と収益モデル」の実現にチャレンジ。
https://financie.jp/users/KyukonWagyu/cards
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inc.編田 当社としてはこうしたインハウス化支援を継続的にブラッシュアップし、1社でも多くの事業者様がEC業務を内製化できるようサポートして参ります。内製化することにより、事業者様が提供するサービスの質が必ず向上し、その顧客様へさらに素敵な体験をしていただけると信じております。
また、TOYO JAPANさまのように、内製化されたEC事業を強い基盤とし、既存事業をより良き次のステップへの進めることもできます。
もちろんそのためにはギルドのネットワークと質を強化することも重要です。弊社としては、すでにプロフェッショナルとして独立し、個人事業主として活躍しているギルドメンバーへのさらなるスキルアップ・専門性を高められるよう様々な教育機会を設けており、今後も強化を続けていく所存です。そうすることでよりサービスの質を向上させ、クライアントへの提供価値を高めていきたいと思います。