もうLTVだけを追わない 「楽楽リピート」新CPM分析でゴールド顧客育成
EC運営において欠かせない、LTV(Lifetime Value:顧客生涯価値)。一方で、近年ではLTVを重視していてもKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)が達成できなかったり、全体の売上が伸び悩んだりと、壁にぶつかるケースも多く見られる。こうした状況で改めて注目したい指標が、「稼働顧客数」だ。株式会社ネットショップ支援室では、同社が提供する定期・単品通販向けのECカートシステム「楽楽リピート」に、この指標を反映した「新CPM分析」機能を2023年1月より追加している。同社ソリューション営業部エリアマネージャーの吉浦光俊氏に、LTVへの固執が陥らせる“落とし穴”や、新機能の特徴と効果的な使い方について聞いた。
LTVの偏重で当たる「壁」とは?
──「楽楽リピート」を利用するEC事業者は、主にどのような課題を抱えていますか。
もちろん、新規獲得に悩む事業者様もいらっしゃいますが、よくうかがうのは新規獲得後の顧客育成に関する悩みです。具体的には、既存顧客のLTVを重視していても、思うようにKPIが達成できず、全体の売上は下がってしまったといったケースなどですね。また、「F2転換率(初回購入層が購入2回目層に変化した割合)」を指標にする企業も多いのですが、転換率が向上してもリピート率が伸び悩み、打つ手が分からず困っている方が多い印象もあります。
コロナ禍や薬機法(「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」)の改正など、昨今のEC事業を取り巻く変化を背景に、既存顧客育成の必要性を痛感しながら、なかなかうまくいかず、もどかしい想いを抱える事業者様は少なくないように思います。
──単品通販・リピート通販において、EC事業者の多くがLTVを追いがちとのことですが、LTVに固執しすぎると、どのような限界にぶつかるのでしょうか。
LTVは施策の効果も見やすく、便利な指標です。ただ、それだけを追いかけてしまうと顧客維持の観点からずれてしまいます。例えばLTVを向上させるために顧客単価のアップを狙い、値引き等で関心を惹きつけても、“お得感”で集まったお客様は離脱も多いのが現実です。本当の意味でお客様に寄り添う施策を立て、既存顧客をどのように維持するかという視点を持たなければ、売上を伸ばし続けるのは難しいと考えます。
一例として、最近では定期縛りを行わずに、その代わりに解約しづらい仕組みを導入するサイトも多いのですが、その面倒な工程を経験したお客様は、二度と戻ってきたくないと感じるのではないでしょうか。長期的視点で復活する顧客を作れないのであれば、LTVとF2転換率ばかりに注目し、CPOを下げるだけの施策は効果的とは言えません。
そこで重要になってくるのが、「稼働顧客数」です。
やずやも重視する「稼働顧客数」でCRMの成果を可視化
──ネットショップ支援室ではLTVに加えて「稼働顧客数」を重視しているそうですが、これはどういう指標で、なぜいま注目されているのでしょうか。
ここでいう「稼働顧客数」は、アクティブユーザー数に近い意味合いです。基本的に1年単位で区切り、2年前に商品を購入したお客様が直近1年でも購入しているかどうかを見ていきます。昨今では、定期通販業界のトップランナーとして名高いやずや様でも、「稼働顧客数」を重視したCPM分析に力を入れています。
その理由として、短期的な指標のLTVではCRM(顧客関係管理)の効果が測りにくいことが挙げられます。
分かりやすい例として、CRM研究家の西野博道さんは、セミナーなどで「CRMの“R"は、何を意味しているか知っていますか?」とよく問いかけています。この“R”はリレーションシップの“R”であって、レスポンスの“R”ではないんだよ、と。このように、顧客とのやりとり──すなわち「おもてなし」でお客様から「ありがとう」の言葉をもらうのがCRMの本質ですが、数値化しにくいのも事実です。またCRMにはメルマガやコールセンターなどさまざまな施策があり、どれに注力すれば良いのか分かりにくいという難点もあります。
そこでCRMを数値化する指標として、「稼働顧客数」が注目されるようになっています。この「稼働顧客数」が分かると、新規獲得に依存したEC運営になっていないかや、優良顧客がどれくらい定着しているかが分かります。
──「楽楽リピート」に新CPM分析機能を追加した背景を教えてください。
コロナ禍や薬機法改正などで、いままで無理のある新規獲得をしていた企業は淘汰される状況になっています。とはいえ、真っ当に新規獲得を行うための必要コストも上がっています。こうした状況において、重要性の高まる既存顧客の育成や既存顧客による安定した収益、売上の底上げを支援すべく、今回の新機能を開発しました。
──新CPM分析機能の特徴について教えてください。
新CPM分析機能では、「顧客BS」と「ゴールド顧客育成マップ」によって顧客を深く分析し、これまで成果の見えづらかったCRMの成果を可視化することを可能にします。
「顧客BS」(※)では、過去のデータをもとに顧客維持率を算出し、新規顧客を獲得しない場合、5年後に売上がどれくらいになるのかを予測します。つまり、ショップのファンになってくれたお客様から得られる未来の売上を把握することができます。
また、「ゴールド顧客育成マップ」では、優良顧客の残存率を測ることができるほか、顧客を購入頻度ごとにF1からF5まで分けて、各転換率を確認することができます。顧客育成の成果を指標とすることで、新規獲得に依存しないショップ運営を目指すことができます。
(※)「企業経営において、BS(Balance Sheet/貸借対照表)は会社の現在の資産状況を表す。資本は「利益を生み出す源泉」であり、BSを見ればその大きさやバランスを確認することができる。
──これらのレポートによる分析結果を、次の施策に活用する訳ですね。
「楽楽リピート」は多彩な顧客コミュニケーションの機能を有しており、新CPM分析機能によって得られたデータは、さまざまな顧客育成の施策に利用することができます。
中でも特徴的なのが、同梱物に関する施策に強い点です。「楽楽リピート」ならではの機能ですが、本商品以外に入れるチラシやサンプルなどの同梱物を事細かく出し分けする機能が備わっております。当社のクライアント様においては同梱物を100%手に取る広告だという認識をしていただいております。その同梱物を細かい条件設定で、どのお客様にどんな同梱物をお送りするかを設定し、いわゆる「One to One」の施策が打てるのが魅力です。エンゲージメントが高まりやすい「届いた商品の箱を開ける時」に、最適なメッセージを送ることができるのです。
この新CPM分析機能は年商1000万~100億円規模の幅広いレンジの事業者様の利用を想定しており、大規模な事業者様にも有効に活用していただける仕様となっています。
事業者の声を聞き、今後も新機能を続々とリリース予定
──この新機能はどのような課題を持つEC事業者に利用してもらいたいですか。
ECの売上向上のために取り組んでいるが、成果が見えにくいと感じている事業者様にご利用いただきたいと考えています。課題の可視化のために、目先のLTVやF2転換率に走りがちの傾向がありますが、売上が下がってからではなく、下がる前から長期的視野をもって対策するために、新しいCPMの考え方を取り入れた本ツールを活用いただければと思います。
システム・データ移行の実績も多数ありますので、現状のカートに課題を感じておられ、「楽楽リピート」へのリプレイスをご検討の事業者様にもぜひお問い合わせいただければと思います。
──今後の展望について教えてください。
市場には商品が溢れ、商品だけでは差別化が難しい時代となっています。また、法規制などの制約もあり、新規獲得において過剰な広告訴求は困難になりました。そのため、継続可能なEC事業においては、「顧客のファン化」が非常に重要な要素となっています。
当社では、自社ECショップで紹介プログラムやアンバサダー制度が実施できる「お友達紹介機能」を先日リリースし、好評を博しています。このようなファンマーケティングの世界観を実現するための機能を、今後も積極的に追加していく予定です。
また、機能に関する新規のご要望をお伺いする窓口も用意しています。「楽楽リピート」は事業者様とともに育てていくもの、と考えておりますので、広く活用いただきご意見をいただければ幸いです。今後の進化に引き続きご期待ください。