越境ECは遠方への輸送が避けられない! 問われる環境保全問題に物流を担うDHLはどう取り組む?
オンラインで発注された商品は、国内外を問わず購買者のもとへ何らかの輸送手段を使って運ばれる。輸送に伴うCO2排出量の削減は、環境問題の一つとしてEC業界にとっても、重要な課題だ。特に海外への配送となれば当然、遠距離の輸送を伴い、飛行機や大型車両などが輸送手段に使われCO2の排出量も多くなることが明白で、だからこそ、CO2削減への寄与にどう取り組むべきかは、企業姿勢が問われるところだ。しかし一口に環境への取り組みといっても即効性のあるものから将来を見据えて準備すべきことなど様々だ。複数の選択肢がある中、DHLジャパンは新たな輸送サービス「GoGreen Plus」を開始。環境保全という課題に取り組みたいと考えるEC事業者にどのようなメリットをもたらすのか、DHLにヒアリングしながら、ひも解いてみた。
世界中で高まった地球温暖化対策への取り組みとEC業界
いつまでも終わらない夏を過ごした日本では、地球温暖化の影響をひしひしと感じることが多かった。もちろんこれは日本に限ったことではないだろう。だからこそ、今、CO2をはじめとした温室効果ガス(GHG)の削減は、世界的に喫緊の課題となっている。先進的なグローバル企業の多くは、「カーボンニュートラル」を宣言、具体的な削減目標を掲げる企業も多い。
EC業界にもその波は来ている。世界各国に購買者をもつ越境ECビジネスでは、日本のみならず海外の顧客の環境保全への意識や温度感を知ることが重要となる。
今年、DHL は、グローバル市場世界主要11か国のオンライン買い物客5万人を対象に、彼らのオンラインショッピング傾向をより深く理解するための調査を実施した。
国、エリアによって国民のエコ意識の高低や、環境保全への取り組み度合いは違うということは理解しているものの、越境ECを展開している事業者は、知っておくべき興味深い調査結果が見られる。様々な角度からの調査結果の中で「持続可能性の実現」に関する結果を見ると、驚くべきことに、全回答者の70%以上1*が、配送や梱包などへ配慮しているより持続可能性の高いEC事業者を望んでいるという。また、国によっては、環境に配慮した配達を実現できるのであれば、そこに多少お金がかかっても、また少し配達に時間がかかっても構わないという回答者が半数以上いた。調査結果があなたのビジネスにとって何を意味するか?商品をただ購買者に送るだけではなく、環境に優しい配送オプションが選択できるなど、彼らの選択肢を広げることが求められると言える。
なぜDHLがカーボンインセットに取り組む?
今年、国際エクスプレスのリーディングカンパニーであるDHLが、持続可能な航空燃料(SAF)の使用により、顧客(事業者)の輸送に伴う二酸化炭素排出量を削減できる業界初の輸送サービス「GoGreen Plus」を日本でも本格導入した。
DHLが「GoGreen Plus」のサービスを提供することになったのは、業界のトップリーダーとしての責任を果たすことで、持続可能な輸送を実現するため。
「気候変動は現代における最大の課題ですし、消費者にもEC事業者にも、もちろん私たちにも、大きな影響を及ぼしています。ですが、物流においてはCO2を多く排出する航空機や車両を使って輸送している事業者様がほとんどでしょう。でも、このままでは持続可能な輸送とは言えません」(DHL広報担当者)
「日本国内で言えば、EVの積極導入や、2022年に契約更新した東京都新木場の大型物流施設『東京ディストリビューションセンター』に再生可能エネルギー施設を導入するなど、配送・施設両面からの排出量削減への取り組みですね。ただ、それだけでは十分ではない。配送を依頼されるお客様にも、“排出量削減が可能となる選択肢”を提示したいと考えました。それが、『GoGreen Plus』なのです」(DHL担当者)
業界初の新サービス「GoGreen Plus」とは
では具体的に「GoGreen Plus」はどのようなサービスなのか。
今回、日本のDHLでは「GoGreen Plus - ベーシック」「GoGreen Plus - カーボンリデュース」を含む利用頻度に応じた全3種類のサービスを展開するが、最大の特長は自社のバリューチェーン内でCO2を削減する「カーボンインセット」の取り組みであること。自社で削減しきれないCO2排出量を他社から購入した炭素クレジットと相殺する「カーボンオフセット」より、直接的に環境・自然保護に貢献できることになる。
「GoGreen Plus」は、SAFの使用により、輸送に伴うCO2排出量削減が可能となる輸送サービスとなっている。現状で言えば、必ずしも日本発着便がSAFを使っているわけではないが、グループとして大型契約を結んだ結果、「GoGreen Plus」のサービスを利用した事業者は、直接DHLのネットワーク内で使用するSAFに投資することとなり、これを自社の「カーボンインセット」として申告できるわけだ。
自ら燃料を購入しなくても、「GoGreen Plus」を採用しさえすれば、CO2排出量削減を目指す事業者は、それが達成できてしまうのだ。
海外の購入者からは「環境に配慮しているか」が問われる
では現時点で実際に導入しているのはどういった事業者だろうか。
「例えば、アパレル業界の事業者様は、海外からの評価としても大きな意義を感じていただいています」(DHL営業担当者)
冒頭でも取り上げた通り、グローバル市場を見ると環境への意識が高いユーザーも多い。そうなると、自らもCO2削減に寄与できる配送オプションを用意しておけば、環境に配慮している企業として認識され、購入者からプラスに捉えられる。もちろん、数ある競合の中での差別化にもなるし、ブランディングにも役立つ。
「日本ではこうした取り組みを『自己満足としての環境サービス』としか自らは評価されていないこともあるのですが、越境EC市場においては、アピールポイントとなります」(DHL営業担当者)
物流業界のリーダーとして企業責任を胸に、メリットもしっかり与える
DHLの営業担当者は、「SDG’SとCO2削減への取り組みは、今後欧米企業と取引を行うためのパスポートになるのでは」と話す。確かに、越境ECに乗り出している事業者であれば、環境貢献をしていることは海外の購入者(消費者)に向けて大きなアピールとなる、逆に、配慮がない場合購入を断念されるケースもある、という経験をしてきている事業者もいるかもしれない。
「世界のEコマースの急速な成長と併せて、消費者の考え方の変化、環境保全問題に対する高まりなど、事業者様が考慮しなければならないことも多種多様に変わりつつあります。環境問題で言えば、事業者様がこういった取り組みを導入されることで、世界中で展開されるビジネスの成功の一助になればと思います」(DHL営業担当者)