越境EC、オーストラリアに販路を拡大するメリットとは? eBayオーストラリアからの“交換留学生”Eric Chen氏にインタビュー!
越境ECでチャンスをつかむなら、「どのサイトを使って、どの国に向けて販売するか」は重要だ。海外販売を始めるにあたり、まずアメリカを販売先の候補に挙げる人が少なくないが、実は今ひそかに注目されているのが、オーストラリアだ。同国のEC事情を、eBayオーストラリアからイーベイ・ジャパンへ1年間の“交換留学中”であるEric Chen氏に聞いた。
オーストラリアでは、どんな商材が売れている?
──日本のEC市場が成熟してきたこと、さらには円安の影響などもあって、日本のEC事業者の間では越境EC進出は「必須項目」と思えるほど、重要になってきました。特に「どの国に進出するか」は重要です。
Eric Chen氏(以下、Eric) そうですね。eBayに関して言えば、チャンスが多いからこそ、出品する国特有のトレンドのリサーチは欠かせませんし、その国のユーザーの購買行動の理解は欠かせないと思います。
──今ホットな市場はどこだと思いますか?
Eric それはもちろん、私の出身国、オーストラリアでしょう!
──オーストラリア! それはなぜでしょう。
Eric オーストラリアの国民性として、中古品を購入することが一般化しているということが大きいですね。「国民生活7月号」(2023年7月18日発行)の「[オーストラリア]中古家電の賢い買い方」(※1)でも紹介されていますが、オーストラリアの中古製品市場は 2022年までの3年間で 44%増加し、620億豪ドルに達しているんです。
また、調査によれば(※2)、オーストラリア人の6割は中古品を購入しているというデータも出ているほどなんですよ。
──日本だと、中古品に抵抗感のある人もまだ少なくないので、6割と言うのは驚きです!
Eric 日本では中古品というと、ブランド物のバッグやアクセサリーなど、ラグジュアリーなカテゴリーのものが主流ですが、オーストラリアでは、よりカジュアルな中古品を安価で売買する傾向があります。
──となると売れるのはバッグなどのラグジュアリーな商材だけではないということですか。
Eric もちろんそうした商品も人気がありますが、実は、全オーストラリア人の4分の1はコレクターだ、という調査もあるんです。アンティークグッズやラグジュアリーアイテムも人気ですが、「ポケモンカード」をはじめとするトレーディングカード(トレカ)など、日本でしか入手できないものもトレンドになっているんです。
※1:「国民生活7月号」(2023年7月18日発行)の「[オーストラリア]中古家電の賢い買い方」のソースは以下
・・CHOICE(オーストラリア消費者委員会)ウェブサイト
・・ACCC(オーストラリア競争・消費者委員会)ウェブサイト
※2:Roy Morgan ‘The Future of Retail’ report 2023
日本のトレカが大人気な理由
──日本のトレカは比較的、アメリカで人気が高いイメージがありました。特に、アメリカに本社を構える世界最大級の第三者トレカ真贋鑑定・グレーディングサービス会社「PSA(Professional Sports Authenticator)」による、トレカ鑑定の影響は大きいですよね。
Eric おっしゃる通りですね。PSAではグレードが1から10まであり、「4つの角が完璧に尖っている」「汚れやシミ、日焼けがない」など細かい基準が設けられています。このPSAのグレードが高いほど、価格も高くなります。
特に今年からはPSAが日本国内でトレカの鑑定サービスを開始したため、より鑑定に出しやすくなって、これまで以上にトレカを出品しやすくなったんです。
オーストラリアではまだPSA鑑定のサービスが展開されていないので、オーストラリアのコレクターの間では、PSAできちんと鑑定されたグレードの高いカードの需要が高く、だからこそ日本から出品されたトレカは人気が出やすいと言えますね。
トレカだけではもちろんなく、ラグジュアリーブランドのバッグや時計も人気ですよ。日本ではブランドアイテムを買い取る店が多数、全国展開していますが、オーストラリアには同様の店はないですから。ブランドのバッグや時計の中古品が市場にはあまり出回らず、手に入りにくいんです。例えばルイ・ヴィトンと草間彌生のコラボのような稀少品は、オーストラリアで非常に人気ですね。
“改造マニア”に、日本車の部品が大人気
──ほかに日本ならではのもので、オーストラリアで人気のものとなるとなんでしょう。
Eric トヨタやマツダのような日本車の純正部品は常に人気です。
──オーストラリアで、日本車が人気なのですか。
Eric そうですね。FCAI(オーストラリア連邦自動車産業会議所)の調べでは、メーカー別の売上は2022年の1位がトヨタで2位はマツダと、日本ブランドが上位を占めているほどです(※3)。ただ、部品が手に入りにくいのが悩みなんですよね。
──部品となると、修理のために必要、ということでしょうか。
Eric もちろん修理のために部品を購入するケースは多いと思いますが、オーストラリア人は自分で愛車を改造する人がとても多く、強い情熱をもって自分好みにフルカスタマイズする人たちが、日本でしか探せない部品を求めるんです。だから需要が高いんです。
──なるほど、トレカにしても愛車改造にしても、コレクター&マニアック気質を感じます。
Eric また日本でも多いと思いますが、フィルムカメラやカメラレンズの日本ブランドへの信頼感は強く、やはり人気ですね。
※3 出典:FCAI「FCAI releases 2022 new car sales data」
オーストラリアに出品するメリットは?
──日本の商材の人気度は、オーストラリアに出品するうえでの大きな動機になり得ますが、ではメリットはいかがでしょう。どういった点で、オーストラリアだからこそ出品するとメリットがあると言えますか。
Eric 日本と季節が真逆であることが挙げられます。日本が夏の時季にオーストラリアは冬、日本が冬の時は夏になるということは、商品の入れ替え時期も逆になるんです。日本が冬から春に商品が入れ替わるころに、オーストラリアでは秋から冬を迎えることになるので、冬服の需要が高まっていきます。すると、日本で在庫が残った冬の衣服も、オーストラリアで引き続き売れるため、販売期間がより長くなり、チャンスも得やすくなるんです。
日本では冬になると、釣り具やゴルフ用品、アウトドア用品などの売れ行きが下がりますが、オーストラリアではアウトドアスポーツやキャンプを楽しむハイシーズンに突入します。つまり、季節による売上の波を補完し合えるのが、オーストラリアだと私たちは思っています。
──なるほど、季節が逆だと売りにくいのかと思いきや、補完し合える…聞けば聞くほど、可能性を感じますね!
Eric もう一つ、メリットとして挙げたいのが、オーストラリアでのeBayの歴史の長さ、影響力の強さです。アメリカでeBayが設立されたのは1995年ですが、オーストラリアではその直後の1999年から展開しています。ですのでオーストラリアでのeBayの認知度は非常に高く、最も利用されるECプラットフォームの一つになっています。
オーストラリアでは消費者の62%がeBayで購入しているというデータ(※4)もあり、ネット上での訪問数調査をした最近のデータ(2023年9月)では、eBayのサイトがNetflixよりも多かったという結果も出ているほどです(※5)。
──となると、オーストラリアでECビジネスを展開するなら、eBayが圧倒的に有利ですね!
オーストラリアへの出品、現地に出品できる「eBaymag」の利用でさらに有利に
ここから先は、eBayを使った多国展開の可能性について、Chen氏と同じカテゴリーマネージメント部に所属するもう一人のインターナショナルメンバー、韓国出身のMinKyung Kim氏も加わり話を聞いた。
──MinKyungさんは韓国ご出身なのですね。eBayは出品できるマーケット同様、職場環境もグローバルなことを実感します……! MinKyungさんから見て、オーストラリアのマーケットとしての魅力はどういった点にあると思いますか。
MinKyung 出品に関して言えば、オーストラリアは他の国々に比べ、規制が比較的ゆるやかで、参入しやすい面があります。もちろん規制が厳しい国へ出品する場合でも、問題なく輸出をしていただけるよう、イーベイ・ジャパンでセラー(販売者)へのサポートは行っていますが、もしアメリカ以外の国にも進出したいと考えているのであれば、オーストラリアはスタートするのに良いマーケットかと思います。
Eric ただ、オーストラリア向けに販売するなら、アメリカのebay.comに出品するより、もっとよい方法があります。それは、オーストラリアのeBayサイト、ebay.com.auに出品することです。アメリカで出品すれば世界中の人が注目してくれる──と思うかもしれませんし、実際アメリカに出品した際、「配送先」をオーストラリアに指定すれば、オーストラリアに配送することは可能です。でも、ebay.comへの出品を介してだと、オーストラリアのサイトでは検索上位に上がらないため、実際には買い手の目にとまりにくいというのが現状なんです。
MinKyung そこで活用していただきたいのが「eBaymag(イーベイマグ)」なんです。「eBaymag」はeBayセラーが利用料無料で活用できるeBay公式のツールです。こちらを利用してebay.com.auに出品したほうが、検索順位が上がり、現地の買い手の目にとまりやすくなります。「eBaymag」を利用すると、一度に最大8カ国のeBayサイトに同時出品ができるんです。もちろん、いきなり8カ国に出品することをお勧めすることはありませんが、ただ、オーストラリアだけでもこのように様々なトレンドがあって、しかも世界中からの出品者がいる状態です。ぜひ有効活用してもらいたいと思います。
──「eBaymag」が何か、気になりますね……。
MinKyung それは次回ぜひ、詳しくお話しさせてください!
※4:Pattern’s Marketplace Consumer Trends Report 2023
※3 出典:Top Websites Ranking