常にお客様目線を忘れない。EC売上を伸ばし続けるセキミキ・グループの戦略とは

田中凌平

セキミキ・グループ株式会社 EC事業部 事業部長 嶋内一紀氏

アパレルブランド「Gready Brilliant(グレディブリリアン)」を手がけるセキミキ・グループ株式会社は、2016年に自社ECを開始し、順調に売上を伸ばしている。お客様目線を忘れない運用を続けたことによって、「第15回 全国ネットショップグランプリ」(2023年)においてSEKIMIKI OnlineがECのミカタ賞を受賞した。同社 EC事業部 事業部長 嶋内一紀氏に、ECのメリットやECで売上を伸ばし続ける戦略、今後の展望について伺った。

型数の多さとセールとの相性が、ECが伸びたきっかけ

──ECを始めたきっかけを教えてください。

ECは2016年12〜2月にプレオープン、2017年3月から本格的にオープンしました。当時はアパレル業界でECが盛り上がっていたので、店舗の補填役として始めたのが主な理由です。グレディブリリアンは店舗がメインですが、近くに店舗がなかったり引っ越して店舗へ行けなくなってしまったりしたお客様がECで購入していただければという思いです。

立ち上げ時にECシステムはいろいろと検討したのですが、コスト面と使いやすさからフューチャーショップさんのECプラットフォームの「futureshop」を利用しています。専門的な知識がなくても使用できることに魅力を感じました。

SEKIMIKI Online「グレディブリリアン」のトップページ

──ECの売上が伸びてきたのはどのタイミングですか。

オープンしてから4カ月後のセール時期です。当時のグレディブリリアンは型数が多く、あまり商品を縦に積んでいませんでした。すると店舗は30坪ほどの広さが多いため、店頭に出しきれない商品が発生してしまいます。そこで店頭に出ていない商品を値下げして売ってみたら、売上につながりました。

グレディブリリアンは単価が高い商品なので、店頭にぎゅうぎゅう詰めでディスプレイすることはできません。ですが、ECはある程度の型数があった方が見栄えがいいので、店舗の補填役としてぴったりです。

お客様にとって必要な情報を表示することが大切

──EC運営で工夫されていることを教えてください。

商品詳細のページをわかりやすくするために改善を続けています。具体的には、お客様が見ている商品に似ているものや、コーディネートのおすすめを表示することなどです。商品画像だけでなく、動画も取り入れてモデルに1周してもらい、着用時の動きもわかるようにしています。

また、アパレルはサイズ感が大切ですが「unisize(ユニサイズ)」を導入することで、お客様に合ったサイズの商品提案ができる状態にしています。過去に購入した商品との比較もできるので、2019年頃に導入して以来、サイズ間違いによる返品の比率は減りました。

グレディブリリアンの商品詳細ページ

──ECでも商品の詳細がわかるのはとても親切サービスですね。

以前ECに関するアンケートをとった時、お客様からは「遠くに引っ越しても買える」「店舗に行かなくても済む」といったポジティブな声が多く上がりました。

一方で、ご指摘やご要望の声もあったんです。そこで私たちは店舗とECでの顧客情報とあわせて、ポイントの統合も行いました。基幹システムを全て入れ替える大幅な変更だったのですが、そのおかげで店舗とECの両方で買ってくださるお客様の属性が簡単に把握できるようになりました。見えてきた傾向から、お客様に喜んでいただけるようにポイント10倍キャンペーンなども打ち出しています。

CRMに力を入れてEC売上を伸ばし続けている

──ECを運営するなかで苦労はありますか。

店舗との共存は課題だと感じています。特にグレディブリリアンは店舗スタッフの売上が給料に反映される部分があるので、EC主体で進めてしまうと販売員のエンゲージメントに影響が出ます。

そこでECと店舗を公平にするために「STAFF START(スタッフスタート)」を導入しました。スタッフスタートでは自社ECでオンライン接客ができるため、ECでの売上に貢献してくれた販売員に対して評価を与えられます。実際に「STAFF START」でのコーディネートを見て購入してくれるお客様が半分くらいいるので、間違いなくタッチポイントになっていますね。 それまでは手動でスタッフの写真を撮ってコードを組んでアップしていたので、工数は大きく減りました。

グレディブリリアンの店舗スタッフによるInstagram

──苦労もある一方で、ECを始めて良かったと感じる点を教えてください。

売上が伸びたことです。店舗に行くのをやめてしまった人がECで再び購入してくれるようになりましたし、全体の18%ほどであるECと店舗の両方で購入してくれるお客様の年間購入額が伸びました。

コロナ禍によって、アパレル業界全体でECの売上は伸びたのですが、今はその反動で前年比を落としているブランドが多いです。その中でグレディブリリアンは前年比105%を保っています。

グレディブリリアンがEC売上を保てているのは、CRMに力を入れているためです。アクセス数は落ちてしまっているので、客単価やセット数を上げるための施策を打っています。例えば、よくアクセスするけれど購入に至らない人にはクーポンを出すなどです。また、ある商品を買ったら、自動でその商品に似合う商品を紹介することも行っています。これらはデータXさんのb→dash(ビーダッシュ)を利用させていただき、セグメント化の工数も大幅に削減しました。そのおかげで、従業員はアイデア出しに十分な時間を割けています。 さらに「unisize」「STAFF START」を連携させると、お客様の体型とスタッフの体型を照らし合わせて、お客様に合ったコーディネートを一番上に表示することも可能です。

お客様目線を忘れずに今後も展開していきたい

──EC運営で大切にしていることを教えてください。

とにかくお客様目線を忘れないことです。EC運営を続けていると、たくさん商品を見せたくなったり、かっこいいサイトを作りたくなってきたりします。そのような理由でカルーセルを入れるケースがあるのですが、確かにサイトの見た目はよくなりますが、お客様からすると画像はめくれない方が見やすいんです。

やろうとしていることは自分たちの自己満足ではないかを気をつけて、常に改善を続けています。

「越境ECにも挑戦していきたい」と語る嶋内氏。すでに台湾や香港などを中心に調査を始めているという

──今後はどのような展開を考えているのでしょうか。

もっとお客様に合った情報と商品を提供していきたいです。今のグレディブリリアンを買ってくださるお客様の平均年齢は47歳なので、今後は30代のお客様もターゲットにしていきたいです。そのために2024年3月からは新しいブランドを立ち上げて、Web限定の商品も展開する予定です。

また、越境ECにも挑戦していきたいですね。日本の年齢分布を考えると、10年後には購買客の25%が減ってしまう計算です。そこでECでできることとして越境ECがあると思い、台湾や香港などを中心に調査を開始しています。

これからも店舗とECで足並みを揃えて、お客様が満足できる商品を提供したいと考えています。

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記者プロフィール

田中凌平

フリーライター。東京都生まれ。ラグジュアリーブランドでの接客経験を活かし、話し手に寄り添ったインタビューが得意。上場企業の経営層から個人まで幅広く対応。ジャンルを問わずSEO記事やコラムも執筆し、取材記事を含めてこれまで300本以上の記事を執筆。

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