自分ひとりが頑張ってどうにかなる時代ではない!ネットワークこそが最重要──攻めのaccaがEC業界的「物流2024年問題」を斬る
DX化に失敗する物流現場が多いのはなぜか。ECのフルフィルメント業を担う株式会社アッカ・インターナショナルのSales Division Warehouse Robot Implement Evangelist(セールスディビジョン 倉庫ロボット導入エバンジェリスト)の林千博氏は、「ただ機械を入れればいい」と考え、自分たちの企業をどう成長させたいのか、信念、ポリシーがないからだと指摘する。では物流現場のDX化を成功させるためには、何から着手すればいいのか。引き続き、林氏に聞いていく。
【これまでのインタビュー】
第1回:「トラックドライバーの奪い合いは、起こったほうがいい」
新しい機械を導入したら、まずトップが実際に触ってみるべき
──物流現場のDX化について、EC事業者はどう捉え直す必要があるでしょうか。
DX化のために最新機器を導入した場合、ほとんどの経営者の方が最初に着手されるのは、その最新機器を扱う担当者を決めることだと思います。でも私は、誰も扱ったことがない機械であればあるほど、まず経営者の方が実際に手を動かして触ってみてほしいと思っているんです。
誤解してほしくないのですが、私はなにも「社長だから、会社のことは何もかも知っていて当然」と言っているわけではありません。DX推進には経理部門、管理部門、調達部門などにいたるまで、関連する部署がすごく多いのが実情です。大型の機械を導入するのであれば、消防法や建築基準法の知識も必要になりますし、ファシリティ(土地、建物、設備など)の知識も必要です。ところが倉庫の電源に100ボルトと200ボルトの2種類があることも知らない経営者もいます。「自分はこういう新しい機械のことはわからないから」と最初から担当者に任せっきりにして手も触れない……となると、部署同士の連携がしにくいので話が前に進みませんし、担当者が孤立してモチベーションが下がってしまいがちです。これではDX化が進むわけがありません。
得手不得手はある。だからこそアドバイスをもらえるネットワークづくりを
──でもトップといえども人間ですから、得手不得手がありますよね。
もちろんです。ただ私たちもですが、不得手な分野こそ、しっかり勉強しなくてはいけないですし、勉強してもわからないところは、わかる人に聞きまくるしかありません。そうやって、自分から学ぼうとする人には必ず、サポートしようとする人が現れます。
私は2024年4月にオープンした「PAL CLOSET Robotics Solution Center」(倉庫ロボティクスソリューション「Skypod」システムを採用した最新EC物流センター)のプロジェクトマネージャー(PM)を務めさせていただきました。その時も、最新型の施設だけに初めてぶつかる課題がたくさんありました。ただこれまでの経験から、例えば「ファシリティのことなら、この人に聞けば答えてくれる」など、多種多様な「困り事」に対し、応えてくださる方々がたくさんいるとわかっていました。そうした方々は社内だけでなく、仕事でお付き合いさせていただいてきたパートナー企業の担当者さんだったり、ベンダー企業の担当者さんだったり……。そういう “チーム林”のような存在がいればこそ、困難なプロジェクトを達成できたのだと思います。
今でこそコンサルティングとしての仕事まで手掛けていますが、僕自身はアパレルの販売員出身で、例えば大学などで専門的に学んだ経験はありません。でも自分に専門性がないことを痛いほど自覚しているからこそ、必死で学ぼうとしましたし、だからこそいろんな人が応援してくれているのだと思っています。
「全部をすっかり任せられる『高度物流人材』がどこかにいるはず」という考えをまず捨てる
──「社内に高度物流人材がいない」という話もよく聞きます。
私は「高度物流人材」という言葉が一人歩きしているように思えてなりません。「高度」って何でしょう? 今、社内にいる従業員は高度な人材ではないのでしょうか? 「DX人材」という言葉も同じで、資格や国家試験があるわけでもありません。普通にパソコンが使えるなら、誰でもDX人材を名乗っていい。「全部をすっかり任せられる『高度物流人材』がどこかにいるはず」という考えをまず捨てることが大事だと私は思います。
私は人財=人脈だと思っています。人脈とは、ネットワーク。今の時代はひとつのプロジェクトを達成するのでも、非常に多岐にわたる知識が必要とされる時代であり、自分ひとりが頑張ってどうにかなる時代ではありません。また自分が常に、全てのことに対して最新の知識を持てるわけはないのですから、プロに聞いたほうが早いし、間違いがない。「AIを入れたら最適解が得られる」と思っている人も多いですが、AIが最適解を得られるのは、自ら学習して進化する「ディープラーニング」が技術の基盤だからです。
──では林さんが考える「DX人材」とはどのような人か。それを次回にお聞きしようと思います。