「今」だけでない アッカ・インターナショナルが進む「ミライ」とは、「EC物流の解決策」とは──攻めのaccaがEC業界的「物流2024年問題」を斬る
ECのフルフィルメント業を担う株式会社アッカ・インターナショナルSales Division Warehouse Robot Implement Evangelist(セールスディビジョン 倉庫ロボット導入エバンジェリスト)の林千博氏に、4回にわたって話を聞くインタビューの最終回。物流現場の課題を解決し続けてきたアッカ・インターナショナルのコンサルティングのスタイルについて、また、林氏をはじめとする同社のコンサルティングがどのような世界を目指しているのかを聞いていこう。
【これまでのインタビュー】
第1回:「トラックドライバーの奪い合いは、起こったほうがいい」
第2回:自分ひとりが頑張ってどうにかなる時代ではない!ネットワークこそが最重要
第3回:「DX化がうまくできない」と嘆くのは夢を見すぎでは? マシーン+ヒト=DX化である
「コンサルタント」を名乗る人を、信用していない
──事業の課題を解決するのにコンサルタントを頼る風潮がますます強まる一方、「結果が出なかった」という声もよく聞きます。そういう相談を受けた時、どのようにお答えになりますか。
私は基本的に、「コンサルタントです」と自称している人はあまり信じていません。うちの会社も2023年からコンサルティングサービスを始めているのですが、自分からコンサルタントを名乗ったことはありません。
なぜこんなにコンサルタントを名乗らないのかというと、私たちもさんざん、現場を全然知らないコンサルタントから机上の空論のアドバイスをされて、嫌な思いをしてきているからです。コンサルタントをしている人って基本的にスーツを着て、現場を偉そうに歩いているイメージが強いんですよ(笑)。
そういうコンサルタントが嫌だったからこそ、アッカ・インターナショナルでコンサルティングをする時は、ラフな格好で従業員の方たちと一緒に現場に入り、いっしょに作業をしながら、パートさん一人ひとりと話して、何を考えて仕事をされているのか、何を改善したらいいのかを導き出しています。本当に仲良くなって「次はいつ来るの?」なんて聞かれることもよくあります。だからこそ、切羽詰まった本音を聞かされることも多いですし、「DX化しないほうがいいのでは」と悩むことも少なくありません。
DX化によって事業の良さが失われる場合もある
──DX化しないほうがいい現場とは……。
DX化によって皆さんのモチベーションが下がる場合もありますし、扱っている商材によっては自動化によって一番大事にしている部分が失われてしまう場合もあります。コンサルティングをさせていただいていているチームのスタッフが、いっしょに働く中で様々な話を聞いて、最終的に「ここはそのままでもいいんじゃないか」という結論を出すことも珍しくありません。
──DXコンサルタントという肩書の方だと、DX化することが前提でコンサルティングを進めますが、そこが違いなんですね。
そこで働いている人がどういう人たちなのか、どういう生活を送っているのか、DX化したらそれがどうなるのかを考えて提案をしなきゃいけないと思っているんです。「この機械とこの機械を入れればDX化は完成」じゃ、ダメなんです。「DX化で効率化したから人件費カット」なんて許される時代ではないですよね。そこで働いている人がどんなことに困っていて、何をしてあげることが最善なのかを考えるのが本当のコンサルティングだと私たちは考えているんです。
アッカ内部でDX化した時のつまずきを、コンサルティングに生かしている
──では逆にDX化が必要な場合、どのように進めるのでしょう?
まずは浮上した課題を、細かく掘り下げていきます。なぜ普通にできるはずのことができないのか。人がいない、能力がない、知識がない、適材適所ではなくアンマッチな配置になっている……など要因は色々あると思いますが、とことんブレークダウンした時に見えてくるモノがあって、まずそれをやろうという話をしていきます。その時に、あれもこれもマルチタスクでやろうとすると一つ一つが荒くなるじゃないですか。だから1個でいいから100%取り組めるものを提案することもあります。実はアッカ・インターナショナル内部でもそのようにして業務改善してきたので、その経験を今度は外部向けにコンサルティングをしている、ただそれだけです。そして、それが時にDX化提案になるだけです。
最後の最後は、倉庫自動化の技術で社会貢献できたらカッコイイと思ってる
──では最後に、今後、どのように事業を育てていきたいとお考えかお聞かせください。
倉庫業とか配送業は社会福祉面で遅れていて、障碍者雇用もなかなか進んでいません。でも、DX化を進めることで、障がいを持たれた方でも高齢の方でも、誰しもが働き得る環境を作れるかもしれない。例えばロボットハンドを研究しているベンダーさんがいたとして、そのロボットハンドがあれば片腕がない方々が現場の仕事をできるかもしれない。AMRを進化させたら、車椅子の方や年配の方も普通に倉庫で働けるようになるかもしれない。それができれば、労働人口の減少も解決することになるかもしれませんよね。
そういう小さなソリューションを生み出して社会に広げていったら、すごい変化を起こせるじゃないですか。その社会変化のきっかけ、第一歩を創りだせるような会社でありたいですし、それが、倉庫DX化のリーディングカンパニーであるアッカ・インターナショナルが目指すべきことだし、私たちに課せられた使命ではないかと考えています。歴史に名前は残らないのかもしれませんが、自分たちが作り上げたソリューションの一部が次世代のNewNormalのベースになるってすごいことだと思います。
壮大なスケール感かもしれないですが、それだけのことをしたいという野望は抱いてますしアッカ・インターナショナルならできると思っています。
最後に──ともに「ミライ」を描いてもらえるのか?
4回にわたる林氏のインタビューを通し、改めて浮き彫りになったのは、経営者をはじめ、多くの人が物流問題の根本が詰まった「現場」に向き合えていない現状だ。林氏の言葉を借りれば、DX化はコストカットや省力化を目的に推進するものではない。にもかかわらず、「人手がないから、原材料費や燃料費が高騰しているから」という理由で、DX化を急ぐケースは多い。しかし一時しのぎの対応では、持続可能な物流にはならない。
林氏の話の通り、「全部をすっかり任せられる」高度物流人材やDX人材が存在しているわけではないし、ましてや「コンサルタント」に依頼した瞬間、すべてうまくいくわけではない。といって、自社で全て解決しなければならないわけではない。自社がどんな解決を求めているのか、解決した先にどんな「ミライ」があるといいのか、ともに描いてもらえるパートナーを探し、これからの「問題のない持続可能な物流」を構築していくことが望まれる。