BAKEが取り組むOMO戦略とモール活用【株式会社BAKE セミナーレポート】

ECのミカタ編集部

株式会社BAKE(ベイク) 取締役 CBO 北村萌氏

コロナ禍で必要に迫られてECを開設し、その後、オンラインとオフラインを統合するマーケティング手法「OMO」(Online Merges with Offline)に取り組むようになったメーカーやリテールは多い。“1ブランド1プロダクト"のユニークなスイーツ専門店を次々にヒットさせてきた 株式会社BAKE(ベイク)(以下、BAKE)もその一つ。2024年7月2日にECのミカタ主催で開催したEC業界特化・課題解決型のオンラインカンファレンスから、同社取締役 CBOの北村萌氏に聞いた、「BAKEが取り組むOMO戦略とモール活用」の内容をお伝えする。

店舗ビジネス一辺倒の会社が、コロナでECに着手

クッキーに口どけのよいバターキャラメルとバタークリームを挟み込んだバターサンド専門店「PRESS BUTTER SAND」(プレスバターサンド)など、ユニークで個性的なスイーツブランドを多数展開していることで知られるBAKE。北村氏は2016年に入社し、2020年にEC事業である「BAKE the ONLINE」に携わるようになった。そこから店舗と、オンラインをつなぐOMO戦略の推進に着手。2022年にブランディング執行役員に就任、そして2024年7月1日には取締役CBO(Chief Branding Officer)に就任している。

「BAKE the ONLINE」トップページ(キャプチャー)

「ずっと店舗ビジネス一辺倒の会社だった私たちがBAKE the ONLINEを立ち上げたのは、コロナで店舗の売り上げが9割減と大打撃を受けたことがきっかけです。そこからオンラインビジネスをスタートさせ、アプリを作るなどして自社のDXを進めてきました。ECには完全にノータッチだったところから本当に垂直立ち上げをする必要がありましたので、Shopify(ショッピファイ)を使って、 自社サイトをオープンさせました」(北村氏)

現在は全国の商業施設や百貨店、駅で69(国内)のリアル店舗を展開(「ECのミカタ カンファレンス」より抜粋)

EC展開の壁1:ブランド間の顧客情報の統一

もともとは店舗ビジネスのみ、しかもカラーの強いユニークなブランドばかりだったので、ブランドカラーを守るためにも「ブランド間同士をつなげない」ことがそれまでの戦略だった。しかしコロナ禍をきっかけにECを始めたことで、BAKE自体をマスターブランド化させて、そこにブランドを紐づけていく戦略に大きく変更したのだという。

「コロナ禍はきっかけで、今後の会社の成長を見据えた戦略変更でした。同じ会社で運営しているのにブランドによって受けられるサービスが違ったり、一部のブランドでポイントが使えなかったりといったことは避けたいというのが、(マスターブランド化の必要性の)一番大きな理由です」(北村氏)

まずは、自社のアプリを起点に会員組織「BAKE Membership Program」を創設。オンラインでもオフラインでもシームレスに同じサービスが受けられる状態を作ることを目指しました」(北村氏)という。

OMO戦略は、顧客情報の融合がたびたび課題に上がるが、BAKEはさらに、店舗間、ブランド間それぞれの顧客情報がバラバラだったため、これらを一元管理することが大きな課題として浮上した。全ての顧客情報を統合するのには当然、長い時間を要したが、北村氏がそこで感じたのが、ベンダーとメーカー、担当者同士のコミュニケーションの重要性だった。

例えば、Aという機能を付ける依頼をする際、
・どういうお客様がいるのか
・そのお客様に対し、どういうサービスを提供したいのか

ということまで、明確に伝えるようにしたのだ。

「すると、『それなら、こういうやり方ができますよ』と逆にご提案いただけることがわかりました。関係各位と信頼関係を作っていくことが、システムの構築ではとても大事なんじゃないかなと思います」(北村氏)

ECの壁2:店舗とECで売れる要因になるかならないか異なる!キービジュアルの感覚の違い

BAKEのブロダクトヒットの要因の一つに、店舗や包装などキービジュアルのこだわりもある。特に重視しているのが、おいしそうなシズル感のある商品写真で、ブランディングの肝ともなっている。だが店舗で売り上げに寄与したシズル感のある商品画像が、必ずしもはECで売れる要因とはならなかった。

ECでは、中に何が入っているかが一目見てわかること、一瞬で商品がどういうものなのかわかることが非常に大事なのです。おいしそうに見えることはもちろん重要です。でも、まずどういうものなのかを知りたいというお客様のニーズを満たすことが第一。ブランディングを大事にしつつ、ECで売れる画像となるように気を付けています」(北村氏)

「架空のパティスリー『しろいし洋菓子店』」公式ブランドサイトより

「BAKE the ONLINE」より「架空のパティスリー『しろいし洋菓子店』」商品購入ページ

ECの壁3:EC開始当初は全て冷凍で配送していたが…配送温度帯整備はやはり重要

食品は商品によって提供方法も様々。店舗では冷蔵ケースで保管しているものもあれば、手土産として渡せるように常温で提供できるものもあった。だがECを開始した当初は、全てを冷凍で配送していた。

「配送温度帯が常温のものと冷凍のものを送る場合、温度帯を分けて2個口で送ると配送料がかさんでしまいますよね。それを避けるために全て冷凍で送ろうとしたのです。でも、例えばプレスバターサンドのように手土産での利用を想定した商品を冷凍でお送りすると、すぐに誰かにお渡ししたくてもできないですよね。なるべく店舗で同じ状態で商品をご提供できるように、常温でお渡しするものはそれができるような状況をきちんと作らなくてはいけないなということで、配送温度帯の整備に取り組みました」(北村氏)

配送温度帯の整備とともに注力したのが、プロダクトの再開発。チーズタルトやアップルパイのように店頭で焼きたてを提供する商品をEC用にカスタマイズしたり、EC用のプロダクトを作ったりして、開発部門を拡充することにも力を入れた。店舗のように焼きたてを提供するのが無理であっても、冷凍で届けて家庭でリベイクすれば、焼きたてが楽しめるような商品も開発。OMOの推進は、こうしたプロダクト開発と配送サービスの拡充を両輪として進めた。

ECの壁4:人気商品ならではの課題、転売問題対策が認知度拡大を後押し

ECの体制が整い始めた頃に課題として浮上したのが、転売問題だった。前述のようにBAKEのブロダクトは賞味期限が短く、一番おいしい状態で食べてもらうために配送温度に強いこだわりを持っていたが、Amazonなどで転売されるとそれを担保できない。そこで自社できちんと管理するために、Amazonでの販売をスタートさせた。だが楽天やAmazonでの販売を始めたことで、新規への認知が予想以上に広がったのは大きかった。

「今後も店舗とオンラインをシームレスにつなぐOMOは推進していきたいですし、2023年10月に立ち上げたオンラインを基軸とするブランドも拡大していきたいです。OMOを推進していく上ではやっぱりECというのは非常に不可欠な存在ではありますので今後店舗とECというものをちゃんとつなぎつつ、会社全体として成長していけたらいいなと思っています。自社オンラインとモール含めて、今EC化率としては8%を推移していますが、今後は15%を目指しています」(北村氏)。

店舗型からOMOへ、OMOを機に認知拡大へ──BAKEは今後、EC化率を上げ、さらなる飛躍が期待される。

BAKEのOMO戦略(「ECのミカタ カンファレンス」より抜粋)

北村 萌(きたむら もえ)
株式会社BAKE 取締役 CBO
2016年にBAKEに入社。1人目の専任広報として広報室を立ち上げ、「PRESS BUTTER SAND」や「BAKE CHEESE TART」などのスイーツブランド、コーポレート、国内外の新規出店、新ブランドローンチのPRを担う。2020年に新規プロジェクトやブランドの開発に携わりながらオンライン事業部長に着任、2022年よりブランディング執行役員(Chief Branding Officer)としてEC事業・新ブランド開発に注力。2024年7月1日より現職。


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