ECヘビーユーザーの調査結果から読み解く「売上に貢献する物流戦略」【ディーエムソリューションズ株式会社 セミナーレポート】
2024年7月、ECのミカタ主催で「ECのミカタ カンファレンス」Yahoo!ショッピング編が開催された。本レポートでは、中小規模のEC事業者に向けた物流代行サービス「ウルロジ」を提供しているディーエムソリューションズ株式会社の角田和樹氏によるセミナーから、「ECヘビーユーザーの調査結果から読み解く売上に貢献する物流戦略」について、お届けする。
EC創業期からのノウハウが詰まった物流ソリューション「ウルロジ」
2024年9月に20周年を迎えるディーエムソリューションズは、EC支援企業としては草分け的存在。創業期から物流事業とインターネット事業を展開してきているが、現在は同社が注力し始めているのが、自社で開発した物流ソリューションの「ウルロジ」だ。
「ウルロジではWMS(倉庫管理システム)を活用してモールやカートとシステム連携を図り、出荷の指示や在庫管理などがオンラインで出来るよう、入荷業務・在庫管理から発送業務までを一括で請け負っています。今後のEC市場拡大とともに、ダイレクトメールマーケティング、WEBマーケティングと並び、会社の第3の柱として成長させようと、力を入れている事業です」(角田氏)
5月からスタートしたYahoo!ショッピングの「翌日優良配送」で注意すべきこと
今、注目すべきトピックスとして角田氏が最初に挙げたのが、Yahoo!ショッピングが2024年5月からスタートした「翌日優良配送」システム運用時の注意点だ。これまでは「出荷遅延率」が5%未満かつ最短のお届け日が「注文日 +2日以内」の商品に対して優良配送マークがついていたが、「翌日優良配送」ではその名のとおり、注文日の翌日までに配送されることが必須条件となる。
「注意したいのは、土日祝日の休業日の設定。これを誤ると『配送が遅れた』とクレームになったり、一時的に優良配送の表示が削除されたりします。『ストア休業日』を設定し、『ストア休業日は出荷しない』を選択してください。ストア休業日でも『出荷する』設定を選択する場合は、委託倉庫を利用する場合は配送方法ごとに設定を無効化することも可能です」(角田氏)
しかし優良配送と認定されれば、検索結果やレコメンド枠での優先的に表示されたり、絞り込み検索による購入機会が向上したりするため、売上アップへの大きなインパクトが期待できるだけに、しっかり対応しておきたいところだ。
LTVに貢献する同梱物、ネガティブな印象を与える同梱物
続いて同社がECヘビーユーザーに対して行った独自調査の結果から、売り上げに貢献する「同梱物」についての分析を紹介。その結果、ユーザーが価格重視なのは当然として、それ以外では口コミや、商品に対するレビューを意識するケースが60%と、かなり多いことがわかった。
「ポジティブな口コミやレビューの内容を見ると、商品に対して満足しているのが大前提ではありますが、『配送が迅速』『梱包が丁寧』という理由も見られます。レビューがポジティブになればなるほど、売上にもインパクトが生まれますので、そこを意識していくのも重要。こうした物流関連を軽視すると非常にもったいないということがわかります」(角田氏)
また企業や商品のイメージアップにおいて、同梱物が有効な手段であることも同調査では示唆されている。「チラシなどのクリエイティブ制作は手間はかかりますが、作っておけば他のマーケティング施策にも使えるため、低コストでLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)」向上に寄与する可能性もあります」(角田氏)
LTV向上施策に最も貢献した同梱物が商品の割引クーポンで、回答者の約56.8%と半数以上が支持している。また挨拶状やお礼の手紙も意外に支持されていることがわかった。
逆にネガティブな評価が多かったのが、アンケート。特にいい評価を書くと対価としてプレゼントを贈るなど、サクラ的なアンケートに対して、嫌悪感を示す意見も散見された。「アンケートを強制するような仕掛けは、何気なく入れてしまいがちですが、マイナスの印象を与えることがあるので注意が必要です」(角田氏)
越境ECがしやすい世界8カ国「日本商材の海外需要に関する実態調査」
続いて、越境ECがしやすい世界8カ国を対象にした「日本商材の海外需要に関する実態調査」からのアドバイス。
日本での越境ECの市場規模は世界的に見ても大きく、中国・アメリカ・イギリスに次いで第4位。「日本を訪れた海外からの観光客の約9割の方が『訪日後もリピート買いしたい』と回答しているというデータもあり、ECは今後のインバウンド需要にも親和性が高そうです」(角田氏)
なお、越境ECには「言語」「法令」「物流」「税金」「決済」という“5つの壁”があるといわれているが、角田氏は仮説・検証を重視する「日本型のPDCAプロセス」(Plan=計画、Do=実行、Check=測定・評価、Action=対策・改善)に囚われすぎないことが重要だと語る。
「「日本流のPDCAはPlan(計画して)▶Delay(遅れて)▶Cancel(間に合わずやめて)▶Apologize(謝る)という最悪のPDCAになりがちという、ちょっと皮肉な意見もあります。越境ECのマーケットは海外ですからビジネスの考え方も海外仕様に切り替え、“やりながら考えること”が重要です」(角田氏)
また「商品ブランドに関心を持ったきっかけは?」という問いに対して、7割以上が「SNS」と回答している。「越境ECを展開していくためには、SNSをどう広げていくかという戦略も重要です。東南アジアだとフェイスブックが非常に重要視されているというような、ローカライズされた情報の収集もしたほうがいいでしょう」と角田氏。やみくもに越境ECに乗り出すのではなく、トレンドを注視しつつ現地の情報を収集し、常にニーズに合わせて変化させていくことも重要になりそうだ。