10年間で売上7.3倍に! 楽天市場SOY受賞のAXESが実践する多店舗展開成功の秘訣【株式会社AXES セミナーレポート】
楽天市場のショップ・オブ・ザ・イヤーをはじめ、多数の受賞歴を持つ「AXES」を展開する株式会社AXES。2024年7月9日に開催された「ECのミカタ カンファレンス」楽天市場編では、自社で実践している楽天市場での売上拡大のポイントや多店舗展開を成功させる秘訣を伺った。レポートではその一部を紹介する。
楽天市場における売上拡大の4つのポイント
株式会社AXES(以下、AXES)は、Fashion事業「AXES」、Beauty事業「Cosme Land」、そしてBPO事業であるEC運営代行サービスの三事業から構成される。世界中のブランドファッション雑貨(バッグ・財布など)を扱う「AXES」は12サイト、世界中のコスメ(スキンケア・ボディケアなど)を扱う「Cosme Land」は7サイトで展開している。いずれも楽天・Amazon等の大手モールと独自ドメインショップを有しており、楽天市場のショップ・オブ・ザ・イヤーをはじめ、受賞歴も多い。
同社BPO部 部長の櫻井利昌氏(以下、櫻井氏)は、楽天市場における売上拡大のポイントとして次の4つを挙げる。
①自社分析・競合分析
②検索結果1ページ目の掲載
③店舗損益の把握
④お客様満足度の向上
これら一つひとつについて、内容を見ていこう。
① 自社分析・競合分析
売上を見る際の公式「アクセス数✕転換率✕客単価」。この公式を基にした自社分析では、まず大きな数字から見ていき、真因をつかむことが重要だという。
「数字を把握する上で、まずは店舗全体のアクセス数、転換率、客単価を見ます。数字に変化があった項目に関しては、カテゴリーや商品と徐々に絞って確認することで、どこに変化があるのか具体的に捉えることが日々の業務のポイントです」(櫻井氏)
ただ、自社店舗のみにとらわれることなく、競合店舗や商品の数字や動向も確認しておく必要がある。櫻井氏によれば、競合店や商品がどのようなキーワードを設定しているか、どんなサムネイル画像を掲載しているか、イベント期間中はどのような施策を行っているかなどを見て差を埋めていくことが重要だと強調した。
② 検索結果1ページ目への掲載
楽天市場で購入されるユーザーのうち約80%が検索結果の1ページしか見ないとも言われており、効率的に売上を獲得するためには1ページ目への掲載が欠かせない。検索結果を上位表示させるためのポイントとして櫻井氏はこう語る。
「商品名に自社の訴求ポイントがきちんと表示されているかはもちろん、競合店舗のキーワードや商品名の表示を確認するなど、競合との差を埋める施策も必要です。また、商品属性についてもできるだけ抜け漏れのないよう入力することが大切です」(櫻井氏)
とはいえ、これらの施策は地道に行う必要があり、すぐ検索結果に反映されるとは限らない。上位表示されるまでの間は、RPP広告(楽天プロモーションプラットフォーム広告)を活用した施策も同時並行で行う必要があるようだ。
③ 店舗損益の把握
複数のEC店舗を運営している場合、店舗別に損益を把握して、どの店舗で利益が出ているのか、あるいは出ていないのかを具体的な数字をもって把握することが大切だ。その上で、限られた広告費をどの店舗に投下すればより効率的に売上が上がるのかを考え、判断していく。主力商品の売上構成比が高い場合や、戦略的に特定の商品に広告費を投下して販売を強めていきたい場合などは、単品損益も把握しておくとよいだろう。
④ お客様満足度の向上
AXESが実践している施策の中でも、特に効果が高いと考えられているのが「サンキューカードの同梱」と「レビューへの返信」である。
・サンキューカードの同梱
AXESは手書きのサンキューカードを商品に同梱。「手書きのメッセージカードに感激した」などレビューでも頻繁に言及されており、地道ながらお客様満足度の向上に寄与している。
・レビューへの返信
ユーザーレビューに返信することで、誠意を持って対応しようとする姿勢が伝わる。また、頻度は多くないものの、レビューへの返信を受けて、ユーザーがレビュー評価を上げるケースもある。
10年で売上7.3倍! 多店舗展開成功の秘訣
セッションの後半では、AXESの多店舗展開の秘訣が語られた。これまでAXESは、業務効率化を進めることで多店舗展開のデメリットを軽減しながら多店舗展開を進めてきた。AXESがスクロールグループに参画した2012年度は3店舗で売上が10億円。2022年度には23店舗で売上が73億円と、売上高は10年間で7倍以上に伸長している。一方、社員数は2012年度が15名、2022年度が54名と、売上の上昇率に比べ、社員の増加率は抑えられている。
AXESが社員数の増加を抑えながら多店舗展開を加速することができたのは、これから挙げる3つの業務効率化に取り組んできたからだ。
①OMSの活用
店舗数の増加と業務量の増加がイコールにならないよう、OMS(受注管理システム)を活用し、受注管理、在庫管理、商品情報を一元管理している。
②RPAの活用
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入し、単純作業や実績集計などのルーティーン業務を自動化。150以上の業務をロボット化しており、月1500時間(バックヤード業務担当者約10人分)の労働時間を削減できている。
➂BPOの活用
物流やカスタマーサービスなどのバックヤード業務をBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)化することで、AXES社員は売上拡大に直接関係するEC運用実務に集中できる環境を構築している。
こうしたAXESの事例からうかがえるのが、自社の社員が行うべき業務とアウトソーシング・自動化するべき業務の棲み分けを図り、そのぶん、社員が行う業務の質や精度を徹底的に向上させようとする姿勢だ。EC事業においては、「これさえやれば売上が上がる」という魔法のようなソリューションはない以上、地道な日々の業務に愚直に取り組み、解像度を上げていくことが欠かせないのではないだろうか。
2000年に(株)スクロールに入社、通信販売事業にて商品企画、商品仕入、WEB広告など様々な業務を担当。 その後、EC専業のグループ会社にて、インテリア、キッチン雑貨販売の事業責任者として、実務からマネジメント、事業損益管理を経験。 2022年にAXES社にて新規事業としてEC運営代行サービスの立ち上げに参画。2024年4月から現職。