楽天SOY2023 ギフト部門1位のソムリエ@ギフトがEC市場で認知され続けるための戦略・施策とは
約5万店ある楽天市場ショップの中でNO.1を決める「ショップ・オブ・ザ・イヤー2023」のギフト部門1位ほか、「総合賞 総合10位」「ギフト大賞」「百貨店・総合通販・ギフト ジャンル大賞」「あす楽大賞」「ショップ・オブ・ザ・マンス11月度百貨店・総合通販・ギフト ジャンル賞」など多くの受賞歴を持つ「ソムリエ@ギフト」。同サイトを運営するベルヴィ株式会社代表取締役の宮﨑義則氏に、同社のEC事業戦略や、今の時代に求められる「ギフト商品」について聞いた。
商品の安さをアピールするより、商品の価値を伝えることを重視
――「ソムリエ@ギフト」は実店舗からスタートし、ECは2005年の楽天市場への出店がスタートでした。実店舗を経て、EC運営で重視していたことはありますか?
2005年に楽天市場に出店するまでは、実店舗でギフト販売をしていました。当時、お客様からよく言われたのが、「贈り物は百貨店で買います」ということです。値段よりも、どこで買ったのかという価値を重視しており、その価値の一つが百貨店の包装紙。特に贈り主が専門職のお客様であるほど、百貨店の包装紙や商品に価値を見出している印象でした。
そういった背景もあり、「ソムリエ@ギフトでギフトを買った」と贈り主に胸を張って言えるようなお店づくりに取り組んでいます。サイト内で贈る目的をはっきりさせることや、ソムリエ@ギフトが大切な人へ本当に贈りたい商品だけを紹介していることがその例です。商品の安さをアピールして売るより、商品の価値を伝えることを重視しています。それは、商品販売店に対しても同様です。百貨店しか卸さないブランドにも、「ソムリエ@ギフトさんだったらいいですよ」と言っていただけるような売り場作りと売上を出すことに注力してきました。
――贈り主とブランド、両者に対して価値提供を重視し、売上を維持しつづけているとのことですが、その上で「ソムリエ@ギフト」がEC市場で認知され続けるための戦略・施策について教えてください。
EC市場で認知され続けるための戦略・施策については「母の日やお中元で検索したときに、確実にヒットする状態をまず作る」ことが非常に大事です。イベントごとに売上を確実に作るため、楽天市場のシーズナル広告を活用して結果を出していますが、その理由は写真やデザインにこだわってページ作りをしていること。自身でデザイン・カメラを勉強することで、クリエイティブの解像度を上げたことや他社との差を埋めるため、クリエイティブチームを筆頭に戦略を練りながら仕掛けをつくっています。その結果、他社と同じ広告費用を使っていてもコンバージョンレート(Webサイト訪問者のうち最終成果に至った件数の割合)も高く、ROAS(Return On Advertising Spend:広告の費用対効果)を出しやすいです。
モールを問わない共通のシステムで顧客満足度が向上
――楽天市場をはじめとする多くの受賞歴は、ソムリエ@ギフトが売上だけでなく顧客満足度も高めてきたのが大きな理由かと思います。どのようにそれを実現してきたのでしょうか?
ギフト配送は「熨斗(のし)を包装紙の上に付けたい」とか「下に付けたい」とか、「包装は必要だけど袋は不要」とか、細かい設定が必要な場合が多いです。ただモールによっては、備考欄の文字数が短く制限されているなど、様々な制約があります。そこで私たちは、配送条件をお客様がフルで設定できるシステムを導入して、どのモールでご購入いただいても一元管理し、一括で処理できるようにしました。その仕組みができたことによってだいぶ顧客満足度は高くなったと思っています。そういうことも、私たち側から提案してやったというよりは、お客様からのご要望やご意見をいただきながら、それに対応するためにはどうしたらいいのかということを常に考えながら改修を続けてきた結果という感じはしています。
――顧客満足度だけでなく、商品の取扱品質を保つため社員エンゲージメントを高める施策も行っていると伺いました。どのようなことを行っているのでしょうか。
テクニカルなやり方だけで売れているEコマースも多い中、社員の人間力を高めるプロジェクトを非常に重要視して、勉強会などを開催しています。その際に活用しているのが人間学を学ぶ月刊誌「致知(ちち)」です。日本で有名な経営者、スポーツ選手、学者の方々のインタビューが掲載されているのですが、成功へ至るまでの道のり、その過程で困難にぶつかった時の心構えや乗り越え方などを社員全員で読み、感想文を毎週発表しています。勉強会を通して、社員の人間力を高めることで、初めてお客様に高評価をいただき、我々スタッフも幸せになれるというマインドの共有を徹底しています。
伸び続けるギフトEC市場で、値段以上の価値と気持ちをいかに伝えるか
――ギフトで売上を伸ばしていきたいと思う事業者に向けて、伝えたいことはありますか?
個人的には、何かに特化した方が絶対いいと思っています。例えば出産の内祝いというシーンに特化したサイトがあったら、我々もかなわないと思いますし、お肉専門店のギフトは、お肉専門店だからこそできることがあるはずです。単品の力というのは、やはり強い。我々のような、幅広い商品を扱う総合サイトでは拾えないゾーンというのが、絶対にあると思います。私たちの廉価版みたいな方向に寄せれば寄せるほど、むしろ私たちの価値を上げることになるので脅威ではありませんが、私たちが一番怖いのは、全然違う世界観で来られることですね。
ちなみに2021年に立ち上げた新ブランド「code℃」は、「こういう路線で来られたら一番嫌だな」と思う、真逆の方向性を狙って、若いターゲット向けにポップな世界観を演出しています。だからどこが一番競合かと言われたら、2号店である「code℃」かもしれませんね。
――今後、ギフト市場や商品はどのように変化していくとお考えですか?
市場でいうと、私達がベースにしてきた返礼品の市場は縮小し、Eコマースにおけるギフト市場はまだまだ伸びていくと考えています。というのも、返礼品が減る反動で、誕生日や日々のちょっとしたお礼に贈るカジュアルギフトはまだまだ伸び続けると思っているからです。今後伸び続けるEコマースのギフト市場で、値段以上の価値と気持ちを伝えられるか、というところは私達が作っていきたいですね。そのためにも、今期はもう一歩踏み込んで、新たなギフト市場につながる商品展開をしていきたいです。