世帯数増加(個食化)で広がるニチレイフーズのD2Cの可能性 ニチレイフーズダイレクトの取り組み(後編)
国内冷凍食品メーカー売上高ランキング1位(※1)の株式会社ニチレイフーズ(本社:東京都中央区、代表取締役社長:竹永雅彦)。その中で、栄養コントロールされた冷凍弁当などを通信販売するニチレイフーズダイレクトのEコマース(EC)を活用したD2C戦略について、同社ウエルライフ事業部 eコマース部 eコマース営業グループ グループリーダー 渡辺千春氏にインタビュー。前後編でお届けする前編では、ECを開始した背景、EC運営のポイントについて伺ったが、この後編では競合他社との差別化や、物流面での取り組みについて紹介する。
※出所:(株)食品産業新聞社「冷食日報」2024年8月22日掲載記事(グループ合算)
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単に、カロリーや塩分を表示しているだけの商品とは違う
――スーパーや量販店でも多くの冷凍食品が販売されています。「ニチレイフーズダイレクト」で販売される商品はこうした商品とどう違うといえますか。
量販店などで売られている冷凍食品は家族でシェアできることを想定した一品料理が主流なのに対し、弊社の冷凍食品、特に「きくばりごぜん®」シリーズは、複数メニューを組み合わせたパーソナルユース仕様にしているが大きな違いかと思います。
──パーソナルユース仕様にしている理由はなんでしょうか。
塩分やカロリーを気にされる方は、日々の食事においても細かく気にされています。弊社はその不安やご負担を減らすために、しっかりと数値を担保することを非常に厳しく見ています。そのために一般的な食品製造における基準よりもさらに厳しい社内基準を設けて管理をしていますし、お一人お一人がご自身の求める数値に合うメニューを選べるようにしているんです。
それが弊社の諸先輩が築いてきたDNAであり、弊社が特に大事にしているところですね。単に、カロリーや塩分を表示しているだけの商品とは違うということは、声を大にして言いたいです。それがないと、本当の意味で息の長い顧客満足度アップにはつながりませんから。
──一般的なカロリーや塩分、あるいは糖質が表記されている商品と異なり、さらに細かい数値を呈示されているのですね。
業界の中では比較的高価格の商品ですが、食べたからといってすぐに数値が一気に下がるというわけではありませんし、食べた瞬間に「塩分が2.0g以下だ」と分かるわけでもありません。一方で、お客様の中には「ニチレイさんの『きくばりごぜん®』を食べ続けていたら、健康診断の数値が良くなってきました、ありがとうございます」とお手紙やお電話をくださる方もいらっしゃいます。数値をしっかり担保している商品であるということはなかなか伝わりづらい部分ではあるのですが、安心して召し上がっていただくために絶対に必要なことであり、お客様との信頼関係の根幹となるところですので、今後もしっかり管理していきたいと考えています。
――ダイレクトに届けられることで、分かったことはありますか
手作業が多いので必然的に、量販店などで売られている冷凍食品と比べると高価格になってはしまうのですが、それでもしっかりと数値がコントロールされ、かつおいしい商品であれば、お客様はリピートしてくださるのは、通販ならではのポイントだと感じています。量販店やスーパーでは商品そのものを手に取ることができる、すぐに購入できるといったメリットはありますが、商品について細かく説明することはできません。CMや各メディアでのPRも有効ではありますが、そのPRに目をとめた方へのワンメッセージにしかなりませんよね。
それが通販の場合、紙媒体でもWebメディアでも動画サイトでも、それぞれの利用層に向けて、伝え方を工夫することができますし、何より品質へのこだわりや価格の理由といった繊細な部分に関しても、お伝えすることが可能です。ダイレクト通販によって、改めて実感するようになりました。
2024年問題対策として、1回で大量の荷物を運べる車両に切り替え
――ダイレクト通販が増えるということは、どうしても「配送」が関係してくるかと思います。現在、多くの通販・EC事業者が、物流と在庫管理について課題を抱えていると言われますが、御社ではどのような課題があり、どのように解消してきていらっしゃるのかお聞きしたいです。
弊社の場合、物流関連のほとんどをニチレイグループの物流系事業を統括する株式会社ニチレイロジグループに業務委託しています。また弊社内にも物流部門があり、生産から倉庫までのコントロールを担当しているスタッフがいます。これは“冷凍食品屋”ならではの強みですし、グループシナジーのメリットと考えています。
ただ「物流の2024年問題」についていえば、ニチレイグループ全体で取り組むことですし、物流部門でも非常に大きな問題として捉えており、すでに様々な見直しが行われているんです。詳細はお伝えできないのですが、工場から出荷倉庫までの物流のルートや、使用するトラックの規模感などは、既に見直して対応しています。
1人のドライバーが長時間働けない状況になることから起こる部分が大きい2024年問題対策としては、ドライバーのスイッチングができる車両を使い、マザー倉庫からの配送回数を減らす代わりに、1回で大量の荷物を運ぶことで効率化ができるよう、車両のタイプを変えるところまで手を入れています。販売側でできる工夫としては、セット食数を増やすことで1出荷あたりの食数を増やし、物流費を抑制するなどを行っています。
――最後に、今後のEC事業において必要だと考えていることを教えてください。
直接お客様と触れ合えるメリットを最大に生かして、商品の良さをもっとしっかりと伝えていかなければならないと考えています。弊社はていねいな物作りを信条とする職人気質な社風のためこれまでPRがあまり得意ではありませんでした。法令を遵守しながらもしっかりと商品の良さが伝わる手法のレベルアップが課題ですね。また事業の安定性のためには、リピート率をいかに向上させていくかが大事ですので、そのために何ができるかということを今、メンバーといろいろ議論しているところです。