ナルミヤ・インターナショナルが取り組む、ギフト商戦きっかけでの顧客関係構築とは【株式会社ナルミヤ・インターナショナル セミナーレポート】

ECのミカタ編集部

株式会社ナルミヤ・インターナショナル EC事業本部 次長 加藤翔太氏

2024年から、EC業界にとって“今、大切なテーマ”を掲げて行っている「ECのミカタ カンファレンス」。第6回として8月に開催された「ギフト商戦カンファレンス」では、ECにおけるギフト商戦に精通した6社が、ギフトシーズンを勝ち抜くための対策とノウハウを、それぞれの切り口で実践的に解説した。今回は同カンファレンスから、子ども服特化型ECのギフト戦略を主題に行われた、株式会社ナルミヤ・インターナショナル(以下、ナルミヤ)のEC事業本部 次長 加藤翔太氏と、ECのミカタ(MIKATA株式会社) 事業本部の吉見紳太朗とのパネルディスカッションの模様をお届けする。

世代を超えて愛される企業を目指す

MIKATA株式会社 事業本部 吉見紳太朗(以下、ECのミカタ 吉見) ナルミヤ様のギフト商戦への取り組みについて伺う前に、まず、貴社が目指されているところを改めてお聞かせください。

株式会社ナルミヤ・インターナショナル EC事業本部 次長 加藤翔太氏(以下、ナルミヤ 加藤) 当社は、「世代を超えて愛される企業へ」というビジョンを掲げております。子ども服専業ですので、子どもの時に当社の洋服を着ていただいて、大人になったときに、ご自身のお子様へ着ていただきたい。おじいちゃん・おばあちゃんを含めて、世代を超えて当社の商品を買っていただきたいと考えています。
また、ここ1年ほどで、「ANGEL BLUE(エンジェルブルー)」や「DAISY LOVERS(デイジーラヴァーズ)」といった、2000年代に大流行した当社のファッションブランドのリバイバルブームが起きています。当時着てくださっていた方々が30代・大人になってまた当社商品を着ていただき再度接点を作れており、そういった意味でも、“大人になってからも愛される企業”というところを目指しております。

株式会社ナルミヤ・インターナショナルのビジョンは「世代を超えて愛される企業へ」

このビジョンともう一つ、「創造的な事業活動を通して『一瞬を』『ライフスタイルを』『未来を』創る」ということもミッションとして掲げていて、単に洋服を売るということではなく、お子様が生まれた後の「コト」にもフォーカスしています。例えば入学・入園などの“ハレの日”のための商品や、夏であれば水着とか浴衣といったオケージョン商品も展開していますので、家族のライフスタイルに合った商品を展開し、家族みんなの笑顔があふれるような商品を作っていきたいと考えています。

当社は生まれたての0歳から中学生くらいまで、子ども服と言われる全ての年齢向けに展開し、全国のショッピングセンター、百貨店、アウトレットで販売しています。ECに関しても自社EC、楽天、Amazon、ZOZOTOWNといったような他社プラットフォームでも展開しています。また卸事業として全国の小売店にも商品を展開していますので、“どこかには必ずある”というようなマルチチャネル戦略を掲げています。ブランドも20以上と数多く展開しておりますので、各チャンネルに合ったブランドでお客様との接点を持っているのも当社の強みです。

多くのブランドが集う自社サイト「NARUMIYA ONLINE」

子ども服はシーズンにかかわらず“常にギフトニーズが存在”する

ECのミカタ 吉見 ここからは、幅広いチャネルで展開されているナルミヤ様がどのように「ギフト」に取り組まれてきたのかを深堀りしてお聞きしたいと思います。そもそも、ギフトを意識されてECに取り組まれたのはいつ頃からなのでしょうか。

ナルミヤ 加藤 2008年にECサイトを立ち上げた当初から、「(ギフト用のラッピングなど)実店舗と同じレベルのサービスをECでも提供したい」という考えでした。子ども服の場合、お子様のお誕生日やご友人の出産祝いなど、シーズンに関係なく毎月、何かしらのギフトニーズがあるということを感じていました。また、クリスマスや新学期、お盆や年末年始などのご帰省時など、お子様のライフシーンに応じたギフトニーズがあるということも、わかっていました。お客様からのお問い合わせで特に多かったのが、クリスマスの時期に「12月23日までに届きますか?」といったことでしたので、サイト上に「●日までにご購入いただければ12月23日までにお届けします」ということは明記するように心がけていました。

ギフトニーズで最も重視しているのは、新規顧客開拓のチャンスである「出産祝い」

ECのミカタ 吉見 ナルミヤ様ではギフト商材を通して、どのようにお客様との関係を築かれてきたのでしょうか。

ナルミヤ 加藤 先ほど申し上げたように、さまざまなギフトニーズがある中で、当社として一番重要視しているのは出産祝いです。なぜなら出産祝いは、「元々当社の商品を気に入って購入されている方が、当社の商品を知らない方にプレゼントする」ケースがあると考えており、特別な広告費をかけずに、当社商品を初めて知っていただく大切な接点だからです。プレゼントされた方がデザインや機能にご満足いただければ、その方のお子様が成長されたときにまた当社の商品を使っていただけるきっかけにもなります。新生児向けの商品は、売り上げの構成比という点では多くないのですが、そこから接点を持つということがLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)」にもつながりますので、会社全体として横断的に新生児向け商材やプロモーションを強化する取り組みを行っております。

最近は共働き世代も増えていますし、お子様自身も習いごとなどが多く、家族みんなで店舗へ行ってプレゼントを選ぶのも時間的になかなか難しい部分があります。ですので、オンラインサイトではEC限定のラッピングバッグやメッセージカードを用意し、ギフトのラッピンググサービスも店舗と同じように行っています。またサイトの作りとしても、どういった形で相手に届くのか、お渡しするイメージが伝わるようにランニングページ上で視覚的にもしっかり訴求しております。

NARUMIYA ONLINEのギフトラッピングサービスページ

ECで購入するギフト商材でも、8割は手渡ししている

ECのミカタ 吉見 商材やラッピングに関して特に注意されている点やポイントは?

ナルミヤ 加藤 例えば、実店舗ではブランドによってラッピングのリボンのかけ方を変えているのですが、ECではこれをブランドごとにマニュアル化して委託している物流会社様と共有することで、外部の方でもしっかりと対応できるようにしています。そのうえでラッピングに関しては、やはり専門的な技術も必要ですので、物流会社様でもある程度固定のメンバーでご対応いただいています。

またギフトラッピングの注文データを見ると、8割ほどのお客様がご自宅への配送をご希望されていて、ECでギフトとして購入した場合でも「手渡ししたい」というニーズはあると考えています。そういったお客様に関しては、ブランドのショッパーを同梱するなど、“手渡しできる”体制を整えています。

ECのミカタ 吉見 オンラインだからこそ、“送って終わり”ではなく購入した方が相手に渡すシーンまで想定してECの仕組みをつくられているということですね。最後に、ギフトを含めた今後のEC事業の展開を教えてください。

ナルミヤ 加藤 ギフトを贈る方と受け取る方、それぞれが満足できるブランド・商品でなければギフトニーズの“土俵”に立つことはできないと考えています。そうした中で、出産祝いは顧客とのファーストアプローチと捉えていますので、新生児アイテムを中心にお贈りやすい価格帯の設定ですとか、商品選びに迷わずお渡しやすいギフトセットといった商品作りを今、改めて強化しています。当社ではお子様の成長に合わせて幅広いサイズレンジを揃えており、ブランドの数も多いので、パーソナライズ施策を進めつつブランドスイッチも図れるよう、会社全体としてLTVが最大化できるような取り組みを考えています。

日本の少子化に歯止めがかかっていないのは事実としてありますが、一方で子ども服業界の市場規模は横ばいが続いています。これは1人にかけるお金が少しずつ増えているとも言え、まだまだお子様・子ども関係の需要は伸びる可能性があると感じています。

加藤 翔太(かとう しょうた)
株式会社ナルミヤ・インターナショナル EC事業本部 次長  新卒で入社後、営業職を経験し、2008年に会社のイーコマース事業の設立に伴って社内公募へ応募。立ち上げメンバーとして選ばれ、ゼロベースからEC事業の立案・運用をスタートして、15年以上一貫してEC事業の拡大に向けて従事。自社ECの立ち上げ、他社モール展開、他社サイトへの出店などさまざまな販路拡大を行い、2023年度のEC売上は80億を超え、会社の主要チャネルへ成長。今後は国内だけではなく、海外を見据えて越境ECにも本格的にチャレンジ中。


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