EC業界に学生の力を! 東京服飾専門学校の学生がaccaのロゴをデザイン、採用へ

三浦真弓【MIKATA編集部】

今年7月の記事(※)で紹介した、ECのフルフィルメント業を担う株式会社アッカ・インターナショナル Sales Division Warehouse Robot Implement Evangelist(セールスディビジョン 倉庫ロボット導入エバンジェリスト)の林千博氏が、学校法人池田学園 東京服飾専門学校(東京・豊島区)で講義を行うという産学連携の取り組み。その際、林氏が手掛ける事業のロゴデザインのコンペを行ったことは既報の通りだが、実際にどのような作品が選ばれたのだろうか。表彰式を取材した。

※前回7月の記事はこちら

企業で使用される公式なロゴデザインを学生に任せるって本当!?

2024年7月某日、東京服飾専門学校の教壇に、アッカ・インターナショナル(以下、acca)の林氏の姿があった。前回の記事「Z世代がEC業界を担う人財に アッカ・インターナショナル×東京服飾専門学校の産学連携授業レポート」でお伝えした通り、accaの林氏は今年、東京服飾専門学校ファッションビジネス科2年目の学生たちに向けて、EC業界でフルフィルメント業を行う企業の立場から、授業を行う機会を得ている 。

林氏自身、ファッション業界を経て現在の仕事に就いていることもあり、ファッションを学ぶ学生たちがEコマース関連企業で果たせる役割が大きいことを熟知している。その立場から、これから社会で活躍する学生たちが、何を学べば今後に生かせるのか、あるいはどのようなメッセージを伝えるべきか、試行錯誤し、ベストを尽くそうとする姿が、とても強く印象に残っている。

この産学連携プロジェクトのハイライトとも言える、そして学生たちにとって大きな意義のある取り組みが、林氏が手掛けるコンサルティングビジネス「CROS」のロゴデザインのコンペだった。「企業が使用するロゴデザインのコンペに参加」でき、「コンペの作法」を授業で模擬的に体験することができる。

前回の取材時(5月)に、学生たち一人ひとりがプレゼンテーションを行い、ロゴに込めた思いを発表していた。当日は、実際にどのロゴが選ばれるかについては、発表されなかった。

その後、林氏はもちろんのこと、代表取締役社長をはじめ、数々のaccaメンバー が真摯に話し合い、「CROS」のロゴデザイン最優秀賞1作品、優秀賞2作品、が決定した。──と聞いたのは7月に入ってからのこと。そして夏休み前のとある平日に 、表彰式が行われることになった。

授業ではスーツ姿だった林氏も、「CROS」事業にふさわしく、この表彰式では「Tシャツ」姿で臨んでいたのも印象的だった。

なぜ、accaは学生にロゴデザインを委ねたのか ──「人財育成」「ミライ創出」の姿勢

応募数:46個(37名)から「最優秀賞」に選ばれたのは、ファッションビジネス科の中川祥さんがデザインしたロゴだ。中川さんが授業でプレゼンテーションした際には、「CROS」の事業内容を聞き、「シンプルかつわかりやすいデザイン/クロスの意味も込めた直線」を意識してロゴを考えたことも伝えていた。

アッカ・インターナショナルの社名に使用されている日本を表す赤色とロボットをイメージさせる黒色を交差(クロス)させることで、「混ざりあうこと」で生み出される力を表現。南十字星のように、「この業界の道標となるコンサルティングをしていきたい」と願いを込めたロゴとなっている

中川さんに、表彰式の後、選ばれた率直な感想を聞いた。
「本当に、驚きました」と答えつつ、「もちろん真剣に取り組みましたし、プレゼンでもその点をお伝えしたかったので、それが伝わったのかなとすごくうれしく感じています」と、コンペそのもので得た手ごたえを教えてくれた。また、「今まで大きな実績を残せてきていなかったと感じていましたが、今回、選ばれたことがとても大きな自信につながりました」とも。

コンペに参加したことで得られた経験は、今後、中川さんが活躍するさまざまなシーンで、支えになるのではないだろうか。

最優秀賞作品が投影されて驚く中川さん

また、優秀賞は2作品のうち、1つはファッションビジネス科の吉田朱里さん、もう1つはアパレル造形科の浦田早弥香さんがデザインしたものだった。

最優秀賞、優秀賞ともに、賞状の他に記念品も贈呈された

ロゴはすでに、林氏が手掛ける各企業への提案書に掲載されているというから驚きだ。通常ロゴデザインは、こだわりが強く反映されることもあり、プロフェッショナルに費用をかけて依頼することが多い。 しかし林氏はあえて、授業の一環で学生たちにデザインを依頼し、なおかつ「単なる記念デザインコンペ」に終わらせることなく、実際に企業の資料として使用するに至っている。

「実際はプロが手を入れているのでは?」と思うかもしれないが、このロゴデザインは、修正も加筆もされていないという。これは、accaの代表取締役社長、秀洋一氏があえて、そのままで使用することを指示したのだという。

なぜ、accaは学生にロゴデザインを委ねられたのか──。accaの狙いは、直接的にも間接的にも「人財育成」にあるといえる。「記念コンペ」ではなく、これから長く、世の中に浸透させていく大事なロゴを、若い世代に任せることは、accaという企業の「ミライ」を創出していく姿勢を示している。

日本のEコマース業界は、まだ拡大傾向にあるとはいえ、レッドオーシャン化してもいるのも事実だ。だからこそ発展のためには、新しい風を吹かせる必要があるといえる。accaが今回取り組んだ「ミライ」を担う学生たちとのコラボレーションは、今後、さまざまな企業にとって、大きなヒントになるのではないだろうか。