新たな成長ドライバーは“3G+Gift” コーセー「コスメデコルテ」のギフト戦略【コーセープロビジョン株式会社 セミナーレポート】

ECのミカタ編集部

コーセープロビジョン株式会社 代表取締役社長 命尾泰造氏

ECのミカタが「ギフトシーズンを勝ち抜くためのギフト対策」をテーマに開催した、EC業界特化・課題解決型のオンラインカンファレンス。今回は2024年8月29日に行われた同カンファレンスのレポートの締めくくりとして、大手化粧品メーカー、株式会社コーセーを代表するブランド「コスメデコルテ」が推進するギフト戦略を紹介したコーセープロビジョン株式会社 代表取締役 命尾泰造氏によるセッションをお届けする。

国内化粧品市場を再活性化する成長ドライバーは“3G+Gift(ギフト)”

命尾氏はまず、日本の人口減少により国内の化粧品市場は非常に厳しい状況にあると指摘した。「2010年からわずか10年で生産年齢人口(15歳から64歳)は約700万人減少しています。生産年齢人口は社会に出て働くためにお化粧をされる層ですので、この層の人口減少が加速しているということは、将来的に化粧品市場が大幅にシュリンクする可能性が高いということになります。そうした中で化粧品市場が再拡大する伸びしろはインバウンド需要の獲得、海外からのお客さまにあるということが化粧品業界全体で常識のようになっています」(命尾氏)。

こうした状況から、株式会社コーセー(以下「コーセー」)は中長期ビジョン「VISION2026」の中でグローバル(Global)、ジェンダー(Gender)、ジェネレーション(Generation)のそれぞれの頭文字をとった“3G”を、新たな事業の拡大領域のキーワードとして掲げ、性別や年齢に捉われず、より幅広い人々をお客さまと捉え、寄り添いながら顧客の創造に取り組んでいる。命尾氏は、コーセープロビジョンにおいてこの“3G”に“Gift(ギフト)”を加えた4つのGが、国内の化粧品市場を再活性化する新たな成長ドライバーだと語る。

思い立った瞬間、ノーストレスで買える仕組み。ポイントは“広く・薄く”

「『コスメデコルテ』の公式ECサイト(公式オンラインブティック)のローンチは2021年9月と遅かったものの、『コスメデコルテ』というブランドそのものは1970年にデビューし、今年で54年目を迎える歴史あるブランドです。ひとつ12万円のクリームといった商品もあり、取り扱いのメインは百貨店や化粧品専門店がメインでした」(命尾氏)。

百貨店がメインの販売チャネルであるのは、高単価の商品が中心のため。化粧品に関する感度の高い層が、自宅から距離のある店頭に赴き、美容部員による丁寧なカウンセリングを受けて購入するスタイルが基本だ。しかし近年、百貨店が全国的に減少傾向にあり、同ブランドが入手しにくい“空白地帯”が出現するようになった。そこで顧客の利便性を慮り、合わせて人口減少の中で顧客とのタッチポイントを作ることを目的として、ECを立ち上げたという。「ECのビジネスにおいては、広く・薄くお客さまを獲得することが、重要なポイントになると考えています。例えばレコメンド機能やWEB接客、ペイメントの幅を広げるといった、『思い立ったその瞬間に、ノーストレスで買える仕組み』を構築し、広く・薄くお客さまを獲得することに注力しています」(命尾氏)。

●参考「コスメデコルテ」公式オンラインブティック

実店舗でのカウンセリング、ラッピングと同じクオリティーをECでも提供

前述のように「コスメデコルテ」が百貨店や化粧品専門店を主戦場としてきたのは、美容部員との対話や肌測定に基づいた店頭でのカウンセリング販売を重視してきたからである。命尾氏は「カウンセリングとは、お客さまが言語化できていない潜在的な欲求を言語化する技術」とも話す。しかしEC領域では、基本的に言語化できないと購買が成立しない。そこで、「コスメデコルテ」ではECを立ち上げると同時に、ビューティコンサルタントがオンラインでカウンセリングを行う「コスメデコルテ パーソナルビューティコンシェルジュ(DECORTÉ Personal Beauty Concierge)」サービスを開始した。このサービスには、オンライン上で受けられる事前予約制のビデオカウンセリングや、テキストベースで対応してくれるチャットカウンセリングなどがあり、顧客からの評価は非常に高いという。

また、カウセリング同様に「コスメデコルテ」がこだわっているのが配送用のギフトボックス。同社では商品を受け取る人との最初の接点となる配送箱にハイプレステージブランドとしてふさわしい設(しつら)えを与え、店頭と同様の“出会いの場”を演出している。

●参考「コスメデコルテ」公式オンラインブティック「ギフトセレクション」ページ

「選ぶ」「送る」「受け取る」それぞれに適切な機能開発

命尾氏は、「誰かに自分が使っている化粧品を贈るという行為は、ロイヤルユーザーのブランドエンゲージメントを高める最強の推奨行動です。またギフトは贈り手のセンスが問われるので、ノンユーザーに対してはギフトとして定番化することが重要」と語る。そのために、「コスメデコルテ」では「選ぶ」「贈る」「受け取る」というカスタマージャーにそれぞれに対して、適切な機能開発をしていると明かした。

◎選ぶ
求めるクオリティーのギフトが素早く選べるレコメンド機能に加え、オンラインブティックで何が売れているかが一目でわかるランキングなどを用意。「ギフトファインダー」機能を使えば3つの質問に答えるだけでギフト選びをサポートしてくれる。さらにカウンセリングサービスを利用すれば、美容のプロがギフトを提案してくれる。また「ギフトシミュレーター」という商品・ボックス・リボンを選んでギフトのイメージを確認できるサービスもある。ラッピングサービスを利用する場合はショッパーやメッセージカードを付けることもでき、対象の一部の商品には有料で名前などを刻印することも可能だ。

●参考「コスメデコルテ」公式オンラインブティック「ギフトファインダー」ページ

◎贈る/受け取る
「贈る」「受け取る」ステップで命尾氏が挙げたのがソーシャルギフトだ。「従来、化粧品の中でもメイク商品は贈るのが難しいと言われてきました。そのため無難なハンドクリームなどが選ばれることが多かったのですが、『コスメデコルテ』でソーシャルギフトを利用すれば口紅やアイシャドウでも、贈られたお客さまが自分の欲しい色を選ぶことができる。受け取る場所と時間が選べるのも魅力だと思います」(命尾氏)。さらに贈られた人が効果的な使用法などに関してオンラインでカウンセリング(レッスン)を受けられるサービスも実施している。

化粧品市場の将来を見据えた“3G+Gift”という明確なビジョンと、「選ぶ」「贈る」「受け取る」それぞれのカスタマージャーニーに丁寧に寄り添う機能。国内屈指のハイプレステージブランドである「コスメデコルテ」ならではのこだわりが凝縮されたECギフト戦略と言えるだろう。

命尾 泰造(めいお たいぞう)
コーセープロビジョン株式会社 代表取締役 1994年 中央大学経済学部卒業、2014年 法政大学大学院 経営学部 マーケティングコース修了。2019年 「コスメデコルテ」の直営ECとオンラインカウンセリング“DECORTÉ Personal Beauty Concierge”を同時立ち上げ、また「コスメデコルテ」の事業戦略“DECORTÉ Grand Design 2026”を立案。2023年1月よりコーセーグループ全体のBtoC領域(直営EC及び、直営店舗の運営)を管掌する現職に就任。2024年8月30日には、Maison KOSÉハラカド(東急プラザ原宿「ハラカド」内)をオープンした。


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