EC事業者の生成AI導入は3割 GMOペパボが提示するAI活用方法とは【GMOペパボ セミナーレポート】
「EC事業にAIを活用してみたいが、何から導入すればいいか分からない」と悩むEC事業者もいるのではないだろうか。9月12日、ECのミカタが開催した「AIとデータで進化するECビジネスカンファレンス~実例で探る新たな可能性~」では、GMOペパボ株式会社 EC事業部 マネージャーの太田優氏よりECサイト構築サービス「カラーミーショップ」の実例を元にEC事業者のAI活用事例を解説。また同社 AXチームの小林尚貴氏からは、会話型のAIチャットボットツール「GMO即レスAI」のリリース背景や効果について紹介された。
EC事業への生成AI浸透状況
株式会社エルテックスが調査した「通信販売事業関与者の実態調査2023」によれば、「AIをサービスに導入済み」もしくは「AI導入が決定している」と回答した事業者は全体の約3割(※1)。一方で「AIには関心がない・導入予定もない」「あてはまるものはない」の合計は、全体の9%にとどまっており、AI活用が具体的になっている様子がうかがえる。
また利用したいAIに関しては、「サイト内検索(54.2%)」「チャットボットや接客ツール(52.7%)」「マーケティング分析(48%)」が上位を占めた。AIへの関心が高まっているとはいえ、3割という数字から見て取れる通り、通販業界内でのAIの浸透はこれからだといえる。
※画像提供:GMOペパボ株式会社(カンファレンス登壇資料より)
※1 出典元:「通信販売事業関与者の実態調査2023」から読み解く通販/EC事業者のトレンド
EC事業者のAI活用事例
GMOペパボ株式会社 EC事業部 マネージャーの太田優氏(以下、太田氏)は、EC運営におけるAI活用事例として、“岩手の小さな陶器店”を掲げる「梅陶器(umeto-ki)」と、 “畑からはじまる”商品づくりをコンセプトにした「自然派きくち村」の事例をそれぞれ紹介した。
■梅陶器(umeto-ki)
「梅陶器」は、岩手県にある梅森陶器店の公式オンラインショップ。日用食器や業務用食器など、500点以上の商品を扱っている。AIの活用場面としては文章生成や整理がメインだが、AIをあえて使用しないこともあるという。
「店主へ話を聞いたところ、新商品の説明文に関する文章生成や整理にAI(ChatGPT)を利用しているそうです。しかしSNSの投稿では“梅陶器らしさ”を大切にした文章で伝えるため、AIは使用していないといいます」(太田氏)
文章生成や整理にAIは便利な一方で、場面によっては、伝えたいニュアンスと少し異なった表現になってしまうこともあるだろう。そのため、状況に応じてAIを導入していく必要があると太田氏は語った。
■自然派きくち村
自然派きくち村は、自然栽培、農薬・肥料不使用の米や野菜などを販売するネットショップ。生産者インタビューの構成案作成、レシピのアイディア出しにAI(ChatGPT、Gemini)を活用しているという。AIを活用することで社内の作業時間短縮はもちろん、調理法の提案においても、お客様のレシピ考案のひとアイディアにつながるような、レシピコンテンツの単語選びを充実させているそうだ。
問い合わせにAIを導入し、月間548時間の削減に
先述した調査で、通販事業者が利用したいAIの2番目にあがっていた「チャットボットや検索ツール」。GMOペパボが2024年3月にリリースした「GMO即レスAI」は、AIによる素早い対応と、自社で培った顧客対応ノウハウを組み合わせた会話型のAIチャットボットツールだ。
同社 AXチームの小林尚貴氏(以下、小林氏)によれば、リリース背景として顧客ニーズへの対応と労働人口減少による生産性向上に寄与したい思いがあるという。
「顧客行動は『自分でググって探す』から『AIに聞く』時代へと変わりつつあります。従来は普通だった検索環境が、今後はユーザーにとって使いづらい検索体験になるでしょう。また、2030年には労働人口が644万人不足(※2)すると言われています。検索環境の変化とあわせて、AIの活用などを通した生産性の向上にも本サービスで対応していきたいと思っています」(小林氏)。
「GMO即レスAI」(以下、本サービス)は、過去のデータやログを元に自己学習したAIが利用者の質問に回答する。AIチャットが膨大なデータから適した回答を探して回答文を生成するため、従来型のシナリオ型チャットボットよりも柔軟で人間らしい回答が可能になるという。
実際に本サービスを「カラーミーショップ」の問い合わせ窓口に導入した結果、70%の問い合わせをAIが一次受けすることで有人対応を50%削減し、月間548時間の削減を達成したとしている。
今回のカンファレンスでは、本サービスを使ったEC向け活用事例について紹介され、AIに詳しい人材がいなくても事業で活用できるようなサポート体制も示した。
人材不足と生成AIの普及は、嘆いても止められない大きな流れだ。ノーコードでディープラーニングの片鱗を事業に活かせる時代だからこそ、EC事業者は新たな技術をあらゆる形で自社サービスに取り込んで競争力を強化してほしい。
※2 出典元:労働市場の未来推計 2030(パーソル総合研究所・中央大学)
北海道出身。岩手大学農学部を卒業後、世界一周の旅を通じて各国の文化を学ぶ。帰国後は個人でECサイトを立ち上げたのち事業売却。地方企業のマーケティングにも携わり、ECサイトの立ち上げから月商5000万円規模への事業成長を支援した。その後、NPO法人での活動を経て株式会社わかさ生活に入社し、マーケティングの戦略立案から実行までを幅広く経験。現在はECサイト構築サービス「カラーミーショップ」のマネージャーおよびマーケティング責任者として活動中。
小林 尚貴(こばやしなおき)事業開発部AXチーム
GMOペパボ事業開発部AXチーム(福岡オフィス)に在籍。前職では約10年にわたりCS部門に従事。カラーミーショップのCS担当として2022年にGMOペパボ株式会社へ入社し、福岡・鹿児島オフィスのチーム管理・KPI管理のほか、カラーミーショップ、カラーミーリピートの「AIチャット」の導入を担当。2024年3月、GMO即レスAIの立ち上げと同時に異動し、現在は事業開発部AXチームに在籍。CS部門での経験を生かし、お問い合わせ対応の自動化を検討する企業への提案や、AIチャットの会話設計などを担当している。