EC運営の社内業務にこそAIは効果的? レビュー作成やユーザーテストにも【ナビプラス セミナーレポート】

ECのミカタ編集部 [PR]

ナビプラス株式会社 取締役執行役員 CTO 梅染充男氏

9月12日、ECのミカタは「AIとデータで進化するECビジネスカンファレンス~実例で探る新たな可能性~」を開催。生成AIを含む広範な技術で、EC事業の顧客の買い物体験と業務効率を改善する「NaviPlus」シリーズなどを提供するナビプラス株式会社のCTO 梅染充男氏に、誰でも使えるAI時代だからこその注意点やECにおける生成AI活用法を、さまざまな事例を交えて紹介いただいた。

誰でもAIを使える「第4次AIブーム」に

AIの歴史は古く、1950年台にはコンピュータを用いた推論と探索が始まった。第1次AIブームは「推論・探索の時代」と呼ばれる。医療領域などの専門知識をAIが学習した「知識の時代」、データの取扱量が増えてディープラーニングなどが発展した「機械学習の時代」を経て、現在は生成AIが登場したことで「第4次AIブーム」を迎えている。

第4次AIブームにおいて、これまでと違う点は専門知識やプログラミング言語などを理解していない一般人でもAIが使えるようになったことだ。ナビプラス株式会社 取締役執行役員 CTO 梅染充男氏(以下、梅染氏)によれば、誰でもAIが使えるようになったからこそ、注意しておきたい事項があるという。

「生成AIで特に顕在化したリスクとして、機密情報の流失やハルシネーション(誤情報を生成すること)、著作権の問題があげられています。またビジネスにおいては、AIに要求してから結果を返すまでの遅延時間『レイテンシー』上昇におけるコスト増加も注意したい点です」(梅染氏)

※画像元:ナビプラス株式会社(カンファレンス資料より)

各国の企業を対象にした業務における生成AIの活用状況によれば、「メールや議事録、資料作成等の補助」に生成AIを使用していると回答した割合は、日本で46.8%(“業務で使用中”と回答した割合)。米国の84.7%、ドイツの72.7%に比べるとまだまだ低い(※1)。リスクを鑑みながら、慎重な導入が進められているといえそうだ。

※1 出典元:総務省「令和6年版 情報通信白書」

ECにおける生成AI活用事例

生成AIの活用場面として、EC事業自体というよりは社内業務の工数削減に効果があると梅染氏。チャットボットやユーザーテスト、文章作成支援の実例を元に解説された。

※画像元:ナビプラス株式会社(カンファレンス資料より)

■チャットボットによる問い合わせ自動対応(Salesforce)
2024年8月22日、米国Salesforce(以下Salesforce)は、営業チームを強化する完全自律型AIセールスエージェント「Einstein Sales Development Rep (SDR) Agent」および「Einstein Sales Coach Agent」を発表。Einstein SDR Agentは、見込み客からの問い合わせやアクションに対して、自律的に対応しパーソナライズされた対応を行うというもの。例えば、1万ドル(約150万円=2024年11月5日時点)未満のリードはAIセールスエージェントが対応し、より価値の高い見込み顧客は営業担当者が担当するなど企業の状況に応じて設定や選択が可能だとしている(※2)。

■ユーザーテストの要約・提案(ナビプラス株式会社)
ブランディングや売上増加に向けて、Webサイト担当者が活用するツールとしてユーザーテストは必須だが、「手間・コスト・時間」の点で実施に対するハードルが高いとナビプラスは分析。そこで、2023年にローンチしたユーザーテストサービスが「ソクラテスト」。質問項目の設計が不要で、被験者(ユーザー)の募集から結果集計までが自動化されており、Webサイトのユーザーテストを全てオンラインで完結できるという。

「創業以来続けてきたECサイトの支援やマーケティングツール提供のノウハウをはじめ、レコメンドやサイト改善サービスを開発・運営しているからこそ、質問項目の設計からユーザーテストの実施や改善アクションまで一貫してスピーディーに行えます」(梅染氏)

※画像元:サイトの課題と改善点をAIが提案 常識を覆した新しいユーザーテストとは(株式会社デジタルガレージ)

テストしたいWebサイトと、ベンチマークしているWebサイトのURLなどの情報をフォームで申請すれば、「ソクラテスト」が被験者(ユーザー)の募集からユーザーテストの実施、結果集計までを全自動で行う。
また、被験者からのコメントをAIに読み込ませて的確にポイントをピックアップし改善のアクションにつなげる「AIによるサイトの改善提案機能」を追加。画像や口コミ、目次リンクの追加など具体的な改善点をあげることが可能だとした(※3)。

■商品説明文の生成支援(Amazon)
生成AIは、セラーの工数削減にも大きな効果を期待して各社機能開発を行っているという。Amazonの例では、出品者が商品に関して数語または数文で商品について簡単に説明するだけで、レビュー用のコンテンツをAIが自動生成する。コンテンツを用いてサイトに掲載したり、改良を加えたりと出品者の負担を軽減させるという(※4)。


※2 出典元:Salesforce、新たな自律型AIセールスエージェント「Einstein SDR」と「Einstein Sales Coach」を発表(米国Salesforce)
※3 出典元:サイトの課題と改善点をAIが提案 常識を覆した新しいユーザーテストとは(株式会社デジタルガレージ)
※4 出典元:New AI capabilities make it easier for sellers to write engaging, effective product listings, and help shoppers find what they are looking for.(Amazon)

レビュー文章作成もAIで、作成時間を60%削減

文章生成機能に関連して、ナビプラスが提供しているのはECサイトでレビュー(クチコミ)の投稿・表示機能を簡単に導入できる「Navi Plusレビュー」だ。価格の満足度や着心地、使用感などいくつかの質問に答えるだけで、AIがコメントのサンプルを生成してくれるという。

「レビューを投稿しない理由として、自社の調査によれば『面倒だから』(88.9%)、『書くことがないから』(44.4%)が多くあげられていました(※5)。本機能の搭載により平均レビュー投稿時間が60%削減でき、レビュー投稿の促進につなげています」(梅染氏)

※画像提供:ナビプラス株式会社(カンファレンス資料より)

本サービスは他にも、毎日のレビュー投稿数や平均評価、商品ごとのレビュー数ランキングなどを週次/月次のレポートメールでお知らせする機能や、レビュー投稿のKPIとなる投稿数・評価の分布・平均評価・アクセス数などを一目で確認できるダッシュボード機能なども搭載。またレビュールール設定やNGワード登録もでき、サイト上へ不適切なレビューを入れないような工夫もされているとした。

※5 出典元:「NaviPlusレビュー」に「レビュー投稿AIサポート機能」を搭載

次のトレンドは、自律型AI?

ここまでは、ECにおける生成AIの活用事例について紹介してきたが近未来の可能性として、海外で普及しつつある3D試着や生成AIによる商品検索、音声コマースなどさまざまな事例が紹介された。中でも米国Amazon(※アプリとデスクトップ版のみ)が提供している会話型アシスタントAI「Rufus」は、従来の商品検索以外にオプションの比較や最新の製品アップデートの提供などを可能にするという(※6)。また2024年11月7日に日本でもベータ版の導入が発表されたばかりだ(※7)。

これに対し、梅染氏は「会話型アシスタントAI」について、下記のように分析する。

「米国の調査会社Gartnerによれば、現在の生成AIは“過度の期待のピーク期”と“幻滅期”の境界線にあり、今後はネガティブ要素に目が向くようになると予測されています(※8)。しかし、Rufusのような自律型AI(エージェントAI)は黎明期からピーク期に入りつつあるため、次のトレンドとして、人間が関与せずに活動できる“自律型AI”が来る可能性は十分にあると予測しています」(梅染氏)

※画像提供:ナビプラス株式会社(カンファレンス登壇資料より)

生成AIや近い将来トレンドが予測される自律型AI以外にも、汎用人工知能(AGI)やロボティクスなど今までの常識を覆すような体験に出会う可能性は今後も高いだろうと梅染氏。ECに限らずだが、ビジネスチャンスがあれば極力早く着手するべきで、脅威に対しては、なるべく早く情報を得て対策をすることが重要だと念を押した。

※6 出典元:How customers are making more informed shopping decisions with Rufus, Amazon’s generative AI-powered shopping assistant(Amazon)
※7 出典元:Amazonが生成AIを搭載した新たな対話型ショッピングアシスタント Rufus(ルーファス)ベータ版の日本への導入を発表
※8 出典元:Gartner 2024 Hype Cycle for Emerging Technologies Highlights Developer Productivity, Total Experience, AI and Security(Gartner)

梅染充男(うめぞめ みつお)
ナビプラス株式会社 取締役執行役員 CTO
2006年株式会社アピリッツに入社しSI系のNWインフラ構築・システム開発に従事。2008年10月よりレコメンドエンジン「パーソナライズド・レコメンダー」の開発や、サイト内検索ASP「Advantage Search」の立ち上げを担当。2010年ナビプラス株式会社設立と共に転籍し、レコメンド・検索エンジンを含んだ統合型マーケティングクラウドサービス「NaviPlus シリーズ」の企画開発戦略立案・研究開発等に従事。現在はナビプラス株式会社のCTOとして技術戦略を統括。


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