かご落ちの要因「送料・手数料等の追加費用」が4割超 年代別に傾向に違いも FORCE-R調査

ECのミカタ編集部

FORCE-R株式会社(以下、FORCE-R)による消費者調査をECのミカタで先行公開するリサーチ企画の第3回。今回はEC事業における大きな悩みの種「かご落ち」を深掘りする。

消費者がECサイトでカートに商品を入れたものの、何らかの理由で購入に至らず離脱してしまう「かご落ち」。ECサイトの平均かご落ち率は約70%(※1)とも言われ、販売事業者にとって改善すべき重要な課題だ。本記事では「カートに入れた後に商品購入をやめた経験がある」消費者355人のリアルな声から「かご落ち」が起きる理由を探りつつ、それを減らす施策のヒントをFORCE-Rの日比野陽介氏に聞いた。

※1 参考:米国Baymard Institure社調べ

●これまでのリサーチ企画はこちら 第1回第2回

調査概要

■調査内容:「かご落ち」に関するアンケート調査(消費者のオンラインショップで購入断念するキッカケなどに関する行動調査)
■調査期間:2024年12月11日~12月12日
■調査対象:オンラインショップでカートに入れた後に商品購入をやめた経験があるユーザー。20代~60代(合計355名)(20代:71名、30代:71名、40代:72名、50代:72名、60代:69名)
■調査方法:インターネット調査
■対象選定方法:アンケートをもとに、所定の条件に合致する対象者を抽出
■調査主体: FORCE-R株式会社
※本調査は「Commerce INSIGHT」で実施したアンケート調査の一部

かご落ちの主な理由「送料・手数料等の追加費用」が4割超、「後日購入」が約3割

本調査で【カートに入れた後に商品購入をやめた理由】を質問すると、最も多かった回答は「送料や手数料などの追加の費用が高かった」の46.1%(161人)、次いで「カートに入れておいて後日購入しようと思ったため」が29.8%(106人)となった。年代別にみても1位・2位の順位は変わらないものの(50代は同数)、40代は他の年代に比べて「送料や手数料などの追加の費用が高かった」を理由に挙げる人の割合が高かった。

この結果について日比野氏は、今回の調査ではさまざまな『かご落ちの理由』からよくある理由を一つ選んでもらっていることを前提としつつ、下記のように解説する。

「40代の方に『送料・手数料などの費用』という理由が多かったのは、経済的な側面が影響している可能性も考えられます。40代の多くの方が、子どもの成長に伴って家計の支出が増えたり、住宅ローンの支払いが続いていたりすることがあります。このような経済的状況の中で、送料や手数料といった追加費用に敏感になり、購入時に余分なコストがかかることに対して不満を感じやすくなると推察します」(日比野氏)。

購入されやすいのは「価格が高くて送料込み」か「価格が安くて送料別途」か

先の質問で「送料」がかご落ちの大きな要因となることが示されたが、それに対して事業者側ではどんな手を打てば良いのだろうか。送料によるかご落ちを回避する方法を探るために、まずQ1で「送料や手数料などの追加費用」を理由に挙げた164名に、「お買い物ガイドなどのページで、事前に送料を確認するかどうか」を質問。その結果、回答者の85%が事前に送料を確認していた。事前に確認しているにもかかわらず、少なくない人が追加費用を理由にかご落ちしてしまっているということは、送料に関する案内が十分に理解されていないことが考えられるため、FORCE-Rでは「注文確認画面での離脱が多い店舗の場合は、お買い物ガイドページ内の送料の記載方法を見直すことをおすすめします」と提案している。

続いて「商品料金が高くて送料込み」と「商品料金が安くて送料が別途かかる」のどちらが購入検討をするうえで良いと感じるか、商品価格3000円/送料1000円を例として質問。その結果は、「料金が高くても送料込みの方が買いやすい」という回答が80%となった。つまり結果的に同じ4000円を支払うとしても、送料を商品価格に含めた設定のほうが消費者の購買につながりやすいことが示された。

「今回の調査とは別に『購買行動』についてアンケートを実施した際の話しですが、『オンラインショップでカートに入れた後に、他のサイト(店舗)で商品価格や送料の比較をしたことはある』250人に、『カートに入れることで、商品が確保されると思うか?』と尋ねると、約40%が『確保されると思っている』と回答していました。このことから、消費者は【お買い物ガイドで送料・手数料を確認したうえで、商品をカートに入れて確保している安心感をもって、さらにお得に購入できるものを探す行動をしている】と考えられます。

お得に購入できるものが見つかってしまったら、(もとのサイトで)カートに入れた商品は放置されてしまい、「かご落ち」となってしまいます。この行動自体は事業者側で制御できるものではないので、事業者側ができる対策としては【お得に見せる】工夫をすることだと思います」
(日比野氏)。

ただし、消費者庁では持続可能な物流の実現を目指すために「送料無料」表示の見直しに関する考えを示している(※2)。事業者はこれを踏まえ、さらに関連法規を遵守したうえで、消費者にお得さを訴求する工夫が必要になるだろう。

※2 参考:物流の「2024年問題」と「送料無料」表示について(消費者庁)

「後日購入」層への効果的なリマインド方法は?

一方、Q1で「カートに入れておいて後日購入しようと思ったため」と回答した人に、「購入を後回しにした理由」を複数回答で質問したところ、「他の商品との比較検討」とともに「お気に入りとしてカートに入れておいた」という回答が多く、“購入リスト”のようにカートを活用している傾向が見られた。さらに「再度訪問して購入しようと思ったが、購入するタイミングを逃しまったことがあるか?」を聞いたところ、73%が「ある」と回答。2つの質問を合わせて考えると、そのECサイトに戻ってくるつもりでカートに入れたものの、多くが購入されないまま「かご落ち」していることになる。

こうした事態を防ぐ施策として、FORCE-Rは「店舗から、カートに商品が入っていることに対するリマインドが必要」と提案する。さらにリマインド(連絡)を受け取りたい方法も年代によって違いがあることを示すのはQ5に対する回答だ。50代・60代では「メール」が、20代では「アプリ(プッシュ通知)」でのリマインドが好まれるという結果となっている。また、通知する内容に関しても、興味深いデータがあるという。

「過去にリマインド方法についてアンケート実施した際に、『カートに入れたままの商品があります』と共に『在庫数残りわずか』という通知がくると良いという意見がありました。特にセール時期は、お得に購入できるタイミングを待つ方が増え、かご落ち率が増加する傾向があります。在庫のリマインドができるのであれば、なくなってしまう前に急いで購入する消費者も増え、(数は多くなくても)かご落ちの減少につながるかもしれません」(日比野氏)。

かご落ちは“永遠の課題” 伝えるべき情報を把握しサイト改善を

季節ごとのセール時に限らず、EC事業者を悩ませている「かご落ち」。今回の調査では「送料や手数料などの追加費用の高さ」と「後日購入しようと思った」という2つの大きな要因が浮かび上がってきた。しかし、さまざまな対策を図ったとしても、商材やターゲットによって傾向は異なってくるであろうし、消費トレンドも常に変わっていく。

「かご落ちはEC事業者の永遠の課題だと思います。さまざまな対策を図っても、消費者の購買行動が変わると、かご落ちの理由も変わってきます。特に送料については、運送の問題で配送費が高騰しているので、消費者にとっても気になる部分になってきていると感じます。我々にできることは、消費者が購入時に気にしている情報が何なのかをしっかりと把握し、その情報が伝わるように記載されているかの見直しを行うことだと思います」(日比野氏)。


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