EC月商5000万円の“壁” 突破した企業の止まらぬ成長の秘訣とは?【Shopify Japan セミナーレポート】
2024年10月31日、ECのミカタが開催した「Shopify活用最前線カンファレンス」の基調講演に登壇したのは、Shopify Japan株式会社のセールス・アカウントエグゼクティブ 外山児雄氏。EC月商5000万円で現れる“成長の壁”をShopifyの最上位プランである「Plusプラン」で打破できる理由を解説した同氏の講演をレポートする。
Shopify「Plusプラン」への移行が最も多いのは、EC月商5000万円前後
累計流通額約150兆円、幅広い業種や事業規模のECに対応するShopifyは、175カ国以上数百万の事業者が使うコマースプラットフォーム。「ガートナーやIDCなどの第三者機関からもコマースプラットフォームとしてリーダーポジションにあると、イノベーションスピードとビジョンの実現性などを含めて総合的な指標で評価されています」(外山氏)。そのShopifyの中で最上位プランに位置付けられるのが「Plusプラン」だ。Shopify「Plusプラン」の利用料金は月額2300米ドル(3年契約の場合)。ターゲットとなる事業規模はEC月商1000万円~数百億円と広いが、「Plusプラン」への移行が最も多いのが本カンファレンスのテーマでもある、EC月商5000万円前後の事業者だという。
「月額4万4000円の『Advancedプラン』よりも利用料金は高いですが、『Plusプラン』には越境、BtoB、SSO(Single Sign On)など、成熟しつつある事業者がさらなる成長のブーストに必要な機能が実装されています」(外山氏)。まず、EC月商5000万円以上の事業者が「Plusプラン」を選ぶ理由として外山氏は大きく3点を挙げる。その規模の事業者にとって「Plusプラン」は取引手数料が最も低く抑えられ、強固なインフラ基盤と支援体制が整っており、売上をさらに伸ばしていくための独自機能を提供している。そして、EC月商5000万円前後の事業者が「Plusプラン」を選ぶ理由は、このプランが「EC月商5000万円前後で直面し始める課題を解決できるから」と外山氏は説明する。
Shopify「Plusプラン」で“壁”を突破する
そもそもEC月商5000万円で成長が鈍化する事業者は、それまでは堅実に成長を続けてきたはずだ。とすれば、ショップを成長させるため、多くの事業者が機能の追加やカスタマイズを施しているだろう。しかし、そのカスタマイズがシステムの冗長性や安定性を損ねており、ビジネスをスケールさせるうえで、EC基盤がボトルネックになっているケースが多いという。外山氏が「EC月商5000万円前後の事業者が『Plusプラン』へ移行する際に抱えている課題」として挙げたのが下の3つだ。
◆拡張性/柔軟性の不足
システム開発を内製しているのか、ベンダーに委託しているのかを問わず、優秀なエンジニアの属人的な開発環境などにより、ショップの内実は社員がカスタムできる状態ではなくなっていることが多い。「社内にナレッジが蓄積されていない環境では、チームが必要だと感じた新しい機能を要件定義して、現状のシステムにつなぎこむフローに時間がかかり、PDCAを素早く回すことが難しくなります」(外山氏)。
そこでShopifyが提案するのが「Plusプラン」に搭載されている豊富な標準機能と、1万以上あるShopifyアプリだ。ショップを拡張したいと思ったときに必要性を感じる一般的な機能は概ねアプリストアで公開されているという。さらに探しているアプリがない場合は他サービスと連携して独自機能を開発・実装することも可能だ。「標準機能とShopifyアプリでショップを整備していき、それでも足りない場合はAPI連携して外部アプリを使うと独自機能の開発や実装を進められます」(外山氏)。
◆ECの関わるシステム全体の複雑化
システム開発の属人化、複雑化が進めば、運用にかかるコストとリソースは肥大化していく。互換性の低いサービスの連携を重ねたシステムの維持には煩雑なマニュアル作業がつきまとい、その結果は「2025年の崖」(※1)からの“転落”だ。
「2025の崖」は、日本における過剰なカスタマイズ主義が事業者のフットワークを重くし、競争力を失う現象を指す。外山氏は「システムが複雑化したショップは維持管理費だけでIT予算の9割以上を消費。開発にリソースを割けず、競争力を失います」と指摘。この課題に対して、将来的に事業をスケールするうえでもShopify「Plusプラン」による基盤、体制の整備改善が有効であることを示した。
◆アクセス集中に耐えきれない
ECを運営する上で欠かせないのが、「好きな時に買える」状態の維持。負荷がかかってもサーバーが落ちず、高速でページを表示するという、消費者にとっては当たり前であってほしい状態は、簡単に実現できるものではない。「Shopifyはインフラ部分の強さに定評があります。ページ読み込みのパフォーマンスやインタラクティブ性を指すコアウェブバイタル(CWV)が競合の中で最上レベル、ブラックフライデーなどでも落ちないサーバー環境を持っています」(外山氏)。
※1 参考:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(経済産業省)
Shopify「Plusプラン」がショップに“違い”を生み出す
講演の締めくくりとして、外山氏はショップのさらなる成長に貢献する「Plusプラン」の3つの機能と、2つのキーワードを紹介した。
「『Chackout Extensibility』はチェックアウト画面をカスタマイズする機能です。通常プランと比較して、CVRとAOV(平均注文額)に15%以上の違いが出ます。また『Launchpad(自動公開機能)』を使えばセールや期間限定販売を事前に設定しておき、その期間内のサイトデザインや商品、価格などが予約できるので、よりリソースをかけずにセールが実施できます。また『POS Pro』はECと実店舗を連携する仕組みで、顧客情報や在庫データの一元化や相互送客によって、販促施策を行うことができます」(外山氏)。
そして「月商5000万円前後から“さらに”スケールするための超重要キーワード」として「1st partyデータの本格活用によるパーソナライズ体験の強化」と「マルチチャネル/マーケット展開による販売機会拡大(越境/BtoB/店舗連携)」を挙げ、会を締めくくった。「パーソナライズ体験を強化することで既存顧客のリピート率やロイヤルティを、マルチチャネル展開によって新規顧客の拡大を最大化します」(外山氏)。
ある程度までEC売上が伸びたものの、その後の成長鈍化に悩む担当者は多いはずだ。たくさんのデータが蓄積しているだけに伸び悩む原因の分析が難しくなり、裏側ではシステムが煩雑に絡まっている可能性もある。とはいえ、システム改修にかけられる予算と人材には限りが……。このような課題を解決するために、なぜ多くの事業者がShopifyを選んだのか、その理由と、プラットフォームとしての強みが伝わるセミナーとなった。
早稲田大学国際教養学部を卒業後、シスコ・システムズ合同会社に入社。約3年間公共領域(大学/市役所/病院など)のセールスとしてネットワーク、セキュリティ、データセンター、Web会議システム領域などの提案、導入支援に従事。その後、国内EC市場の成長に貢献をしたいという想いから2022年にShopifyに入社。新規開拓特化型のインサイドセールスを1年4カ月、既存顧客に対するクロスセル営業を9カ月経験した後、2024年4月~現在に至るまでEC年間売上0円~35億円規模のShopify「Plusプラン」の新規案件を担当するアカウントエグゼクティブとして従事。業界問わず多くのEC事業者の新規立ち上げ案件、リプレース案件を推進中。日本国内へのShopify「Plusプラン」の普及活動を通じてEC市場の成長に貢献できるよう日々邁進中。