ミニゲームや診断コンテンツを活用したラコステの顧客エンゲージメントを高める取り組み【ラコステ ジャパン セミナーレポート】
2024年12月10日〜13日の4日間、awoo株式会社主催の「ファッションECカンファレンス2024」が開催された。セッション10では、フランスのテニス選手、ルネ・ラコステが1933年に開発したポロシャツを起源に持ち、現在も常に新しいことに挑戦し続ける株式会社ラコステ ジャパンが登壇した。
同社は多くの小売企業が販促施策に注力する中、顧客エンゲージメントを高める施策にも力を入れている。具体的な施策について話された、同社 マーケティング部 CRM マネージャー ⻘野功治氏と、チーターデジタル株式会社 シニアクリエイティブコンサルタント 林和也氏のパネルディスカッションの模様をお届けする。
将来のVIP会員を失わないために顧客接点を増やす
チーターデジタル株式会社 シニアクリエイティブコンサルタント 林和也氏(以下、チーターデジタル 林) 販促など短期的に売上が上がる施策を優先するケースが多い中、ラコステ様がロイヤル顧客の育成やエンゲージメント施策に注力している背景をお聞かせください。
株式会社ラコステ ジャパン マーケティング部CRM マネージャー ⻘野功治氏(以下、ラコステ 青野) ラコステでは、数%のVIP会員の売上が全体の25%以上を占めています。しかし、規模が大きくなるにつれ、お客さま全員に対してアプローチをすることが難しいという課題が生じました。ツールを活用してキャンペーンの告知やセールの案内は送っていたのですが、一時的にしか解決できませんでした。このままでは将来のVIP会員を失いかねないと感じ、ブランドのファン作りを目標に、購入以外の接点を増やしてラコステの良さを伝える施策に力を入れています。
チーターデジタル 林 VIP会員には、どのような特徴があるのでしょう。
ラコステ 青野 VIP会員のお客さまは店舗スタッフとの交流が多く、スタッフを通じてブランドの歴史や情報にとても詳しいという特徴があります。また、普段からラコステの製品を着用していただけるのはもちろん、周囲の方にもブランドの情報を共有したり、ギフトとして送ってくださったりしていますね。
そのため、私たちは積極的にスタッフと交流するイベントの企画や、歴史についての発信、ブランド体験を増やす取り組みを強化しています。例えば、ラコステ原宿店では定期的にアップサイクルのイベントも開催しており、廃棄しなくてはならない製品を回収して、職人がお客さまと一緒にタイダイ染めのデザインを作るイベント等も実施しています。
顧客エンゲージメントを高めるために、あらゆる施策を実施
チーターデジタル 林 顧客接点を増やすためにチーターデジタルのMarigold Growをご活用いただいておりますが、最近の施策事例をお聞かせください。
ラコステ 青野 1つ目は、会員向けに配信した「神経衰弱ゲーム」があります。ラコステはこれまで5種類のロゴを使用しており、それらのロゴをマッチさせるオンライン上のゲームです。お客さまは店舗スタッフからラコステの歴史の話を聞いて周りに拡散しているので、ゲームを通じてもラコステの歴史を知っていただこうと実施しました。
ゲームにはタイムスコアがあるのでお客さまの中には何回も挑戦してSNSで報告したり、店舗スタッフに見せたりする方もいました。コミュニケーションツールとしての役割も果たしていましたね。
チーターデジタル 林 2つ目の施策である「ロゴ壁紙カスタマイズ」についてお聞かせください。
ラコステ 青野 お客さまがオリジナルのポロシャツ壁紙を生成して、ご自身のスマホの壁紙に設定できる施策です。ラコステでは2023年からカスタマイズポロシャツをオーダーできる「MY LACOSTE」をローンチしており、このサービスを知って楽しんでもらうために「ロゴ壁紙カスタマイズ」も企画しました。実際の生地やロゴと同じ物を使用できるようにこだわり、オンライン上でも楽しくカスタマイズの疑似体験ができる仕様になっています。
また、デジタルノベルティに対する反応や、ディスカウントに代替するものになるのかといった検証の意味も込めて実施しました。事前に想定したよりもダウンロード数は多く、とても盛り上がりを見せた施策となりました。
チーターデジタル 林 3つ目の「ラコステ ワニ塗り絵」のキャンペーンについてもお聞かせください。
ラコステ 青野 TEAM LACOSTEという会員プログラムのメンバーズウィークで実施したキャンペーンです。ラコステのロゴのワニにオンライン上で塗り絵ができるもので、一つひとつの”うろこ”まで色を変えることができます。塗り絵はコンテスト形式にし、選ばれた5名様にカスタムTシャツをプレゼントしました。
塗り絵のキャンペーンも壁紙と同様、デジタルノベルティの検証として実施した側面もあります。実際に店舗スタッフも会員特典として案内してくれており、デジタルノベルティは新しい新規獲得の方法として活用できると感じています。
また、塗り絵をダウンロードして壁紙に設定してもらい、お客さまとのタッチポイントを増やせるのも重要なポイントです。
チーターデジタル 林 4つ目の「ワニタイプ診断」の企画についてもお聞かせください。
ラコステ 青野 お客さまが簡単な質問に答えるだけで、ご自身のタイプをユニークなワニに例えて診断するものです。私たちは購買情報や会員情報だけでは見えない興味関心のゼロパーティーデータを集めたいと考え、「ワニタイプ診断」の企画を実施しました。
この企画は公開1日で1万人以上もの回答が集まり、今までの施策の中で最も反響の多いものとなりましたね。実際に集まったデータからゴルフクラスターの分析をし、これまでゴルフカテゴリーを「買ったことのある人」「買ったことはないが興味のある人」「それ以外」という3つのタイプに分けました。その後、メルマガやアプリで配信をしたところ、興味のある人が最も反応が良いことがわかり、オポチュニティがある領域が見つかりました。
今後もデータの母数を増やして、テストをしながらセグメント活用を進めていきたいです。
今後も顧客満足度の向上とLTVの改善を追求する
チーターデジタル 林 最後に、今後の取り組みについてお聞かせください。
ラコステ 青野 ラコステでは、Marigold GrowへNPS管理も統合したので、今後はより長期的な顧客満足度の向上とLTVの改善を実現したいです。自社でNPSを運用できると小回りが利き、分析もスムーズに進みます。現在は低いスコアの回答が来たら、店舗や営業担当にメールでアラートが飛ぶ仕組みも構築できました。今後も開発を進め、お客さまのニーズや満足度を高められる状態を目指していきたいです。