メルカリ、ギガを売り買いできる「メルカリモバイル」でMVNO事業参入

大矢根 翼

2025年3月4日、フリマアプリ大手で、仮想通貨などのフィンテック事業も展開している株式会社メルカリ(以下、メルカリ)が、MVNO(移動体通信事業者)事業を開始した。同日に行われたサービス開始発表会では、株式会社メルカリ 執行役員CEO Fintech 兼 MVNO事業責任者 兼 株式会社メルペイ 代表取締役 CEO 永沢岳志氏が、データ通信容量(ギガ)を売買できるユニークな仕組みを持つ「メルカリモバイル」を紹介した。

わかりやすさ重視のプランとシステム設計

料金プランは2GB(月額990円/税込)と20GB(月額2390円/税込)の2プランの展開という、シンプルなスタートとなった「メルカリモバイル」。 わかりやすく、手軽なことを最優先に作られたサービスのパッケージが語られた。

「スマホユーザーの64.4%は、キャリア変更をした経験がない、もしくは1回までで、最も多い『乗り換えない理由』は手続きが面倒だからです。また、多くのユーザーがスマホのデータ通信において、契約中のプランと使用量が乖離していることに不満を持っています。

画像出典:株式会社メルカリ

そこでメルカリモバイルは、従来のメルカリアプリだけで契約から支払いまで、全ての作業が完結する上に、メルカリのフリマ機能上で余ったデータ容量を売買できるようにしました。足りなければデータ容量を買えて、余れば売れるので、データ通信料金が柔軟になります。

イベントや外出などで当月のデータ通信量は変動します。『多めのプランでは容量が余る』『低容量プランでは月末に足りなくて我慢』から解放されるので、スマホ料金が柔軟でお得になります。データ容量の売上はメルカリの売上金に追加され、購入したデータ容量は即時で高速データ通信容量に加算されます。公式からのデータ販売もあるので、メルカリ上が在庫切れになることもありません。

ユニークな通信量の売買は、雑貨を売ってデータ容量を買う、データ容量を売ってNFTを買うなどの行動を可能にします。メルカリアプリ、エコシステム内で売買できるさまざまなサービスをモバイルと紐づけて運用できます。2GBと20GBという高速データ通信容量は、わかりやすさとマーケットの動向をもとに設定しました。2GBは昨今大容量化が進むプランの中では少ないですが、確かにマーケットのあるボリューム。両プランともにMNPを含めたメイン回線としてご利用いただきたいと考えています」
(永沢氏)。

機能拡張は初速次第

サービス開始時点では、MVNEを介したdocomo回線をeSIMで提供する。支払い手段はメルカリが独自に査定を行うメルカードとメルペイに限定されている。今回のリリース後、順次物理SIMカードの発行、データSIM、au回線、通話定額オプション、支払い手段の追加などを展開する予定だという。

「メルカリエコシステムのユーザーには、物品や労働の売買などによるキャッシュインがあります。まずはメルカリの既存ユーザーに使っていただきたいです。メルカリアプリ内で完結するサービス設計なので、オフライン展開の予定はありません。事業は早期の単体黒字化を目指しており、春のモバイル商戦期に間に合わせるべく3月にリリースしました。追加サービスは、技術的には3カ月程度で実装可能ですが、初期の契約者数動向や売上を観測しつつ、夏頃から施策を追加していく予定です」(永沢氏)。

初期投資を抑制してサービスを開始したという「メルカリモバイル」は、端末販売を絡めたサービスの追加も検討しているという。また、2023年比で2024年に2.7倍の流通総額となったメルカリShopsとの連携など、EC事業者が参入する余地のある事業に発展していく可能性もある。

「メルカリモバイル」はC2Cビジネスが起点のメルカリが母体であるだけに、中古端末などを扱う事業者は特に今後の展開を注視したいサービスと言えそうだ。


記者プロフィール

大矢根 翼

2018年法政大学卒業後、自動車部品メーカーに就職。
ブログ趣味が高じてライターに転身し、モータースポーツメディア『&Race』を副編集長として運営。
オウンドメディアの運営、記事制作など、複数ジャンルで記事制作をメインに活動している。

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