ECでの値上げ、何%までなら許容できる? 値上げ後の顧客離れを防ぐには事前告知が有効 FORCE-R調査
米価の高止まりをはじめ、毎日のように話題にのぼる昨今の値上げラッシュ。原材料費や輸送コストの上昇、人手不足、円安など要因は複合的であり、EC・通販業界にもその影響は大きいが、顧客離れを心配して値上げに踏み切れない事業者も多いのではないだろうか。
そこで今回は、FORCE-R株式会社が月3回以上ECを利用するユーザーを対象に実施した「商品値上げに関する調査」の結果を、ECのミカタ先行で公開。消費者は何%までなら値上げを許容するのか、値上げによる他社商品への乗り換えを防ぐ手立ては? FORCE-Rの日比野陽介氏の解説とともにお伝えする。
●これまでのリサーチ企画はこちら 第1回/第2回/第3回/第4回/第5回
調査概要
■調査内容:商品値上げに関する調査
■調査期間:2025年4月10日~4月15日
■調査対象:オンラインショップで月平均3回以上購入する20代~60代/476名
(20代:64人、30代:163人、40代:161人、50代:68人、60代以上:20人)
■調査方法:インターネット調査
■対象選定方法:アンケートをもとに、所定の条件に合致する対象者を抽出
■調査主体: FORCE-R株式会社
※本調査はFORCE-RによるEC支援サービス「Commerce INSIGHT」で実施したアンケート調査の一部
9割超が「現状から5%程度の値上げ」は許容範囲と回答。ただし…
本調査において、まず「オンラインショップでの買い物において最近、商品価格の値上げを実感していますか?」と尋ねたところ、実に97%が値上げを実感しているという結果に(「強く感じる」「やや感じる」の合計)。一方、「日常的に購入している商品の価格が上がった場合、どの程度まで許容できますか?」との質問には、「~5%程度」が47%(476名中444名)で最多となった。
実店舗でも商品の値上げが実行されている中、値上げを許容する声が多かったのは値上げを検討中のEC事業者にとってはポジティブな声とも言えるが、日比野氏は以下のように考察する。
「消費者のマインドとしては、値上げは『受け入れざるを得ない』という、なかば諦めのような感情があるのではないでしょうか。生活必需品であればなおさら、提示された価格で購入しないと手に入らないという状況だと思います。ただし価格が上がることによって、消費者の『支払っている額に、品質が見合っているか』という視点からのチェックも厳しくなると考えます。
『価格の値上げは受け入れる』けれど、『自分が求める品質水準は下げる気はない』というのがユーザーの本音だと思います」
“乗り換え”を防ぐカギは品質を落とさないこと
値上げを実行すると、同じカテゴリの他社商品に乗り換えられるかもしれない……と不安に思う事業者もいるに違いない。確かに今回の調査でも「値上げ後の他社への乗り換えの可能性」について尋ねると、約82%が「条件次第で乗り換えを検討する」と回答した。しかし同じ問いに対して「すぐに乗り換える」と答えた人が約16%にとどまっていることを考慮すれば、多くの人が一旦は値上げを受け入れるスタンスを持っているとも考えられる。
つまり、値上げとともに「商品の品質」が下がったと感じられてしまえば、他社商品への乗り換え検討が急速に進みかねない。本調査で「他社に乗り換え検討する際に比較するポイント」を尋ねると、「品質」と答えた人が圧倒的多数。この点に関して日比野氏も「原材料の高とうにより、今まで使用していた材料を変更するという判断をせざるを得ない事業者は多いとは思いますが、品質担保には十分に気を付けてください」と注意を促している。
値上げを事前に告知すると、約6割が「印象が良くなる」
では、さまざまな要因によって値上げが避けられない場合に顧客離れを防ぐには、どのような準備や施策が考えられるのだろうか。一つの方法としてFORCE-Rが提案するのが「値上げの事前告知」だ。
本調査で、自身が良く購入している店舗が値上げする際に「事前告知があると印象が変わるか?」と聞いたところ、約60%が「印象が良くなる」と回答。「変わらない」も含めて事前告知に対して悪い印象を持たれることはわずかであるという結果を踏まえ、同社では「値上げする際は、ぜひ事前告知をしてください」と提案する。
また、商材によっては値上げを事前に告知することで、値上げ前のまとめ買い需要が発生する可能性も。日比野氏は、この一時的なニーズに対応する在庫の確保をすすめつつ、事前告知や値上げ前後のクーポン配布といった施策においては、あくまでも既存顧客とのコミュニケーションを重視することが大切であるとまとめた。
「まずは、今まで購入してくれていた既存のユーザーに対してしっかり還元していけると良いと思います。会員限定でクーポンを発行するなどの準備をしたうえで、『日頃の感謝』『値上げをしなければいけない理由』『心苦しいという想い』『会員様限定で特別に購入できる機会を設けた』といったメッセージを、メールやLINEで配信してみるのも良いでしょう。
そうすることで、ユーザーは『自分たちのことを考えてくれている』というポジティブな感情を持ってくれ、値上げ後にすぐに離れることが少なくなると思います」(日比野氏)。