トランプ関税の影響は? 30周年を迎えるeBayが語る「越境ECの今」

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大矢根 翼

2025年6月20日、オンライン・マーケットプレイス「eBay」における日本セラーの海外販売を支援するイーベイ・ジャパン株式会社は、「越境ECの今を知る」をテーマにメディアラウンドテーブルを開催した。

同会には代表取締役社長の岡田雅之氏をはじめ、ビジネスデベロップメント部 部長の篠原星氏、ジャパンカテゴリーマネジメント部 部長の北村直樹氏が登壇。2025年で設立30周年を迎えるeBayの特徴や、海外のバイヤー(買い手)が求めている商品のトレンド、さらに“トランプ関税”に対する日本セラーの受け止めなどを紹介した。

eBayの強みと、越境EC・リユース市場の将来性

最初に登壇した篠原氏は、eBayを通じて日本から海外に向けて販売するメリットを語った。

eBayは圧倒的なバイヤー数(※1)とコアなファン層(エンスージアスト)を持つプラットフォーム。固定料金形式だけでなくオークション形式でも販売でき、ストア登録をすればeBay内に自分でカスタマイズ可能なストアを設けることもできます」(篠原氏)

eBayにおける国別の成長率をみると、昨今の円安や日本セラーの対応力の高さ、商品の品質の良さなどを背景に、世界のeBayの中で日本からの販売が数年間No.1を達成しているという。さらに篠原氏は、世界の越境ECの市場規模が2021年の約7850億米ドルから2030年には約7兆9380億米ドルへの成長が見込まれていること(※2)や、リユース市場の拡大予測を踏まえ、「eBayのような越境ECやリユースには、ビジネスとしての将来性があると言える」とまとめた。

※1 eBayのアクティブバイヤー数は1.34億人(2024年決算データより)
※2 経済産業省「令和5年度 電子商取引に関する市場調査」

イーベイ・ジャパン株式会社 ビジネスデベロップメント部 部長 篠原星氏

締めくくりに篠原氏は、イーベイ・ジャパンが行っている日本セラーへのサポートについて紹介。

「eBayで販売するための情報発信に加えて、日本語での問い合わせ対応など、日本のセラー様ができるだけスムーズに販売できるようにサポートするのが私たちの役割。また、新規のセラー様にオフラインで集まっていただき初期段階の不安を解消する『オープンキャンパス』(※3)や、毎年の『eBay Japan Awards』(※4)など、セラー様との接点を重要視しているのもイーベイ・ジャパンの特徴です」(篠原氏)

※3 参考ブログ「海外販売ベテラン講師のアドバイスを聞き、悩みを直接相談できる「eBay Open Campusオフラインセミナー」を開催。eBay初心者の「つまずき」はここで解決!
※4 参考記事「eBay Japan Awards 2024表彰式 セラー・オブ・ザ・イヤーはカメラ販売のシュッピンが3年連続受賞」

日本のセラーから世界の“エンスージアスト”へ

続いて登壇した北村氏は、5月に発表した「2025年 第1四半期 越境ECレポート」をベースに、eBayにおけるトレンドとサービスの現在地を解説した。

北村氏は、eBayを利用する熱狂的なファン・コレクター層「エンスージアスト」に、日本から販売される中古の商品が非常にマッチしていることを強調。世界のeBayのグローバルドメインである「.com」では新品と中古品がほぼ同じ割合で販売されているが、日本から売れている商品カテゴリーのうち、65%を中古品が占めているという。

特に人気なのはハイブランドのファッションアイテム、日本メーカーのカメラ、そしてコレクター商材(コレクティブルズ)です。ファッションカテゴリーでは500米ドル以上の高額なハンドバッグや腕時計・ジュエリーも売れていますし、コレクティブルズではポケモンカードやアニメ・漫画の関連商材が売れ筋。電化製品ではカメラに加えて、レトロゲームのゲーム機&ソフトも好調です」(北村氏)

イーベイ・ジャパン株式会社 ジャパンカテゴリーマネジメント部 部長 北村直樹氏

そうしたeBayにおける日本セラーの売れ筋商品を四半期ごとにまとめているのがイーベイ・ジャパンの「越境ECレポート」だ。最新の「2025年 第1四半期」版によれば、同年1~3月に最も成長率が高かったカテゴリーは、ポケモンカードを中心とした「トレーディングカード(昨年比+86.4)。次いで「デジタルカメラ(同+52.4)」「メンズ アパレル& バッグ ブランド小物(同+39.5)となった。

「『ポケモンカード』は2026年に30周年を迎えることで盛り上がりを見せており、『デジタルカメラ』は若者の間で旧型モデルの人気が高まっています。このように海外の若者が日本の商材をすごく求めているんです」(北村氏)

さらに同氏は「Shop Japanese」と題された米国のVogue誌の記事を引用しつつ、日本セラーから出品されるルイ・ヴィトンをはじめとする欧州ブランドの高額ファッション商材が、eBayで人気を集めている背景を語った。

日本では中古ブランド品のエコシステムが成熟しています。持ち主はブランド品を丁寧に扱いますし、保管状態の良いものが多い。そうしたことから日本の中古商材が海外から注目されていて、『Used in Japan』という言葉もあるほどです」

画像出典:イーベイ・ジャパン「2025年 第1四半期 越境ECレポート」より、カテゴリーランキングの成長率TOP3(eBayにおける日本からの「越境EC」取引に関するデータ(期間:2025年1月~3月) 前年同期 売上対比)

越境ECのハードルを下げる4つの公式サービス

セッションのまとめとして、北村氏は4つのeBay公式サービスを紹介した。1つ目は2025年4月から日本の全セラーへと対象を拡大した「真贋保証サービス(※5)」。2つ目は、再点検・整備され厳格な品質基準をクリアした中古品をリファービッシュ品(保証付き整備品)として証明・出品できる制度「eBay Refurbishedプログラム(※6)」。3つ目は公式多国展開ツール「eBaymag(※7)」。そして2025年6月に日本市場向けのサービス強化が発表された公式配送サービス「eBay SpeedPAK(※8)」。こうしたサービス拡充によって、eBayを通じた越境ECのハードルは年を追うごとに低くなっていると言えそうだ。

※5 参考記事「真贋保証サービス」を日本の全セラーに無料で開放 eBayが示すグローバルプラットフォームとしての責任
※6 参考記事 イーベイ・ジャパン、日本の全セラーを対象に「eBay Refurbished プログラム」を提供
※7 参考記事 eBayの公式配送サービス「SpeedPAK」、J-STARを新パートナーに日本市場へのサービスを強化
※8 参考記事:越境EC、アメリカ以外にも大きな商機! 最大8カ国のeBayで同時出品を可能にする無料公式ツール「eBaymag」とは?

”トランプ関税”に対する日本セラーの受け止めは?

最後に登壇した岡田氏のセッションのテーマは、「新しい越境ECのカタチ セラーの声から読み取る未来像」。同氏は米国の関税変更による影響範囲および日本セラーの現状把握を目的にイーベイ・ジャパンが行ったセラーへのアンケート結果をもとに、米国のドナルド・トランプ大統領が発表している各国への関税変更政策に関するセラーの声を紹介した(※9)。

アンケートで「eBay販売を今後も続けていきたいと思うか」を質問したところ、96%の回答者が継続の意向を示した。「関税変更についてセラー様がどう感じていらっしゃるのか心配していたのですが、ありがたいことに、ほとんどの方が『今後もeBayで販売していきたい』と答えていただき、大いに勇気づけられました」と岡田氏。

また、「今後取り組もうと考えていること、または実践したこと」という質問項目では、「米国以外の新しい市場への参入」との回答が最多。さらに「米国以外で望まれる新しい市場」としてヨーロッパ、オーストラリア、東南アジアの順で上位に挙げられたという。この結果について岡田氏は「米国以外でeBayとしての市場が大きいのは英国、ドイツ、オーストラリア。私たちとしても、それらの国へのセラー様の参入を後押ししていきたいと語った。

※9 アンケート概要●対象者:日本セラー(約4万2000件 ※匿名での集計)/アンケート期間:2025年5月27日から同年6月8日/取得方法:eメールでの配信(※イーベイ・ジャパンの公式案内メール)/回答数:799件

イーベイ・ジャパン株式会社 代表取締役社長 岡田雅之氏

米国以外への参入を積極的にサポート

参加メディアとのQ&Aでは、再び米国の関税変更の影響に関する質問も多く出たが、岡田氏は日米間の交渉が続いており状況は流動的であることを前提としつつ、現時点(6月20日時点)では日本のセラーへの大きな影響は見られないとした。イーベイ・ジャパンとしては関税変更を見据えて、昨年から前述の通り米国以外の国へのセラーの参入を後押しており、さらに「eBay SpeedPAK」などの仕組みも整えてきたという。

また、オートパーツ(自動車やオートバイの部品)は日本から販売されている人気カテゴリのひとつだが、関税変更の影響で米国で車の買い替えサイクルが長くなると修理用としてパーツの需要が伸びるのではないかという見立てに対して、岡田氏も同意するなど、活発な意見が交わされた。

いわゆる”トランプ関税”が世界におよぼす影響はまだまだ未知数。しかし「次」を見据えてサービスを拡充する戦略に、グローバルプラットフォームとしてのeBayと、日本セラーをサポートするイーベイ・ジャパンの姿勢が感じられる機会となった。


記者プロフィール

大矢根 翼

2018年法政大学卒業後、自動車部品メーカーに就職。
ブログ趣味が高じてライターに転身し、モータースポーツメディア『&Race』を副編集長として運営。
オウンドメディアの運営、記事制作など、複数ジャンルで記事制作をメインに活動している。

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