ネガティブレビューへの返信、7割が「購入意欲に影響」 正しい対応法は? FORCE-R調査
ECサイトにおけるレビューや口コミは消費者の購買判断を左右する重要な情報源であり、ショップ側も常に注意を払っているはず。しかし、レビューに対するショップからの返信がどんな影響を与えているかについては、十分に把握できているだろうか。
今回はFORCE-R株式会社が20代以上の1000人を対象に行った調査を基に、レビューへの返信が消費者のECでの購入決定に及ぼす影響について深掘り。ネガティブなコメントに対してユーザーが望む返信の内容は? レビューに返信する際に“ショップ側が意識すべき2つの視点”とは? 同社の日比野陽介氏に話を聞いた。
●これまでのリサーチ企画はこちら 第1回/第2回/第3回/第4回/第5回/第6回
調査概要
■消費者がオンラインショップで商品を購入する際の口コミやレビューが購入決定に与える影響に関する行動調査
■調査期間:2025年1月15日~1月16日
■調査対象:20代~60代のオンラインショップ利用経験者/合計1000人
(20代:200人、30代:240人、40代:240人、50代:200人、60代以上:120人)
■調査方法:インターネット調査
■対象選定方法:アンケートをもとに、所定の条件に合致する対象者を抽出
※本調査はFORCE-RによるEC支援サービス「Commerce INSIGHT」で実施したアンケート調査の一部
7割以上が「ネガティブなレビューへの返信は購買意欲に影響する」
今回の調査において、ネガティブなレビューに対するショップ側からの返信が購買意欲に影響するかを尋ねたところ、全世代で70%以上が「影響がある」と回答。ネガティブなレビューへの返信は、消費者の購入意欲に大きく関わっているようだ。
「(誹謗中傷に類するもの以外の)商品購入者の率直な感想に対してしっかりと目を通し、商品やサイト運営の改善に努めている姿勢を消費者に示すことが店舗に対する信頼感につながり、購入の意思決定に影響を及ぼすと考えています。
ネガティブなレビューは印象が良くないから、削除したいと考える事業者も多いと思いますが、当社が実施したアンケートで『購入の参考にするレビューは?』を質問したところ、1000人中の60%以上が『良いレビューと悪いレビューがバランスよく書かれたレビュー』と回答しています。消費者は良いレビューだけを求めているのではなく、悪いレビューも両方見て、自分が購入していいのかを判断しています」(以下、発言は日比野氏)
ネガティブなレビューへの返信は、謝罪よりも改善策を
では、ネガティブなレビューに対して、具体的にどのような内容を返信すべきなのだろうか。本調査によれば、ショップ側の返信コメントに望む内容として圧倒的に多かったのが「改善策/解決策を提案」。次いで「問題の理解と共感(268人)」、「謝罪の気持ち」をあげたのは104人だった。
「この結果は妥当だと考えます。なぜなら、レビューを書いた方本人は『謝罪』がほしいと思うかもしれませんが、レビューを見て購入の参考にしている消費者としては『自分以外の人が購入して気づいた改善点に対して、どのように取り組むのか』のほうが重要だからです。
レビューの返信には『① 実際にレビューを書いた人』への目線と、『② レビューを見て商品購入を検討している人』への目線の両方が必要です。①は皆さん意識していると思いますが、より今後のCVR向上につながるのが②です。
例として、コスメ商材で『肌に合わなかった』というレビューがついてしまった場合の対応方法を考えてみましょう。
①『実際にレビューを書いた人』への目線で意識すること
…購入者の状態を気遣い、肌のトラブルがある場合にはカスタマーセンターへのご連絡を促すのが良いと思います。具体的には、『詳しくはカスタマーサポートでお客様の状況をお伺いし、お客様の肌に合った商品をご提案させていただきます』などです。
②『レビューを見て商品購入を検討している人』への目線で意識すること
…同じお悩みを持って商品を検討するためにレビューを見ている方を意識し、返信では「敏感肌であればこちらの商品の方がおすすめかもしれません」といったかたちで、ショップとしてのおすすめを提案すると良いと考えます。
ネガティブなレビューへの返信は、『商品購入を検討している人が見ている』ことを忘れず、サイトに訪れたユーザーとのコミュニケ―ションという意識で書くと良いでしょう」
では、コスメ以外のジャンル・商材でも、レビューへの返信は効果があるのだろうか。「どんなジャンルでショップからの返信があると効果的だと感じるか」について質問すると、「化粧品/コスメ/サプリ(702人)」に次いで多かったのが「食品・飲料」だった。日比野氏はこの結果に表れた消費者インサイトを、「『商品の質』を特に気にするジャンルであるため、扱っているショップが信頼できるのかを見極めたいという気持ちの表れ」と考察する。
「『商品の質』とは、例えばコスメ・サプリの成分や、食品であれば原材料・添加物などです。直接口にしたり肌につけたりするものなので、レビューへの返信対応もしっかりしている、信頼できるショップから購入したいと考えているのだと思います」
レビューへの返信は価格競争「逆転の切り札」!?
最後にもう一つ、レビュー返信の重要性を示す調査結果を紹介したい。同程度の機能の商品で購入を迷っている際に、「安くてレビュー返信を実施していないショップよりも、価格が高くてもレビューに返信しているショップで購入したい」という回答が半数を超える60%。日比野氏はこれを“失敗したくない”消費者心理の表れであり、消費者は“価格は安くても不安を感じるショップ”よりも、“信頼できるショップ”を選ぶ傾向にあると読み解き、以下のようにまとめた。
「良い星の評価や件数にのみ目を向けるのではなく、消費者が購入検討しやすいレビュー欄になっているのかを再確認してみてください。レビューにしっかり向き合い、対応することで店舗の評価は上がり、仮に価格競争で負けていたとしても、最後で大逆転できる可能性があります。
日頃サイト運用を行う中でレビューに返信する作業は、非常に大変な業務だと思います。ただ大変だからこそ、やっている店舗とやっていない店舗との差が出てくる部分でもあります。ネガティブなものも含めて、商品に対する意見であれば、その改良や次の開発、パッケージや梱包方法の改善などに活かすこともできるでしょう。場合によってはECサイトの表記内容を見直すことにもつながり、購入者と店舗とのギャップをなくすこともできると考えます」