成功企業に学ぶ勝ち筋! 「気づき」と「ヒント」を得る1日に【ECモールカンファレンスレポート】

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ECのミカタ編集部

ECのミカタ(MIKATA株式会社)は6月19日、東京都渋谷区のSCC千駄ヶ谷コミュニティセンターで「ECモール出店者が明かす本音と課題」と題した参加無料のオフラインセミナーを開催。当日はECモールで成果を上げる株式会社ファンケル、株式会社モリフジ、ハーマンインターナショナル株式会社が登壇し、ECモール運営のリアルな現状と成功の秘訣を明かした。

あわせて株式会社Minatoとm19 Japan株式会社は、ECモールでの売上を伸ばすための施策や運用方法について講演。さらに協賛企業によるソリューションピッチも開催された。イベント終了後の交流会では、参加者同士が積極的に情報交換する姿が多く見られ、それぞれの課題解決につながる「気づき」や「ヒント」を得られる実りある1日となった。

ビジネス環境は変化しても顧客と向き合う姿勢は変わらない

株式会社ファンケルでEC部門を統括する末長久人氏は、市場環境を踏まえての同社のEC事業の取り組みについて語った。

末長氏は人口減少や競合の増加などで、事業を取り巻くビジネス環境は年々厳しさを増していると分析。「ECモールで継続的に売上を伸ばすためには、モールごとの特徴や購入者属性を正しく把握し、その違いを考慮して適切な手を打つことが重要」だと強調する。

ファンケルがECモールで売上を伸ばす、顧客数を増やすために注力したことは、《売り場の拡張》《広告の強化》《情報開発(サムネイル・商品ページなど)の強化》の3つだ。

ファンケルは2010年のYahoo!ショッピングを皮切りにLOHACO(2013年)、楽天市場、Amazon(各2016年)、au PAY マーケット(2019年)など、直営通販以外の主要ECモールへの出店を加速させてきた。末長氏は「多店舗展開で顧客との接点を増やし、各モールでの施策の成否をノウハウとして蓄積できました」と、売り場拡張の狙いを明かした。

広告に関しては施策のスピード感を重視し、2022年4月からYahoo!ショッピングの広告業務を内製化。「現在は複数モールで業務の内製化ができており、メンバースキルが大きく向上するというメリットがありました」

株式会社ファンケル 通販営業本部 販売推進部 部長 末長久人氏

また、情報開発の強化については顧客に選ばれ、商品を購入してもらうための動線づくりを意識したそう。「ネット上に優良資産を蓄積していくイメージ。サムネイルや商品ページは常に改善していますし、ひとつのクリエイティブを他のモールでも転用できるような設計にしています」

これらの取り組みの結果、ファンケルのECモールでの売上は、直近7年で10倍に。特に2022年から2024年の成長率は+38%で、通販市場全体のそれを大きく上回った。

「当社は直販通販のノウハウと、複数モール運営で得た知見を活かし、今もこうして成長が続けられています。今後もビジネス環境が大きく変化しても、顧客一人ひとりに真摯に向き合う姿勢は変わりません。市場の変化をしっかりと見極めながら、持続的な成長に取り組んでいきたいと考えています」(以上、発言は末長氏)

”勝ちパターン”を見つけ、リピーターを獲得する

続いては楽天市場、Yahoo!ショッピング、au PAY マーケットなどで数多くの受賞歴を持つ酒類・飲料・食料品販売の「リカーBOSS」を運営する株式会社モリフジの梶沢佳孝副社長が、『小売商材でも勝ち抜くECモール戦略とリピーター獲得の極意』をテーマに登壇。富山県高岡市に本社を構える同社が、いわゆる型番商品でどのようにファンを増やしてきたか、そのノウハウを明かした。

梶沢氏は同社が扱う酒類やソフトドリンクカテゴリーのECで勝ち残るためのポイントは、「品揃え」「価格」「配送(料金・スピード)」だと強調する。

「当社では各カテゴリー、メーカーの売れ筋はもちろん、季節限定品やリアル店舗で棚落ちした商品も積極的に扱い、品揃えを強化しています。仕入れに連動する形で価格でも優位性が保てるよう、取引先と良い関係を築いてきました。また、ラストワンマイル以外の物流業務を内製化し、卸企業の協力も仰ぎながらスピード配送に対応しています」

株式会社モリフジ 代表取締役副社長 梶沢佳孝氏

さらに、梶沢氏はECモールで売上を伸ばすために取り組んでいる、品揃え・価格調査・店舗構築・集客での“勝ちパターン”を紹介した。特に型番商品を扱う上では、各モールの担当者やメーカー、卸企業などといかに関係性を築けるかがポイントだという。

「楽天市場などの『店舗型』のモールでは、定期的に各モールの担当者と、売上はもちろん、セール日程の確認や新規・既存顧客の比率、商品別の昨年対比・前月対比などの数字を振り返る機会を設けています。担当者が本気になってくれれば鮮度の良い情報が得られますし、さまざまな手を打つためにも重要視しています」

店舗構築やロジスティクスにおいても同じことが言える。

「利益率の低い型番商品で戦うには、パートナーの協力が欠かせません。例えばメーカー様と一緒にバナー広告を作成したり、自前の物流センターに卸企業様にご入居いただいたりすることで、連係を強化しています」

また、メルマガ配信やLINEの活用、クーポン配布などのリピーター獲得施策については、実例を交えながら施策を打つタイミングにも言及した。

「モールは月初の立ち上がりを重視することが多く、そのタイミングで状況に応じた施策を検討します。メルマガなどは配信先をセグメントすればコストを抑えられるので、その分を効果が出やすいクーポン施策に回すといった工夫もしています」(以上、発言は梶沢氏)

売上を5年で約30倍にしたJBLのモール✕直販戦略

売上を5年で約30倍にしたJBLのモール✕直販戦略ハーマンインターナショナル株式会社 コンシューマオーディオ ヘッドオブEコマース 田野勉氏

セミナーの最後に登壇したのは、音響機器ブランド「JBL」などを展開する世界的オーディオメーカー、ハーマンインターナショナル株式会社の田野勉氏。2019年に自社ECを立ち上げた後、楽天市場やYahoo!ショッピング、Amazonに公式ストアを開設。直販ECにおける売上を5年で約30倍にしたノウハウを紹介した。

自社ECについては、「ブランド価値を毀損しない運用が重要」と田野氏は言う。

「ブランドサイトでは一切値引きをしておらず、製品を長く使っていただくためのアクセサリー品や、ここでしか買えない限定商品といったアイテムの販売を強化しています。また、サイト内にBtoB専用のお問い合わせ窓口を設けたことで、いくつかの大きなコラボレーションがここから生まれました」

ECモールでは、価格面で家電量販店と共存しながら売上を伸ばすために、自社ブランドのSWOT分析を実施したそう。それをもとに最新機能を搭載したEC限定モデルを発売したところ、EC売上の8割を占める人気シリーズに成長したという。

「商品コンセプトにマッチしたインフルエンサーやメディアを選定してPRしたり、日本のユーザーが好む仕様のリッチコンテンツを作成したりして興味の喚起につなげました。また、コンバージョンを上げるためにランキング上位を目指し、レビューの蓄積にも注力しています」

また、具体例を提示しながらデータの活用方法を解説。田野氏は「直販ECの利点はメールアドレスや年齢、性別といった顧客データを得られること。そうしたデータを分析して販売および広告戦略を立て、施策に活かすことができます」と、セミナーを締めくくった。(以上、発言は田野氏)

交流会で新たな出会いも

セミナー終了後には「ソリューションピッチ」が行われ、LISUTO株式会社、かっこ株式会社、株式会社元希、株式会社スクロール360、株式会社ベビーカレンダー、GMOサイバーセキュリティbyイエラエ株式会社、FORCE-R株式会社、株式会社CARTA COMMUNICATIONS(現・株式会社CARTA ZERO)、株式会社ギャプライズ、株式会社キャプサーが登壇。自社製品やサービスを紹介した。

全10社によるソリューションピッチ

ピッチ後には同会場で交流会へ。自由に情報を交換しつつ、リラックスした雰囲気の中でイベントは幕を閉じた。

次回は「長期的に選ばれるECの作り方 ~CRM・CX・ファン化戦略大公開~」をテーマに2025年7月29日に開催される。

次回、CRM・CX・ファン化戦略をテーマに7/29(火)に開催

次回、CRM・CX・ファン化戦略をテーマに7/29(火)に開催

次回のECのミカタ カンファレンスは、CRM・CX・ファン化戦略をテーマに7/29(火)に開催。中川政七商店、カンロなど、業界注目のEC企業の具体的なCRM・ファン化戦略を直接学べる機会となっています。
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