楽天グループが「ふるさと納税へのポイント付与禁止の無効」を求めて行政訴訟
(左から)楽天グループ株式会社 執行役員 渉外統括部 ディレクター 関聡司氏、同 代表取締役 副社長執行役員 百野研太郎氏、同 専務執行役員 コマース&マーケティングカンパニー プレジデント 松村亮氏
2025年7月10日、楽天グループ株式会社(以下、楽天)が、ポータルサイトにおけるふるさと納税へのポイント付与を禁止する総務省告示(以下、本告示)(※1)をめぐる行政訴訟等を東京地方裁判所に提起した。2025年10月から適用予定とされている本告示に対して、2015年以来約500万人の寄付者を集めてきた楽天は、本告示の無効確認を求めている。
訴訟を発表した「楽天の地域創生への取り組みおよびふるさと納税へのポイント付与禁止に関する対応方針についての記者会見」には楽天グループ株式会社 代表取締役 副社長執行役員 百野研太郎氏、同 専務執行役員 コマース&マーケティングカンパニー プレジデント 松村亮氏、同 執行役員 渉外統括部 ディレクター 関聡司氏が出席し、訴訟に踏み切った背景などを説明した。
約1年間の反対の活動を経て行政訴訟に踏み切る
争点となる告示の見直しは「寄附者に対しポイント等を付与するポータルサイト等を通じた寄附募集を禁止」で、総務省は2024年6月28日に発表した本告示で「ポータルサイト等による寄附に伴うポイント付与に係る競争が過熱」などをポイント付与禁止の理由として挙げている。
楽天では2025年3月18日、これに反対する295万2819件の署名を石破茂内閣総理大臣に提出したが、その後も告示の撤回や条件の緩和などは行われておらず、「憲法22条1項が定める営業の自由を過剰に規制する」、「法令による具体的根拠がない」、「総務大臣の裁量権の逸脱」の3点を主な論拠として今回の訴訟に踏み切った。
画像出典:記者会見より(楽天グループ株式会社)
記者会見で楽天は以下のように述べ、本告示の無効を訴えた。
・ポイント付与競争の過熱化がもしあったとしても、付与上限を設ければ十分であり一律に全面禁止する必要性はない
・ポイント付与規制は、営業の自由に由来するポータルサイト事業者の運営方法を過剰に規制するものである
・国会で法令改正の議論なく、告示で禁止が定められている。総務大臣の裁量権の範囲の逸脱であり、違法であることから無効である
地方創生への貢献
会見では百野氏が「現政権の重要課題である地方創生に貢献してきた」と述べ、松村氏は全国55の自治体と連携協定を結んでいることや、地域とともに行ってきた取り組み・支援の実績などを挙げた。
また楽天では、ふるさと納税についてはポイント原資の負担を自治体に求めていないことにも言及。寄付金の使途がわかるドキュメンタリーの制作や、クラウドファンディングもふるさと納税の発展に貢献してきたと語る。
画像出典:記者会見より(楽天グループ株式会社)
関氏は本告示に対して「自治体と民間の連携体制の否定、地域の自立的努力の否定、地方の活性化という政府の方針との矛盾」と述べ、石破政権が掲げる「地方創生2.0」達成に必要な「ヒト・モノ・金・情報」の流れを作るエコシステムがこのままでは成長しなくなるとした。
記者からの質問に対して百野氏は「この10年間でインフラになっているポイントを、法改正を経ずに禁止することはおかしいと思う。楽天は地方創生のためにコミットしてきた」と述べ、関氏は「勝訴に向けて全力を尽くす」とコメントした。
ふるさと納税制度は、返礼品をめぐる自治体や関係事業者と政府の「いたちごっこ」のような状態が続いてきた。今後も訴訟の経緯を注視していきたい。