地域活性化支援を掲げる「Amazonふるさと納税」、開始9か月の歩みと進化
アマゾンジャパン合同会社は2024年12月19日、都市部を含む日本全国の地域の活性化や中小企業支援を目指した新サービス「Amazonふるさと納税」をスタートさせた。サービスを開始してから9カ月が経過した今、そのサービスはどこまで定着し、どのように進化しているのか。9月5日に開催されたプレス向け説明会で、その詳細が明らかにされた。
Amazonふるさと納税の3つの特徴
「Amazonふるさと納税」は、Amazonサイト上で、ふるさと納税の寄付ができるサービス。すでに持っているアカウントを通じて、いつもの買い物と同じ仕様で寄付をすることができ、より便利に、より気軽にふるさと納税を通じた地域貢献を行うことができる仕組みだという。
「Amazonだからこそできる方法で、日本のふるさと納税を盛り上げていきたい」と語るアマゾンジャパン合同会社 セラーサービス事業本部 地方創生・ふるさと事業部 事業部長 田中彩音氏
2025年9月5日に行われたメディア説明会に登壇したアマゾンジャパン合同会社 セラーサービス事業本部 地方創生・ふるさと事業部 事業部長 田中彩音氏は「Amazonふるさと納税は、寄付者と自治体が協力し、地域の活性化を目指すというふるさと納税の精神に深く共感し、自社のテクノロジーや物流ネットワークを活用することで、地域経済をさらに盛り上げることを目指してスタートしました」とその背景を語った。そんなAmazonふるさと納税の特徴は、大きく3つ。
1. 使い慣れたAmazonで寄付できる利便性
最も大きな特徴は「使い慣れたAmazonで寄付ができる」という点にある。寄付者は普段利用しているアカウントを通じて、日常の買い物と同じ感覚で気軽に寄付を行うことができるので、ふるさと納税を「特別な手続き」ではなく「日常の延長」として体験できる。またふるさと納税を実施している自治体にとっても、Amazonという巨大なプラットフォームを通じ、多くの利用者に地域の魅力を発信できるのは大きな利点。
2. 返礼品は、最短で翌日配送
ふるさと納税の返礼品は従来、手元に届くまで数週間から数カ月かかることが一般的。しかしAmazonふるさと納税では「フルフィルメント by Amazon(FBA)」と呼ばれる物流サービスを活用。全国25以上のフルフィルメントセンターと65以上のデリバリーステーションを駆使し、商品を保管・管理・配送まで一貫して担うことで、数千点に及ぶ返礼品を最短で翌日に届ける仕組みを実現している。「ふるさと納税は届くまでに時間がかかる」というイメージが定着しているため、「翌日に返礼品が届く」という体験は大きな驚きであり、従来のふるさと納税に抱いていた不便さを解消する画期的なサービスとして受け止められているという。
3. Amazon限定返礼品
3つ目の特徴は「Amazon限定返礼品」の存在である。自治体と協力し、Amazonでしか手に入らないオリジナル返礼品を開発している。たとえば長崎県波佐見町では、伝統工芸である波佐見焼を活かし、スマイルマーク入りのマグカップを限定商品として展開した。これにより地域の魅力を新たな形で寄付者に伝えることができる。
Amazonふるさと納税の利点は「利便性」「配送の速さ」「オリジナルの返礼品」
Amazonふるさと納税で人気の返礼品は
開始から約9か月間で参加自治体が200以上増加している
サービス開始時、参加自治体は約1000前後だったが、9カ月間で1200以上に増加。返礼品の数は約30万点にのぼり、最短翌日配送に対応する返礼品は数千点にのぼっている。ではそんなAmazonふるさと納税で人気を集めているのはどんな返礼品なのだろうか。
返礼品の上位10品には、お米や肉、海鮮などの定番が並ぶ
上の画像はAmazonふるさと納税で2025年上半期に人気だった上位10品。注目すべきは、トップ10のうち9品が「最短翌日配送」の対象商品である点。利用者がいかに、配送の速さを求めているかがうかがえる。寄付者からは「従来は数カ月待たされたが、Amazonではすぐに届いて驚いた」との声が寄せられているという。
また自治体からも「翌日配送の商品は寄付が伸びやすい」との評価がある。ランキング1位の山形県尾花沢市の返礼品「はえぬき 無洗米」はその好例。もともと全国的な知名度は低く、2024年に総務省が発表した年間の自治体別寄付額では上位100位に届いていなかったが、(春夏の米不足の影響もあるだろうが)Amazonが魅力を広く紹介するきっかけとなった。また1位と2位の返礼品はAmazon限定品であり、新たな付加価値が寄付の動機を強めていることもわかる。
UIの進化で、便利さ、手軽さが加速
9カ月間でUI(ユーザーインターフェイス)も向上。例えば商品ページに「ふるさと納税」ボタンが追加され、普段の買物中に自然に「寄付」を選択できるようになった。「この『ふるさと納税ボタン』により、『買おうと思っていたけれども、寄付でもいいかもしれない』と思う方もいらっしゃるかもしれません。これまでふるさと納税を検討してこなかったお客様にも、自然な形で返礼品をご紹介できるきっかけとなっています」(田中氏)
右下にある「ふるさと納税」ボタンを押すことで、普段の買物中でも「寄付」をできる
寄付者の利便性向上を目的に、確定申告で便利な寄付証明書のエクセル出力、カテゴリー別ランキング表示、新着返礼品ページ、寄付額や内容量などでフィルタリングできる機能など、多数の機能が実装された
「Amazonふるさとツナグ」とは
Amazonふるさと納税の大きなアップデートの一つが、販売事業者が自社商品を返礼品として提供する手続きを簡略化するプログラム「Amazonふるさとツナグ」のスタートである。
自治体は返礼品を増やすために個々の事業者との相談の手間、事業者は申し込み手続きや管理の煩雑さが参入のハードルとなっている
Amazonふるさとツナグは、販売事業者が商品情報をAmazonに提出し、Amazonがまとめて自治体に提示する仕組み。自治体が採用可否を判断し、総務省の承認を得た上で返礼品として出品する。さらに、出品後の管理もFBAを活用するため、返礼品のための特別在庫管理や配送業務の手間はほぼ不要となる。
Amazonふるさとツナグは、販売事業者が商品情報をAmazonに提出し、Amazonがまとめて自治体に提示する仕組み
寄付者と自治体をつなぐイベント「Amazonふるさとまつり」
北は北海道上士幌町から、南は熊本県水上村まで14の自治体が参加。特産品の試食や試飲で盛り上がっていた
説明会が行われた9月5日から7日までの3日間、東京ミッドタウンのキャノピー・スクエアでは、日本各地から14の自治体が参加する「Amazonふるさとまつり」が開催された。同イベントは、インターネット上の寄付ではなかなか触れ合う機会がない寄付者と自治体が直接触れ合うために、Amazonが企画したリアルイベント。特産品の試食や試飲ができるブースには、多くの人が興味深げに集まっていた。
返礼品が最短翌日に届くAmazonふるさと納税のスピード感を疑似体験できるアトラクション「スマイルキャッチャー」