「友だち以外」にも届く! LINE通知メッセージがECの“神ツール”に【LINEヤフー担当者インタビュー】

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大矢根 翼

EC事業者が抱える「お客様に大切な通知を確実に届けたい」という悩み。メールでは埋もれ、SMSではコストがかさむ…。この課題を解決する一手として注目されるのが、LINEヤフー株式会社(以下、LINEヤフー)の「LINE通知メッセージ」だ。

2025年6月、同サービスがテンプレートの大幅拡充や導入プロセスの簡略化といった大規模リニューアルを実施。EC事業者はこれまで以上にスピーディーかつ効果的に、顧客のLINEへ直接メッセージを届けられるようになった。

単なる通知ツールにとどまらない機能はECの顧客体験とマーケティングをどう変えるのか。LINEヤフーで本サービスを担当する中村宗樹氏と澤田康之氏に、リニューアルの全貌から具体的な活用法までを聞いた。

導入期間が数カ月→最短即日に。テンプレート拡充で何が変わるのか

「LINE通知メッセージ」は、事業者がLINE公式アカウントを友だち追加していないユーザーにも、電話番号を基にプッシュ通知を送信できるサービスだ。荷物の配送予定といった重要なメッセージが、ユーザーにとって最も身近なアプリの一つ(※)であるLINEに届く利便性から、さまざまな業種で活用が広がっている。

利用企業の中でもEC事業者の割合は、配送業者やインフラ事業者に次いで3位を占めている。中村氏は『注文受付』や『発送完了』など、顧客体験における重要なタイミングで通知を送れるため、ECとの相性は抜群です。お客様は、購入した商品が今どうなっているのかをリアルタイムで実感できるようになります」と語る。

従来、事業者は「LINE通知メッセージ(フレキシブル)」という自由書式でメッセージを作成し、都度LINEヤフーの審査を経て送信していた。今回のリニューアルで「LINE通知メッセージ」は、22パターンの「フレキシブル」から一挙に87パターンの「テンプレート」(2025年9月3日時点)へと増強された。

これまでの「フレキシブル」では、メッセージごとの厳格な審査に1~2カ月を要することも珍しくなく、これが導入のボトルネックになっていた。中村氏は「エンドユーザーの電話番号を利用するため厳格な審査は不可欠ですが、スピーディーな活用を望む事業者の需要に応えきれていない側面がありました」と説明する。

この課題を解消すべく、今回のリニューアルで「テンプレート」活用を前提とした新たなAPI(Application Programming Interface)「LINE通知メッセージ(テンプレート)」が提供された。これによりLINEヤフーへの審査申請プロセスが不要となり、送信までのリードタイムが大幅に短縮されたのだ。

この変化について、澤田氏は「事業者様はテンプレートやテンプレートに掲載する項目(配送日時、搭乗口など)を選ぶだけで済むため、メッセージを検討・作成する工数を削減できます。エンドユーザーにとっても、通知のデザインが統一されてわかりやすくなりました」と、双方のメリットを語る。

あわせて、これまで従量課金制だった料金システムは、送信通数に応じた3プランの月額制に変更された。

※LINEアプリの国内月間利用者数は9900万人を突破している(2025年6月末時点)

画像出典:LINEヤフー株式会社「LINE通知メッセージ」紹介資料

ブロックされない「質の高い」関係が解約防止や継続率向上をもたらす

EC事業者にとって、このサービスの最大の魅力はどこにあるのだろうか。

中村氏は、「LINEの友だち追加をしていないお客様にも通知を届けることができるので、それをきっかけに自然な形で友だち追加を促せます。友だち追加されたあと、ID連携などを促進したり、そこからクーポン配信などのマーケティング施策につなげることが非常に効果的です」と語る。

ユーザーは通知を受け取った後、そのアカウントを友だち追加するかを任意で選べる。重要な通知をきっかけに自主的に友だち追加したユーザーは、その後のブロック率が低いという。

また、テンプレートには契約期間の満了通知などもあるため、サブスクリプション型のEC事業者は顧客の解約防止や継続率向上への貢献も期待できる。

そもそも「LINE通知メッセージ」は、LINEヤフーの認証を受けたLINE公式アカウントしか利用できず、いわゆる「怪しいアカウント」からは届かない。SMSやメールでも同様の通知は可能だが、中村氏はLINEで届くことによる『不審に思われない』安心感と、他の通知に『埋もれない』開封率の高さが大きなメリットです」と優位性を強調する。

LINEヤフー株式会社 CBカンパニー ビジネスPF統括本部 プロダクトマーケティング本部 プロダクトクトマーケティング1部 公式アカウント2チーム リーダー 中村宗樹氏

コスト面では、SMSと比較して一通あたりの単価を抑えられる点も大きな魅力だ。安心感と価格面の優位性から、SMSに代わる通知手段として選ばれるケースが増えていますと中村氏。配信内容についてもLINEヤフーが定期的にモニタリングを行い、ガイドライン違反に対しては速やかに注意や勧告を行う体制が整備されている。

セキュリティ面について、澤田氏は「事業者様が宛先とする電話番号は、事業者様側でハッシュ化した上でメッセージと共に送信され、LINEヤフー側では照合後に即時破棄するため蓄積することはありません。テンプレートにも個人を特定できる項目は含めず、定期的に送信前に電話番号の確認を行い、古い電話番号に誤送信されないようにする仕組みも備えています」と、万全の体制を説明する。

LINEヤフー株式会社 CBカンパニー ビジネスPF統括本部 ビジネスPF企画本部 企画1部 企画2チーム 澤田康之氏

ECの顧客体験を深化させるLINE活用法

LINEヤフーは今後、テンプレートをさらに100種類以上へと拡充し、より多くの業種で「LINE通知メッセージ」が活用される未来を目指しています。中村氏は「メールやSMSでの通知が“当たり前”だった常識を、LINEで書き換えていきたい」と力強く語る。

将来的には、単なる通知(OA:オフィスオートメーション)にとどまらず、マーケティング活用との連携をさらに強化していく方針だ。

「まずはこのサービスで、お使いのLINE公式アカウントを、よりエンドユーザーに身近な存在にするとともに、友だち追加を拡大するための強力な入り口として活用いただき、友だちになったお客様にはステップ配信などを組み合わせて本格的なマーケティングを展開する。そうした活用法を積極的に提案していきたいです」(中村氏)

画像出典:LINEヤフー株式会社「LINE通知メッセージ」紹介資料

「LINEログイン」機能などとユーザーIDを連携させれば、顧客一人ひとりに最適化された1to1配信も容易になる。「LINE通知メッセージ」をきっかけにつながり、その後のマーケティング施策を組み合わせるハイブリッド活用が、今後のECの顧客コミュニケーションの鍵となりそうだ。

現時点(2025年9月)で「LINE通知メッセージ」はエンタープライズ向けのサービスが中心だが、中村氏は「中小事業者様向けに、より導入しやすいプランの提供も検討していきたい」と今後の展望を語る。

LINEヤフーが築き上げた「信頼」を基盤とするこの通知機能は、EC事業者にとって、新規・既存を問わず顧客との継続的な関係を構築し、購買へとつなげるための新たな“武器”となる。広告やスパムまがいの情報に辟易している現代の消費者にとって、本当に必要な情報を起点としたコミュニケーションは、顧客の心に響くマーケティング手法になるだろう。


記者プロフィール

大矢根 翼

2018年法政大学卒業後、自動車部品メーカーに就職。
ブログ趣味が高じてライターに転身し、モータースポーツメディア『&Race』を副編集長として運営。
オウンドメディアの運営、記事制作など、複数ジャンルで記事制作をメインに活動している。

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