「and ST」、プラットフォームのオープン化でファッション業界が“共創する未来”目指す
               株式会社アンドエスティHD 代表取締役社長、株式会社アンドエスティ 代表取締役社長CEO 木村治氏
              
              株式会社アンドエスティHD 代表取締役社長、株式会社アンドエスティ 代表取締役社長CEO 木村治氏
            
2025年10月15日、株式会社アンドエスティは「『and ST』VISION CONFERENCE 2025」を開催し、WEBストア「and ST」を提供するプラットフォーマーとしての進化や今後の施策・展望を発表した。「and ST」はプラットフォームのオープン化を進めており、この日は新たに出店した株式会社ニューバランスジャパン、株式会社ユナイテッドアローズ、株式会社ジュン、株式会社ICLの4社も登壇し、参画の背景や“共創”への期待を語った。
新たな共創モデルを生み出すためにプラットフォームをオープン化
イベントの冒頭、株式会社アンドエスティ 代表取締役社長 CEO 木村治氏は、アンドエスティHDグループとして「Play fashion!」を掲げ、ユーザーのライフスタイルを彩る事業展開を進めていく方針を示した。
アンドエスティHDグループは2025年2月期において、グループ売上高2931億円を達成し、国内アパレル業界第3位となっている(同社発表より)。2030年には連結売上高4000億円、プラットフォーム事業流通総額1000億円を目指す中期経営計画を掲げており、木村氏は「2025年2月期の流通総額は403億円でしたが、1000億円を達成するには、私たちだけでなく『and ST』に魅力を感じてくれる仲間を増やすことが必要になります」と、プラットフォームのオープン化を進める背景を語った。
 「『and ST』VISION CONFERENCE 2025」発表資料より
「『and ST』VISION CONFERENCE 2025」発表資料より 
新たに参画したユナイテッドアローズ(BEAUTY&YOUTH UNITED ARROWS《ビューティー&ユース ユナイテッドアローズ》)をはじめ、一見すると競合とも捉えられるブランドの出店となるが、「and ST」では「ファッション業界をコネクトする 競争を超えて、共創する未来へ」というキーワードを定めており、横のつながりによる相乗効果を期待している。
「私たちが業界内外のいろいろなブランドをつなぐことで、新しい共創モデルを作れると確信しています。アパレルだけでなく、コスメやフード、カルチャーなどの異なるカテゴリーを融合させ、1社だけでは作れない価値観や体験価値をお客様へ提供します」(木村氏)
これらのブランドの出店に至るまでには木村氏自身がトップ営業に動き、「and ST」が目指す“共創”の世界に共感した企業の参画が続々と決まったという。
会員数2000万人超 実店舗展開、“トリプルポイント”や新サービスも
続いて株式会社アンドエスティ 取締役の3人から、それぞれ「and ST」の事業戦略について話された。
取締役 COOの櫻井裕也氏は「2025年上期の『and ST』における流通総額は223億円で前期比115.5%と順調に推移しています。しかし、私たちが最も大切にしているのはお客様です。『and ST』の会員数は2070万人まで増えており、まもなく2100万人に到達します。過去1年間に購入のあるお客様(アクティブ会員数)も700万人を超え、規模は拡大を続けています」と、直近の実績を発表した。
 「『and ST』VISION CONFERENCE 2025」発表資料より
「『and ST』VISION CONFERENCE 2025」発表資料より 
順調に拡大を続けている「and ST」だが、事業規模を大きくすることのみを目指しているのではない。同社では“お客様に対してワクワクするようなサービスを提供すること”を本質と捉えて、さまざまな施策を講じている。
取締役 CBO 小林千晃氏からは、2025年4月に原宿にオープンしたフラッグシップストア「and ST TOKYO」の集客数が計画以上の数字を示していることや、店舗で実施したさまざまなコラボレーション企画などについて語られた。
取締役 CSO 田淵淳也氏は、「and ST」のサービス拡充について発表。具体的には、and STポイントとdポイント、楽天ポイントが同時に貯まっていく“トリプルポイント”の実現や(※1)、「みんなの銀行」and ST支店のオープン(※2)、自社クレジットカードの「and ST CARD」の発行(2025年12月1日にカード発行、利用開始予定)などが展開される。また、「and ST」のアプリも買い物する際だけに使うのではなく、エンタメ化を進め、毎日訪れたくなるような場にすることも目指すとした。
 写真左から、アンドエスティの小林千晃氏、櫻井裕也氏、田淵淳也氏
写真左から、アンドエスティの小林千晃氏、櫻井裕也氏、田淵淳也氏 
複数のブランドが生み出す相乗効果で“ワクワクする場”を提供
この日は、新たに「and ST」へ出店する4社も登壇し、木村氏・田淵氏とともにトークセッションが行われた。
株式会社ユナイテッドアローズは、中期経営計画において「感動提供 お客様と深く広く繋がる」 を掲げている。同社 OMO本部 本部長 岩井一紘氏は「当社もアンドエスティさんと同じように、お客様が第一優先だと考えています。お客様の視点に立った時に、私たちが共創することで新しい価値提供や感動提供ができる可能性を大いに秘めていると感じました。リアル店舗とECといったチャネルの横断をスムーズにすることの重要性が増している中、アンドエスティさんが持つ1400店舗以上の価値や2000万人以上の会員基盤の魅力は計り知れません」と語った。
なお「and ST」では、このカンファレンスと同日の10月15日に「BEAUTY&YOUTH UNITED ARROWS」がオープンしており、初日から「and ST」のSTAFF BOARDで同ブランドのスタッフコーディネートが見られるように整えられた。
 写真左から、株式会社ジュン 専務取締役 上席執行役員 渡辺明利氏、株式会社ICL アフタヌーンティー・リビング Div. ECディレクター 岡本昌和氏、株式会社ユナイテッドアローズ OMO本部 本部長 岩井一紘氏、株式会社ニューバランスジャパン 常務取締役 営業本部長 江川英孝氏
写真左から、株式会社ジュン 専務取締役 上席執行役員 渡辺明利氏、株式会社ICL アフタヌーンティー・リビング Div. ECディレクター 岡本昌和氏、株式会社ユナイテッドアローズ OMO本部 本部長 岩井一紘氏、株式会社ニューバランスジャパン 常務取締役 営業本部長 江川英孝氏 
株式会社ICLの岡本昌和氏は、「Afternoon Tea LIVING」が「and ST」に出店することを決めた背景や想いについて、「会員数の多さはもちろん、アンドエスティさんの熱意がお客様に伝わっていることに感銘を受けました。ブランドの価値や理念を理解したアクティブな会員が非常に多く、私たちが参画することで『Afternoon Tea LIVING』の世界観をより多くの人に届けられると確信しています。価格競争にとどまるのではなく、価値を届ける新しいプラットフォームとして、ブランドとお客様をつなぎ続ける場にしたいと思います」と語った。
アンドエスティが掲げる“共創”のビジョンは、多くのブランドの心を動かしており、「ADAM ET ROPÉ」「SALON adam et ropé」「ROPÉ PICNIC」「VIS」「ÉPOR」の5ブランドを「and ST」に出店する株式会社ジュンの渡辺明利氏も「『and ST』に集まった各ブランドが、ファッションの力で世の中をワクワク、そして前向きにしたいという思いで共鳴しています」と語る。
特にフレンチカジュアルやきれいめを強みとするジュンと、カジュアルを強みにするアンドエスティでは、テイストや着用シーンなどが異なっており、「Play fashion!」のもと、お互いのブランドの相乗効果は期待する声も大きい。
「これから運営していく中で、お客様がワクワクするような商品開発や、ブランドの垣根を超えたコラボレーション、イベントなどを開催できたら面白いのではと考えています」(渡辺氏)
今年9月に「and ST TOKYO」で期間限定のポップアップストアを開催し、同時期に「and ST」に「New Balance」をオープンした株式会社ニューバランスジャパンでは、「and ST」からのプレゼンテーションを受けて、すぐに出店を決意したという。同社の江川英孝氏は「プラットフォームのオープン化に至るまでの準備や熱意が伝わりましたし、私たちが苦手としているターゲットをカバーしていることに期待感を感じました。お互いに切磋琢磨しながら共創していければと思います」と語った。(※3)
 トークセッションの模様
トークセッションの模様 
お客様を第一に考え、業界全体を盛り上げていきたい
日本の人口減少に伴って、アパレルの国内市場規模も徐々に縮小すると予測されている。アパレルを含めた国内企業が直面するこうした課題に対して、アンドエスティは利益を独占するのではなく、業界利益をシェアしながら、どのようにファッション業界を盛り上げていくのかを大切にしていくという。
木村氏は「他ブランドが参画することで、アンドエスティの売上が下がる可能性もあります。しかし、それよりもECサイトへ来てくださったお客様にどれだけ楽しんでいただくかの方が大切です。その結果、グループ全体の売上や出店されるブランドの売上にも貢献できる仕組みを作っていけると信じています」と、将来を見据えている。
なお、「and ST」における出店企業とのデータ連携基盤には、株式会社ハックルベリーが提供する「CoreLink」が採用されている。ハックルベリー社の発表によれば、これによって出店している他社企業のシステムと商品、在庫、受注データ等を、迅速に変換・連携、「and ST」への掲載、運用が可能になるとのこと。こうしたシステム面でのチャレンジにも合わせて注目しておきたい。


※1 参考記事《アンドエスティ、「and STポイント」「dポイント」「楽天ポイント」の利用が可能に》
※2 参考記事《アンドエスティ、みんなの銀行と協業 パートナー支店「andST支店」を開設》
※3 参考記事《and ST、プラットフォーマーとしての進化目指す ユナイテッドアローズほかが出店》
 
				 
			 
               
     
               
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                     
                    
 
           
           
           
           
      

 
           
           
           
          