「Amazon ブラックフライデー」2025詳細【物価高でも予算増】の消費心理とは? ユーザー調査から読み解く年末商戦3つの勝機

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湯浅 英夫

アマゾンジャパン合同会社は、年末恒例のビッグセール「Amazon ブラックフライデー」を、2025年11月24日から12月1日までの8日間にわたり開催する。今年のテーマは「ほしいが丸ごと、お得に叶う。」。

注目すべきは、初登場となる「体験型商品」の販売と、混雑緩和・継続来訪を狙った「48時間特別企画」の実施だ。また、同社による「年末のお買い物に関する調査」からは、物価高で節約志向が高まる一方で、「ギフト予算は昨年より増加傾向」にあるという、EC事業者にとって見逃せない消費トレンドが明らかになった。本記事ではセールの概要とともに、調査結果から見える年末商戦の攻略ポイントを解説する。

11日間の長期戦! アクセス分散を狙う「48時間企画」

「Amazon ブラックフライデー」は、Amazonが取り扱う幅広いカテゴリーの人気商品を特別価格で販売する年末恒例のビッグセールだ。今年も、家電、ファッション、食料品、日用品など300万点以上が登場する。

開催期間は2025年11月24日(月・休)0時から12月1日(月)23時59分までの8日間。毎年好評の「先行セール」も11月21日(金)0時から11月23日(日)23時59分までの3日間開催され、両方を合わせると実質11日間のロングランセールとなる。

今年の新施策が、11月25日(火)から11月30日(日)までの間に計3回実施される「48時間特別企画」だ。これは人気商品を時間限定・特別価格で販売するもので、これまでのAmazon ブラックフライデーで課題となっていた「セール期間初期のアクセス集中」を分散し、期間中の継続的な来訪(リテンション)を促す狙いがある。価格・品揃えに加え、ユーザーのエンゲージメントを期間中維持させるための戦略的配置といえる。

初登場「体験コレクション」に見る“コト消費”への対応

初登場「体験コレクション」に見る“コト消費”への対応

中でも注目されるのは、初登場の「Amazon ブラックフライデー 体験コレクション」だ。スノーピークの「手ぶらキャンプ体験チケット+Amazon限定ギアセット」(スタンダードとライトの2タイプ)、オルビスの「オルビス ユードットフェイシャルエステ&トリートメントセット」、くら寿司の「食事券と魚介類のセット(くら寿司特製 豪華新春特別セット)」の計4種類で、「体験×商品」をセットにしたチケット販売が行われる。この施策は、後述する消費者調査で明らかになった「体験ギフト」への需要増に応えるものであり、ECにおける「モノ消費」から「コト消費」へのシフトを象徴する動きだ。

このほかポイントアップキャンペーンや「Amazon スタンプラリー」「dポイント スタンプラリー」などが用意されている。「よりお得な」買い物と「楽しさ」を演出し、体験価値やエンゲージメントの強化を図ることでサイト回遊性を高める工夫が凝らされている。

なお、注目のセール商品展示と抽選会などを楽しめるイベント、「Amazon Black Friday Market」が、11月21日から11月23日までの3日間、東京・六本木ヒルズアリーナで開催され、オンラインとオフラインの融合を図っている。

ユーザー調査から浮かび上がる「節約」と「こだわり」の二極化

2025年のブラックフライデーにあたり、アマゾンジャパンは「年末のお買い物に関する調査(※)」の結果を発表した。そこで明かになったのは、「メリハリ消費」の鮮明化だ。

まず、物価高騰により、直近半年〜1年で節約意識が「高まった」「やや高まった」と回答した人は合計で83.1%に上る。具体的に支出を見直した項目は「食料品」(60.3%)、「ファッション・衣類」(47.9%)など、生活に密接した分野が多い。

節約意識が高まる一方で、「節約する場合でも、ブランド、品質、容量などにこだわる」とした回答は、「食料品」が82.9%と最も多く、「趣味用品」「家電・家具など」などでも6~7割が「こだわる」と回答。ECサイトにおいて「お買い得な価格」は重要だが、単なる安売りではなく、「価格に見合った価値」があるかどうかが、購入の決定打となりそうだ。

驚くべきはギフト予算の変化だ。1人あたりのギフト平均予算は1万1102円となり、昨年の9676円から約15%増加した。「昨年より予算が多い」と回答した人は15.3%、「同じくらい」が76.1%で、9割以上の人が予算を減らしていない。物価高であっても、大切な人や自分へのご褒美に対する出費は惜しまないという、強い購買意欲が見て取れる。

また、「お得に購入したいギフト」として、自分へのご褒美ギフトで最も多かったのは「体験(食事・エステなど)」(30.9%)。他人へのギフトでも「体験」が25.2%で上位に入った。前述の「体験コレクション」は、このニーズを的確に捉えた施策といえる。

調査では、年末の買い物に対する懸念点として「安く買える機会を逃す」(34.6%)、「無駄な買い物をしてしまう」(32.9%)といった失敗への不安や、「買い忘れ」「店頭の混雑」「手間」などの利便性に対する課題も挙げられた。

以上を踏まえ、アマゾンジャパンは年末のポイントとして「お買い得」「品揃え」「利便性」の3つを挙げている。

これらはAmazonに限らず、すべてのEC事業者にとっても重要な指針となる。「安さ」だけでなく、消費者の「失敗したくない」という心理に寄り添い、「体験」や「確かな品質」をどう提案できるかが、2025年年末商戦の勝敗を分けることになりそうだ。

※日本全国の20歳~69歳の男女1000名に対するインターネット調査。調査期間は2025年10月23日(木)~10月26日(日)


記者プロフィール

湯浅 英夫

フリーライター。新潟県上越市生まれ。1992年、慶應義塾大学理工学部機械工学科卒。PC、スマートフォン、ネットサービス、デジタルオーディオ機器などIT関連を中心に執筆。主な著書に「挑戦すれば必ずできる 自作パソコン完全組み立てガイド」(技術評論社)、「大きな字だからスグ分かる!エクセル2013入門 Windows 8対応」(マイナビ)、「Excel2000 300の技」(技術評論社)がある。

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