「売上は伸びたのに利益が残らない」を脱却! SBS×コマースロボティクスの「物流を“コスト”から“バリュー”に変える」一手
EC市場の拡大に伴い、販売チャネルの多様化や決済手段の複雑化が加速している。一方で、現場を支える物流領域では「2024年問題」や配送コストの高騰、慢性的な人手不足が深刻化しており、「売上は作れるが、物流コストがかさみ利益が残らない」と感じるEC事業者も少なくない。
そこで、物流業界の雄であるSBSホールディングス株式会社と、テクノロジーでECを支援する株式会社コマースロボティクスがタッグを組み、新たな倉庫管理システム(WMS)「E-flow」を開発した。両社の強みが生む相乗効果や、EC事業者が得られるメリットなどについて、SBSホールディングスの前田晃央氏と丸本光司氏、コマースロボティクスの日朝健一氏と倉澤良太氏に聞いた。
「売れば売るほど大変になる」 多様化に求められる現場の“拡張性”
──EC事業者を取り巻く環境が激変している中、現場ではどのような「物流課題」が顕在化しているのでしょうか。
SBSホールディングス株式会社 Eコマース事業推進部 東日本営業開発課長 前田晃央氏(以下、SBS 前田) 最も大きな変化は、販売チャネルと手法の「多様化」です。かつてはAmazonや楽天市場といった三大モールへの対応が主でしたが、現在はTikTok ShopやQoo10などへも対応を広げなくてはいけません。さらに、決済方法の多様化や、販売手法の複雑化も進んでいます。販路を広げれば広げるほど、システム連携やオペレーションが追いつかなくなり、現場が疲弊しているのが現状です。
株式会社コマースロボティクス 営業部 営業課 課長 倉澤良太氏(以下、コマースロボティクス 倉澤) 販売チャネルと手法の多様化は、現場のミスに直結します。「このチャネルからの注文はAの処理、あちらはBの処理」といった属人的な判断に頼ると、どうしても人的ミスが起きます。誤出荷や再発送といった物流におけるミスは、コスト増だけでなく、顧客の信頼失墜という、取り返しのつかない損失を招きかねません。
(左)SBSホールディングス株式会社 Eコマース事業推進部 東日本営業開発課長 前田晃央氏、(右)同 Eコマース事業推進部 事業企画課 丸本光司氏
──頭では「自動化」や「DX」の必要性を理解しつつも、踏み切れない事業者が多い原因はどこにあるのでしょうか。
SBS 前田 根本的な原因は、事業者サイドの業務が「仕組み化・組織化」されていないことにあります。販売手法や商品管理のルールがあいまいなままでは、それを物流システムに落とし込むことができません。
株式会社コマースロボティクス 営業部 部長 日朝健一氏(以下、コマースロボティクス 日朝) 経営陣の「心理的な葛藤」も大きいですね。「今はなんとか現場が回っているから」と、属人化した状態を維持しようとするバイアスが働きます。新しいシステムへの移行には、一時的なリソース投下や変化へのリスクが伴うため、現状維持を選んでしまうのでしょう。
(左)株式会社コマースロボティクス 営業部 部長 日朝健一氏、(右)同 営業部 営業課 課長 倉澤良太氏
──そうしたボトルネックを解消し、物流を「価値を生むもの」に変えるにはどうすればよいのでしょう。
SBS 前田 システムとオペレーションに「拡張性」を持たせることです。SBSでは、「EC物流お任せくん(※)」のように、お客様のビジネスフェーズや販売戦略に合わせたカスタマイズ機能を重視しています。物価や輸送費が高騰する中でも、物流が足かせにならず、むしろ適正な価格で販売を促進できる基盤を整えることが重要です。
※「EC物流お任せくん」はSBSグループが提供するECプラットフォームサービス。EC物流の全フェーズをワンストップでサポートしている。
「物流のSBS」×「テックのコマースロボティクス」ならではのEC特化型WMS
──今回、EC事業者の物流課題を解決するために、協業して「E-flow」を開発されました。その背景と狙いをお聞かせください。
SBSホールディングス株式会社 Eコマース事業推進部 事業企画課 丸本光司氏(以下、SBS 丸本) 人手不足が進む一方、各事業者はEC需要の増加や多様化へ対応しなければなりません。そのギャップを埋めるには、倉庫内の「搬送ロボット(AGV)」などのハードウェア連携が不可欠です。
とはいえ、それを制御するシステムが使いにくければ意味がありません。高度な物流自動化を実現するために、開発力のあるコマースロボティクス様と「E-flow」を共同開発しました。
SBS 前田 豊富な物流のノウハウを持つSBSが、ECシステムに精通したコマースロボティクス様と組むことで、ハードとソフトの両面から「ECに真に特化したWMS」を作ろうと考えました。
──「E-flow」は、具体的にどのような点がEC事業者のメリットになるのでしょうか。
SBS 丸本 最大の特徴は、特有のスピード感に対応する「柔軟性」です。特に、API連携による複数のモールやカートシステムとの連携の速さは圧倒的です。Amazonや楽天市場といった主要モールはもちろん、TikTok ShopやQoo10など、次々と出てくる新興プラットフォームとも迅速に接続できます。従来2〜3カ月かかっていた連携開発が、早ければその日のうちに、完了します。しかもマニュアルに沿って設定するだけなので、専門的な知識は必要ありません。
さらに、受注データの取り込みから出荷指示までが自動化されるため、担当者がCSVデータを加工するような「名もなき手作業」が不要になり、人的ミスも劇的に削減されます。
販促支援からコスト削減まで「ソフトウェアロボット」が判断・処理を代行
──「E-flow」にはシステム内で受注処理を自動化する「ソフトウェアロボット」機能が搭載されています。具体的な機能について教えてください。
SBS 丸本 例えば「変換ロボット」機能は、ノーコードでのマッピングを実現します。JANコードや商品コードのデータ形式がモールごとに異なっても、WMS側の共通言語に自動変換して取り込みます。従来はこのプログラム改修に数週間かかっていましたが、1日もかからず即座に完了します。
また、配送コストの最適化も自動化できます。例えば、「このエリア、サイズならA社の便」「“お急ぎ”の場合にはB社の便」といった条件を設定すれば、注文ごとに最安・最適な配送方法をシステムが自動選定します。これにより、1出荷あたりの利益率を確実に改善できます。
──販促に直結する「同梱ロボット」についてはいかがでしょう。
コマースロボティクス 倉澤 LTV向上に欠かせない施策も自動化できます。「初回購入者には挨拶状を同封する」「1万円以上購入の方にはノベルティをつける」といった条件をシステムで設定するだけで、出荷指示データに自動反映されます。在庫管理と連動しているため、同梱チラシやノベルティ切れのアラートも出せます。
EC事業者が新規顧客やリピート客を獲得するために同梱物で販促するケースは多いのですが、物流が単なる発送作業ではなくマーケティングの一翼を担うという点が「E-flow」の大きな強みです。
「E-flow」は4つのロボットが、人間が行っている受注処理業務を代行する
──現場作業員にとってうれしい「帳票レイアウトのカスタマイズ」機能もあるそうですね。
コマースロボティクス 日朝 通常、出荷作業には「納品書」「ピッキングリスト」「送り状」「払込用紙」など複数の帳票が必要で、これらを突き合わせる作業がミスの温床になっていました。そこで私たちは、これら全てを「1枚のA3用紙」に一体化して出力する運用を推奨しています。お客様のオペレーションに合わせて帳票レイアウトを柔軟にカスタマイズできる機能は、標準実装のWMSとしては業界でも稀有だと思います。
物流の側面から「売れる仕組み」を共に創るパートナーへ
──「E-flow」は、単なる管理システムを超えて、EC事業者の事業成長を支援するツールと言えそうですね。
SBS 丸本 「ブラックリスト顧客の自動検知」や「高額注文の保留チェック」などの機能も実装し、リスク管理もサポートしています。一度開発した新機能は他の事業者様にも展開できるため、システムは日々進化し続けています。スクラッチ開発のようなコストをかけずに、高機能なシステムを利用できるのはパッケージならではのメリットです。
現在は「複数拠点管理機能」も開発中です。これが実装されれば、注文者の住所に最も近い倉庫から自動出荷することが可能になり、リードタイム短縮と配送コスト削減が同時に実現します。
──今後の展望をお聞かせください。
コマースロボティクス 日朝 変化の激しいEC業界で、新しいシステムへの移行は勇気がいることかもしれません。しかし、私たちは導入から運用まで伴走してサポートします。ぜひ「E-flow」で自動化への一歩を踏み出し、共に事業を成長させていきましょう。
SBS 前田 私たちは単なる「荷物を運ぶ物流会社」ではなく、お客様の売上と利益を最大化するパートナーでありたいと考えています。「売りたい時に、売りたい物を、売りたい方法で売る」。そんな商売の本質を、物流の制約なしに実現できるよう、「E-flow」と共に進化し続けます。


