BOPIS(ECサイト注文・店舗受け取り)のメリットと国内外の現状

國村 太亮

コロナ禍が世界を覆った2020年以降、ECサイトと実店舗を新たな形でつなぐサービスとして、世界中で注目を集めている「BOPIS(ボピス)」。今回はそのメリットや、普及の進む米国小売業界のトレンド、日本の現状などについて紹介したいと思います。

BOPISとは? またそのメリットとは?

近年、海外で急速に普及しているBOPISですが、日本ではまだあまりなじみのない用語ですので、まずはその概要から説明しましょう。

BOPISとは、「Buy Online, Pickup in Store」の略で、読んで字のごとく、オンラインで事前に注文・決済した商品を実店舗で受け取る仕組みのことです。このサービスが米国を中心に各国で一気に広まったのは、特に現在のコロナ禍のような状況において、事業者・顧客双方に多大なメリットをもたらすものだからです。

まず、事業者側のメリットとして大きいのは、商品を受け取るために実店舗を訪れた顧客の多くが、いわゆる「ついで買い」をしてくれるという点です。米メディアBusiness Insiderの2019年の調査(註1)では、BOPISを利用した顧客の実に85%が、商品の受け取りの際に店内で別の商品を追加購入したと答えています。コロナ禍で実店舗の利用が制限あるいは敬遠される中、そうした「ついで買い」が高い頻度で発生するというのは、小売業者にとって非常に魅力的な効果でしょう。

そのほかにも、決済がオンラインで完了しているため、レジや接客など、店舗の人員を減らすことができる点や、在庫の回転率が上がり、実店舗で余分な在庫を抱えずに済むようになる点など、コスト削減や業務効率化、感染症対策といった面でさまざまな利点があります。

一方、顧客側の一番のメリットとして挙げられるのは、やはりECなのに配送料がかからないこと、それから、自宅で配送を待つ必要がなく、都合のいいタイミングで商品を受け取れることでしょう。実店舗への滞在時間は極力短くして感染リスクを抑え、逆に商品選びや支払いに関しては、通常のECサイトと同様、自宅でゆっくり行う。そのような形で買い物を楽しめる、まさにウィズコロナ時代にぴったりなシステムであり、だからこそ世界中で利用が拡大しているのです。

米国小売業界のトレンド

では、BOPISがもっとも普及している米国において、今、小売業の潮流はどうなっているのでしょうか。米経済誌Forbesの2021年の記事(註2)を参照しながら紹介します。

同記事でまず取り上げられているトレンドは、先に述べた通り、新型コロナウイルスの感染拡大によって、小売業者の多くがBOPISおよびカーブサイドピックアップのサービスの提供を開始または強化し、利用が急拡大しているということです。カーブサイドピックアップというのは日本では耳慣れない言葉ですが、オンラインで注文した商品を実店舗の駐車場で受け取るという、BOPISの一形態といえるサービスです。

次に挙げられているのは、小売業界の一部の企業が、パンデミックの影響によるECの成長を受けて、実店舗を「ミニフルフィルメントセンター」に変え、新たな流通ネットワークを構築し始めた、という流れです。ECにおいて、受注から梱包、配送業者への受け渡しまでの一連の工程をフルフィルメントと呼びますが、通常、その業務を担うのは倉庫です。しかし、コロナ禍によって、倉庫はECサイトに殺到する注文に対応しきれなくなり、逆に実店舗は暇を持て余している。そこで、実店舗のリソースをフルフィルメントの業務に当てようというわけです。BOPISとはまた少し違う発想の、非常におもしろい取り組みだと思います。

そのように米国では、ECサイト・実店舗の役割から流通の仕組みまでを抜本的に見直し、コロナ禍に対応しようとする動きが活発化しています。ただ、その一方で、テクノロジーを利用し、顧客が安心して実店舗を利用できるようにする、つまりコロナ禍以前に近い状態を取り戻そうとする取り組みが依然として多いことについても、同記事では触れられています。AI搭載のカメラやセンサーで実店舗内外のソーシャルディスタンスを管理したり、非接触型決済を導入して接触を最小限に抑えたりするなど、実店舗の感染症対策がいまだ最優先事項であることは、米国でも日本と大きな違いはないようです。

日本におけるBOPIS成功事例

翻って日本の現状に目を向けると、BOPISによって成果を上げる企業の事例が徐々に出始めています。中でも、2020年10月にECサイトを立ち上げた衣料品チェーン大手のしまむらグループの取り組みは、BOPISの成功例として大きな注目を集めています。

同グループの2021年2月期決算及び中期経営計画説明会資料(註3)によると、2020年度のEC事業の売上高は17億円。同グループのECサイトでは、商品の受け取り場所として実店舗と自宅のどちらかを選択できますが、特筆すべきは、顧客全体の約9割が実店舗での受け取りを希望しているという点です。これについて同グループは、「当初の想定よりも高く、オンラインストアと実店舗との相互送客に大きな効果を発揮しています」と述べています。

また同グループは、2021年2月期決算説明会質疑応答要旨(註4)の中で、実店舗受け取りの具体的な効果について言及しています。それによると、通常の実店舗では、買上点数が約3点、1点単価が約900円、客単価が約2,700円。それに対し、ECサイトの実店舗受け取り、つまりBOPISの場合、ECサイト注文分は約1.5点と、実店舗で普通に購入する場合の半分ですが、それに実店舗での受け取り時の買上約3点が加わり、合計で買上点数約4.5点、客単価約4,800円となったとのこと。事業者側にとってのBOPIS最大のメリットである「ついで買い」の誘発によって、客単価が2倍近くにまで跳ね上がったわけです。これを受けて同グループは、「ECから店舗への送客による買上点数向上が店舗売上の向上に寄与する可能性が高い」とし、最終的にはEC事業の売上を250億円まで伸ばすと意気込んでいます。

もちろんこの成果の背景には、ECサイトで買ってもできれば試着したいという顧客のニーズがあること、つまりもともと衣料品という商材がBOPISと親和性が高いことや、ECサイトの自宅受け取りを希望した場合、あえて全国一律550円(税込)の送料を顧客に負担させ、店舗受け取りに誘導する戦略を取っていることなど、同グループ特有の事情や工夫もあります。ただ、BOPISの高い潜在力を示すものであるのは間違いなく、実際、同社以外にも日本におけるBOPISの成功事例は着実に増えてきているのです。

BOPIS実現を支援するセールスフォース・ドットコムのソリューション

とはいえ、海外と比較したとき、日本におけるBOPISの普及はまだまだ遅れているのが実情です。BOPIS導入の阻害要因は、大別してふたつあると考えられます。ひとつは、BOPIS導入にあたって、実店舗・倉庫双方の在庫管理システムやECサイトの受注システム、基幹システムといった各種システムの開発・連携が不可欠であること。DXの遅れが指摘されている日本の多くの企業にとって、そうした大規模なシステム刷新に乗り出すのは確かに簡単ではないでしょう。

そして、もうひとつの阻害要因は、単にインフラのシステムを入れ替えるだけではなく、同時に業務自体の改善に取り組まなければならないことです。たとえば、BOPISを導入し、ECサイトへの注文が急増したとします。そのとき、実店舗・倉庫の業務の体制やフローが従来のままでは、いずれ対応しきれなくなるのは自明です。BOPISの導入は、システム刷新と業務改革を両輪として進める必要があり、またその前提として、経営層の理解や従業員の意識改革が求められるのです。そのため、むしろ従来の経営方針や手法で実績を上げてきた日本の企業ほど、そうした方向へ舵を切るのが難しい、という側面はあるかもしれません。

セールスフォース・ドットコムは、Salesforce Customer 360というプラットフォームによって、そのようなふたつの課題を解決し、BOPISの実現を支援することができます。図2で示した通り、Salesforce Customer 360は、ECサイトや実店舗など、ショッピングのあらゆる場面で一貫したカスタマーエクスペリエンスを提供する各種ソリューションだけでなく、業務改善支援や人材育成、パートナー企業による連携アプリや技術支援などを包括的に提供するエコシステムを活用して、お客様のビジネスを成功へ導きます。BOPIS導入をご検討中の方はぜひお問い合わせください。


(註1)
Magana, Gregory. “Almost 70% of US consumers use BOPIS” Business Insider, 22 Feb 2019, https://www.businessinsider.com/us-consumers-use-buy-online-pickup-in-store-2019-2

(註2)
Petersen, Bjoern. “Four Trends Reshaping The Future Of Retail” Forbes, 23 Jun 2021, https://www.forbes.com/sites/forbestechcouncil/2021/06/23/four-trends-reshaping-the-future-of-retail/?sh=536133f64639

(註3)
しまむらグループ「2021年2月期決算及び中期経営計画説明会資料(コメント有)」2021年4月6日、https://www.shimamura.gr.jp/assets-c/uploads/e3a45528e0838bf03417cf638eaecaf7cf30ba02.pdf

(註4)
しまむらグループ「2021年2月期決算説明会質疑応答要旨」2021年4月12日、https://www.shimamura.gr.jp/assets-c/uploads/68_04_shitsugioutou.pdf


著者

國村 太亮

株式会社セールスフォース・ドットコム
Commerce Cloud プリンシパル・ビジネスコンサルタント

2009年カナダのマギル大学MBAを取得。帰国後フィリップスエレクトロニクスの自動車電球(現ルミレッズオートモーティブ)市販部門カントリーマネージャーへ。自社ECサイト構築・運営に携わる。以降、アマゾンやアシックス等でECデジマビジネスに10年以上従事し、昨年8月にSalesforceのEC領域のビジネスコンサルタントとして移籍し現在に至る。