【第11回】たった一組の夫婦が22万人を喜ばせた「幸福のサンダル」~EC素人集団 「米・雑穀のみちのく農業研究所」~

長濱 洋平

宮城県塩釜市にてインターネット通信販売で、いまや22万足のサンダルを販売するショップが存在する。一体どのようにして築き上げてきたのか、私はこの成功の秘訣とこれまでの歩みについてお話しを伺った。

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登場人物  
セブンシーズ株式会社:松田竜男
セブンシーズ株式会社:松田絵美子
米雑穀のみちのく農業研究所:長濱洋平
※敬称略

たった1組の夫婦が22万人の足を喜ばせた「幸福のサンダル」

たった1組の夫婦が22万人の足を喜ばせた「幸福のサンダル」

 宮城県塩釜市に通信販売で、いまや22万足のサンダルを販売する会社があると耳にした私は早速対談を申し込んだ。その名も「アジアン エスニック ガネーシャ」。このお店はたった1組の夫婦と5名の従業員さんでこれまで22万個のサンダルを販売している。

 そのサンダルの名は「ガネーシャ・サボサンダル」。まだEC出店していない時代に実店舗にて販売をはじめた当時の仕入れ数は12個。しかも偶然にもタイの2万店もある市場から実はこの商品をみつけなんとなく仕入れをしてきたのがこの「ガネーシャ・サボサンダル」であった。

 店頭に置いておくといつの間にか気づくと売り切れていて、次回また仕入れに行くときは「あのサンダル必ず買ってきて」と専務がお決まりの言葉のように社長に告げ、おくりだしていたという。そんな「ガネーシャ・サボサンダル」が月30足→月100足→お客様からのレビューを参考に、甲の編み目の統一やソールの改良など試行錯誤を重ねて、いまや10年超えて販売累計22万足以上にまで成長した。

 創業20年という歴史の中でこの雑貨販売店で生き残る手腕はすごいことだと思う。雑貨店というとその商品の特異性により客層の獲得や定着化は私のような食品業よりとても難しいと思う。アイテム数の多さから始まりカラーバリエーションまで商品管理・ページ作成はその数だけ手間がかかる。まさに伝え方のプロフェショナリスト。

 その中で勝ち残る理由は何があったのか?このお二人から学ぶことはあまりにも多すぎる。商売・パートナー・コミュニケーション・そして夫婦の形。こんな人生がおくれたら幸せだなとつくづく感じた。

ピンチとチャンスの21年「地震・泥棒・火事・津波」

ピンチとチャンスの21年「地震・泥棒・火事・津波」セブンシーズ株式会社代表取締役 松田竜男氏・専務取締役 松田絵美子氏
 「アジアン エスニック ガネーシャ」は1997年・実店舗を宮城県塩釜市に7坪の店舗を借りてスタートした。当店は代表取締役 松田竜男氏(1965/7/4産まれ・現在50歳)専務取締役 松田絵美子氏(1977/2/9産まれ現在40歳)の夫婦よってプロデュースするアジアン雑貨の専門店。「ガネーシャ」という店舗名の由来はインドの神様・学問商売・の幸運の神様を意味し、近年ではドラマ「夢を叶える象」で使われた。

 そんな松田さんに「今までのピンチはどんな時でしたか?」質問したら、こう返ってきた。「雷以外はすべて経験したかな(笑)?」始まりは出店数年後仕入れに海外出張中、近所から出火した火災による「もらい火」により店舗全焼。その数年後泥棒による店舗損壊・さらに東日本大震災による津波による店舗浸水。これだけの苦難を乗り越えたバイタリティーはすべてお客様であったと松田夫妻は語った。

 火事で店舗が焼失したときは地元のお客さんが自らガネーシャ再建募金活動をしてくれ再建することになったし、津波で店舗はおろか商品が水没したときはさすがに「もうこの町からお客さんが離れていくのでこの町では商売ができなくなるから閉店しよう」と思った。

 しかしある一人のお母さんが「うちの子供があと1週間で入園式だから親の私はともかく子供にはお洒落な服着せて入学式にいかせてあげたいの。だからこんな震災直後の時で申し訳ないけどガネーシャにはお洒落な服がたくさんあるのを昔から知っていたから最後の頼りにこのお店に来たんです。」震災からわずかまだ2週間しか経っていない時点のこの地区は水はおろか、電気なし・ガスなし・たった10L のガソリンを手に入れるのに朝から何時間も並ぶそんな時であった。

 もはや生きるために精一杯でお金の価値は二の次。しかしこのときに考えが変わったという。「この町でたった一人でもガネーシャを必要としてくれる人がいるんだ。ならば再建しよう」そして奇跡的に浸水しなかった2、3枚のワンピースを店舗から必死に探し出し、その場でそのお客様に「これしかなかったのですがよろしかったらどうぞ選んでみて下さい」とお渡ししたという。さすがにその時は胸が張り裂けそうになった瞬間だったと松田氏は云う。

 自分が商品を買ってもらうことよりもお客様から頂く感謝の笑顔がこれほどまでに大きい励みになるものとは・・・・。私にはこの道(雑貨販売)しかなくて20年以上一筋にやってきたこの仕事を震災をきっかけに捨てようとしたのを踏みとどまらせてくれたのはやはりこのお客様だった。松田夫妻は目に涙をこらえてこの一件を話してくれた。

松田社長・専務の未来に質問する~ガネーシャメッセージ~

松田社長・専務の未来に質問する~ガネーシャメッセージ~

質問①松田氏が今、最も手掛けていることは何ですか?
 「3.11で世界中から受けた恩を返すのではなく困っている誰かに、そして昨今起きたネパールの大震災の復興支援をするべく、楽天での売り上げの一部をネパールに送っていてそれを更にお客様を巻き込んで支援を続けたい。」

▼ショップURLはこちら
http://www.rakuten.ne.jp/gold/auc-ganesa/

質問②1年後の発展目標は?
 「ネパールにもっと雇用を創出して子供たちを笑顔にしたい」

質問③EC理念は何ですか?
 「いつも画面の向こうに人がいる」

質問④当店(米・雑穀のみちのく農業研究所)とコラボ企画をするとしたら何をしたい?
 「米袋をかわいくする。インドのジュート素材の米袋を作ってそこにデザインを入れて二重包装にしてキッチンに置いていたらかわいいく見えるお米にしてみたい。」

~最後に~
 今回の対談で感じたことは奥様の絵美子専務の輝きである。今日、EC事業は子育てをする母の最も手に付けやすい仕事であるのではないか?逆に女性の憧れだという声が多い。

 絵美子専務はその生き様を代表的にとてもわかりやすく伝えてくれた。女性なら誰もが「こんなお洒落な雑貨に囲まれて暮らしてみたい」と思うその気持ちやトレンドに敏感に感度のいいアンテナを維持し続ける情報力は日々の専務の努力の賜物であろう。母親として妻として経営者としてECプロデューサーとして多彩な顔を持つこの「ガネーシャ」にはまだまだたくさんの魅力が隠れていると感じる。夫婦でお店を経営している方、これからやろうとしている方にはぜひともガネーシャ松田夫妻を注目していただきたい。成功の秘訣が必ずある。


著者

長濱 洋平 (Youhei Nagahama)

1974年1月23日宮城県産まれ。お米のサラリーマンを経て現在の株式会社東穀を設立。
PCでアンダーバーの出し方すら知らない素人がECを始めて5年で楽天市場ショップオブザイヤーを受賞。そして今年も受賞し、2年連続受賞。現在43歳。