【韓国越境EC事情】 独自に開発したスニーカーで越境EC展開、「タッチグラウンド」
韓国のECサイトは、越境ECに積極的な動きを見せていて、現地向けカスタムサービスの提供を受けることにより、日本のユーザーからも関心が高まっています。このコラムでは、ECプラットフォーム「cafe24」を通じて、越境ECに取り組むヒットショップとその理由について、ご紹介します。
今回のヒットショップは、外資系企業で培ったノウハウを活かし、高校時代から夢見てた自分のスニーカーブランドを立ち上げ、積極的な越境ECに取り組んでいる「タッチグラウンド(http://jp.touchground.co.kr/)」です。
スニーカー専門通販「タッチグラウンド」を率いるチェ·ヨンCEOは、起業前から、関連業界ではよく知られた人物でした。彼は、グローバルスポーツ会社のMD(商品企画者)として働きながら、ヒット作を相次いで誕生させた経験もあり、2,000足以上のスニーカーを集めたコレクターとしても注目されたのです。
2014年、チェCEOは、高校時代から夢見ていた自分のスニーカーブランドを作ろうと思い、会社を退職し、EC発ブランド「タッチグラウンド」を立ち上げました。
実際、韓国はEC化が進んでいることと、ネット起業へのハードルが低いため、企業で働いた経験に基づきEC発ブランドを立ち上げるケースが多くなっています。特に、チェCEOのように、外資系企業で積んだ海外市場の情報やブランド戦略などを事業アイテム選定や運営戦略に活用することが多いようです。
「高校時代から単なる趣味にとどまらず、世界に通じるブランドを作ろうという明確な目標がありました。スニーカー事業は、ブランド戦略やデザインノウハウ、大量生産システムの構築が必要です。特定したマニア層のニーズに応じる手作り靴とは違うシステムなので、大胆な戦略と協業システムの構築が必要だと思いました。」(チェCEO)
協業システム構築のため、彼は、シューズデザイナー及び制作者、ハンドメイド生産ライン業者などと提携を組み、各工程担当者とリアルタイムでコミュニケーションできる生産システム構築に取り組みました。
これに加え、外資系企業で培ったブランド戦略やデザイン感覚で起業翌年から現在まで毎年売り上げを伸ばしている状況で、今年の年商目標は、1.2億円を目指しています。
アメリカンスタイルでオリジナル商品開発
タッチグラウンドは、アメリカで1970〜80年代ぐらいに流行った「アメリカンヴィンテージ」スタイルをコンセプトとしてたスニーカーを生産しています。また、競合ブランドと差別化を図るため、様々な種類のスニーカーを扱うより「選択と集中」戦略をとっています。
このため、チェCEOは、20〜30代女性をターゲットに向け、カスタムデザインとマーケティング戦略に取り組んできました。同時に品質向上とコスト削減の両立を成し遂げることを徹底しています。
このような戦略によりユニークなデザインと品質を備えたタッチグラウンドならではのスニーカーが制作できるようになり、今まで60種類以上のヒット商品が誕生したと言います。韓国で、成長を遂げたタッチグラウンドは、昨年12月、グローバルECプラットフォーム「cafe24」で、海外向けECサイトを開設し、越境EC事業にも本格参入しました。
そのうち、特に日本女性ユーザーからの反響が相次いでいるようです。チェCEOによりますと、日本企業と提携し生産工場で制作した高品質のデザインスニーカーが、日本顧客から支持を得ている主な要因だそうです。現在、中国市場より日本市場を優先的に力を入れて事業を展開しています。
[タッチグラウンド チェCEOとの一問一答]
--越境EC事業のきっかけと日本市場に参入した理由は?
起業前から、韓国国内に留まらず海外展開を優先的にして事業展開を行ってきました。このため、弊社自社サイト上で海外のユーザーも商品購入が可能なシステムを構築しました。
事業当初から、日本の消費者が好む高品質とユニークなデザインの製品を取り扱ってきただけに、日本進出は常に目指していたんです。特に、日本市場に安着することは、1つのブランドとして認められたことなので、世界市場にも通じることを意味します。また、個性的なスニーカーのニーズが多いことから、CEOとして日本を主力市場にしたい気持ちが多かったです。
--言語圏によって、運営戦略に違いはありますか?
基本的に弊社のスニーカーが、70〜80年代にアメリカで流行ったスタイルをモチーフにしているため、その範囲内で商品企画を行い、海外展開をしています。中国の場合、中国人が好む固有カラーを入れた商品をバイヤーのニーズに合わせカスタマイズする現地化戦略に取り組んでいます。特に、偽造品流通防止のため、正品管理などに徹底しながら「韓国製」を強調するとともに、現地バイヤーとの信頼構築に力を入れています。
日本市場は、品質や納期など全般的に信頼が最も大事なため、サンプルテストを行い、バイヤーとコミュニケーションをしています。特に、日本はマルチショップが非常に多いことから、店舗とのコラボレーションビジネスが重要だと判断しています。そのため、1:1でデザインコンサルティング部署を運営しながら、バイヤーが望む素材、カラーをカスタマイズした製品開発に取り組んでいます。
--日本市場における販促施策について教えてください。
若者がよく使うFacebookやインスタグラムなどを積極的に活用しています。弊社のブランドコンセプトをよく伝えられるインフルエンサーを発掘し商品紹介チャネルとして提携しています。SNSアカウント上には、商品、モデル写真などを定期的に更新し、顧客とのコミュニケーションを新商品開発の参考にしています。
- 今後の計画について
グローバルビジネス展開に注力していく予定です。今年8月、大阪で韓国KOTRAと大阪商工会議所が共同主管した輸出商談会に参加し、多数の日本バイヤーと相談会を行いました。
当日の相談会で弊社製品の競争力に確信を持つことが出来ました。今後も、定期的に展示会参加を通じて、市場や顧客のニーズを分析し、日本ユーザーに向けて様々な商品を提供していきます。
ECのミカタ編集部の見解
「タッチグラウンド」ではブランドの肝となる70〜80年代のテイストを重んじながらも、国や地域に合わせてローカライズすることで多くの支持を得ていることが特徴と言えるでしょう。そこには、スニーカーが自分を彩る自己表現の方法の一つとして受け入れられているというのもあるでしょう。
そこにはチェ·ヨンCEOの外資系企業で培ったノウハウやシューズコレクターとしての経歴が活かされるだけでなく、彼らの自分達のブランドへの誇りと同時に、お客様となる国へのリスペクトがあってこそなし得るものです。これから参入する市場をリサーチし、国や地域に合わせて運営戦略を組み立てる点などが「タッチグラウンド」の成功を読み解くヒントになりそうです。