AmazonとZOZOTOWNが変える日本のEコマース

林 宜多

日本のEC市場には現在、約900万人のユーザーがおり、2021年までには600万人増加すると推測されています。この数は、アジアでは中国に次ぐ規模です。ご存知の通り日本は数年前までは、楽天などの国内企業が寡占する市場でしたが、ここ数年は、Amazonの成長が著しいです。また、Amazonとビジネスモデルが似ている新興のZOZOTOWNが飛躍をみせています。今回のコラムではAmazonとZOZOTOWNが成功したビジネスモデルと、彼らがもたらした日本のEC市場への変化を、米AppLovin(アップラビン)の日本代表の林 宣多が紹介します。

「モバイル端末への移行」が成功のカギ

日本はスマートフォンの普及率が高い一方、高齢化社会などの理由から現金による決済が根強く残っている市場です。そのため諸外国と比べると、スマホなどによるモバイル決済への移行が遅れています。たとえばアメリカではオンラインショッピングの24%がモバイル端末で取引されているのに比べ、日本では7%しか取引されていません。

それにも関わらず、日本では国内外のEC企業の動きは活発で、特にAmazonはここ数年、日本のビジネスに力を入れてきました。その結果、Amazonは楽天の売上を追い抜き、日本の首位におどりでました。


最近ではそのAmazonに続けと、Amazonのビジネスモデルを参考にして新興の国内企業が増えてきました。なかでも320億円の市場規模があるファッション業界の動向は活発です。なおファッションは、今後のEC市場で家電やメディアを抜いて最大の業界になると予測されています。

この市場の拡大を後押ししているのは、モバイル・コマース(Mコマース)とアプリの利便性と安さに惹かれ、率先して利用するモバイル・ネイティヴ世代です。彼らがMコマース市場の牽引役になることで、2017年のオンラインショッピングのうちモバイル端末の取引が7%という現状が、2021年には50%以上へ引き上がると予測されています。

つまり、Mコマースが市場を席巻するのはもう間近に迫っているのです。次の章では日本の新世代モバイル企業、マーケター、そして消費者に多大な影響を及ぼす日本のAmazonのビジネスモデルを、Mコマースの成功サイトであるZOZOTOWNと比較して考察してみましょう。

Amazonにならって、そして次なる体験を

Amazonが日本で急成長できた理由のひとつに「スマートな物流に支えられたオンライン・マーケット」というビジネスモデルがありました。小売業界のニュースメディア「RetailNews.asia」はこれについて、「Amazonジャパンは自社の流通センターへ多大な投資をし、現在は12箇所の流通センターと4箇所のプライム・ナウ・センターを抱えています。配送拠点が増えたことにより、Eテーラー(Eコマースの小売業者)は効率的な物流を手に入れることができました」と語っています。この結果、日本のAmazonは、ドイツのAmzonに次ぎ海外市場で二番目に大きい規模になりました。

日本のAmazonの成功は、日本のEC業界のショッピング・テクノロジーの変化に大きく影響しました。財務、システム、そしてマーケティングのありかたを変えてしまったのです。

一方、日本のMコマースの勝ち組みとして、ZOZOTOWNが挙げられます。ZOZOTOWNを運営するZOZOは、時価総額1兆円を超えるまでに成長しました。

ZOZOTOWNは Amazonにならい、商品購入後の60日以内に支払いできる“後払い(ツケ払い)”の決済方法をオプションで提供しています。衝動買いを促し、返品・返金につながるリスクが高いとされているため、このオプションが成功しているかどうかを判断するには時期尚早ですが、こうしたオプションはモバイル・ネイティブ世代をターゲットにしていると言われており、実際に30歳未満のZOZOTOWN利用者の57%が後払いオプションを利用していることが分かっています。

またAmazonとZOZOTOWNの異なる点は、Amazonは誰でも販売が行えるプラットフォームですが、ZOZOTOWNは取扱い事業者をセレクトしています。スタートアップ企業の動向を追うメディア「btrax」は「ZOZOTOWNはブランドの需要と将来性を考慮して、取り扱うブランドを選定しています。日本の若者に人気のブランドであればほぼ揃っており、キューレーター的な役割も担っています」と述べています。

一方、ZOZOTOWNの競合であるユニクロ。実店舗をメインに勝負していますが、ビジネスモデルとしてはAmazonと類似しているところがあります。「低価格で良質な服で市場を構築し、物流と倉庫を整備すればビジネスは拡大できる」という点でこちらもAmazonの本質と同じなのです。

まとめ

日本でのAmazonやZOZOTOWN、その他のEC、Mコマース企業の盛り上がりは、グローバル市場と同様、スマートフォンの普及、世代交代、モバイル決済システムの発達、そして市場参入規制の緩和など、さまざまな要因がからみあいながら成長してきているのは事実です。とはいえ、Amazonの日本でのビジネスは、成長率と生産性の急激な拡大、そしてモバイル・ネイティブ世代の購買欲向上をもたらたしており、すばらしいストラテジーであるのは間違いありません。


著者

林 宜多 (Norikazu Hayashi)

AppLovin日本法人代表取締役。GREE、Yahoo! Japanでの広告プロダクト立ち上げ後、米国に拠点を移し、設立直後のAppLovinに参画する。AppLovin本社の営業責任者として事業の成長をけん引した後、2016年4月にAppLovin日本法人の代表取締役に就任する。

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