ユーザー視点で考える 使いやすいLINEリッチメニューのパターン【「EC事業者のLINE活用、エンドユーザー(生活者)はどう捉えるのか」vol.5】

岡田 風早

我々はLINE公式アカウントのパートナーをやっているので事業会社からLINEと別のプラットフォームの比較について聞かれる機会がよくあります。いつもは立場があるんですが、前回同様に今日も仕事のことを忘れて、よく買い物をする1ユーザー視点だと実際にどう思っているのかを書こうと思います。

今回はユーザー視点で実際に使いやすかったECサイトを運営しているLINE公式アカウントのリッチメニューのパターンを書きました。ある意味メッセージ以上に目立つリッチメニューは、大きく分けて【売上重視】か【顧客体験重視】で設計しているようでした。

●過去のコラムはこちら!第1回/第2回/第3回/第4回

スマホ上ではリッチメニューは単体ではない

ユーザー視点の話の前にひとつ重要な点として、リッチメニューは機能としては単独で成り立ってますが、スマホの画面上では単体ではないということを書いておきます。

メッセージとリッチメニューは別々に語られることが多いのですが、ユーザーがスマホで実際のLINEの画面を見ると、上部にメッセージ、下部にリッチメニューの表示となるため、どちらか単体ではなく両方が同時に視界に入る前提で画像やメッセージを考える必要があります。

当然ですが、画面下部に表示されるリッチメニューが目立ちすぎると肝心のメッセージよりもユーザーの気持ちはリッチメニューにいってしまうので、色合いや見た目も含めてメッセージよりは落ち着いた感じで設計すると良いでしょう。もちろんブランドカラーが元々強めの色であれば、そこはブランドカラーにした方が統一感はあります。リッチメニューに表示しているキャンペーンと同じクリエイティブのメッセージを送ってしまうのももったいないですよね。メッセージのテスト送信を行う際は、必ずリッチメニューも本番環境と同じ状態でテストして全体のバランス感もチェックしておくと良いでしょう。

売上重視のリッチメニュー

このように新商品や実施中のキャンペーンが目立つパターンです。これはユーザー視点だとどうでしょう。商材によって合う・合わないがあるかと思います。

顧客のターゲットが広い飲料や食品メーカーやコスメは相性が良いのかよくこのパターンが使われているのを目にします。確かに商品が目立ち、認知は取りやすいですね。ユーザーとしては話題の新商品を知ることができたり、応募必須のキャンペーンを目立たせてくれるのも有難いです。

特定の商品やキャンペーンだけでなく、より大きなカテゴリで、売れ筋ランキングやコーディネート、新入荷などの商品群へのリンクを設置するケースもあります。

どちらもそうですが、売上を重視すると企業よりのリッチメニューになりがちなので、メッセージの内容と全く同じにならないような注意は必要です。メッセージの内容、リッチメニューのクリエイティブからサイトへ遷移というのが理想的なパターンだと思うので、ユーザー視点でそういう気持ちにさせられるかは企業の腕の見せ所ではないでしょうか。

顧客体験重視のリッチメニュー

このようにマイページを始めECサイトの会員関連のページへのリンクや、店舗がある場合は会員証を表示できるリンクがあるパターンです。店舗のみではなくECサイトのLINE公式アカウントであれば個人的にはこちらの方が使い勝手が良いですね。ユーザー視点でも便利に感じるケースが多いと思います。

お気に入り商品や購入履歴、定期便の設定や登録情報の変更などのユーザーの利用頻度が高い設定メニューだけでなく、実店舗の情報やカスタマーサポートへの導線などもあると便利ですね。

見かける頻度は少ないのですが、これがあると便利だなーと思ったリッチメニューを利用したショートカットは商品の閲覧履歴でした。深く考えず商品を流し見した数日後にふんわりと思い出して気になり、あの商品なんだっけ?といったケースの時にすぐに見つけられます。割と数日後になってから思い出すようなパターンの時はそのまま買うケースが多い気がします。

タブで切り替えるパターン

売上重視か顧客体験重視かの二択ではなく、両方をタブで切り替えるパターンもあります。結論としては柔軟性が高いこのパターンがユーザー目線でも企業目線でも一番無難な気はしています。

ユーザーからすればワンタップ増える可能性が高まりますが、便利なショートカットが増えることはメリットの方が大きいです。企業目線であれば部署間でリッチメニューの枠を取り合うようなことも起きません。

今売り出したい商品をデフォルトで表示される前面に出しつつ、便利なショートカットも別タブに配置が可能です。タブを使った見せ方に関しては工夫次第でまだまだいろんな可能性があると思います。

まとめ

リッチメニューを売上重視か顧客体験重視か、どちらに重きをおくかは事業のフェーズに応じて決めれば良いと思います。商材やお客様の年代などによって合う、合わないはあるので、これが正解というデザインは一つではありません。

いろんなサービス・店舗のリッチメニューを分析するのも方法の一つですが、やはり一番は実際にユーザーとなっていろんなLINE公式アカウントを友だち追加してリッチメニューを触ってみるのが良いでしょう。

自分の体験から感じた良い点や改善点を自社のサービスへ活かし、結果的に質の高い顧客体験を自社で再現できれば、新しいことを自分で体験することの大切さが身に染みることに加えて、自社へ還元するために学ぶこと自体が楽しくなっていくでしょう。


著者

岡田 風早 (Kazahaya Okada)

ソーシャルPLUSのカスタマーサクセスとして2015年にフィードフォースに入社し、プロダクトマネージャーを経て執行役員に。2021年9月にソーシャルPLUSが分社化して現在の役職に至る。
LINEヤフー社のTechnology PartnerとしてLINEログインやミニアプリなどのAPI活用、Sales PartnerとしてLINEのCRM活用、またShopify Partnerとしてエンタープライズ向けのShopify × LINEやShopify Flow・メタフィールドの活用、データ設計を得意とする。

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