EC大手に勝つための「50の理論」と「豊富な実践論」【書籍プレゼント付き】

最終更新日:

ないない尽くしの小規模事業者が、大手事業者が決して真似ができない強さを得ることができるだろうか。諦めにも似た思いがつのるが、「そんなことはない。ポジショニングの変更をリードするのは、むしろ小規模事業者だ」とエールを送っているのが『小さな会社がルールを変える ポジショニングの教科書』だ。

各種のマーケティングの理論や手法は、小規模事業者が大手事業者に立ち向かうためにこそあると断言する。

といっても、マーケティング理論を説明している著作ではない。レビット、ポーター、コトラーをはじめとする経営学の大家のセオリーが約50、くわえてパタゴニア、ナイキ、ローソン、しまむら、ワークマン等々の実践例が紹介されている。現在の視座で「小規模事業者が勝てるためのマーケティング理論」を組み直し、ECマーケティングの進め方を軽快に促す、「マーケティングの啓蒙と実践の書」として薦めたい好著だ。

※『小さな会社がルールを変える ポジショニングの教科書』を抽選でプレゼント! マーケティング理論を“武器”にして、現状を打破したい方は、ぜひご応募ください(応募締切は2026年4月3日)

連載アーカイブはこちらから! 第1回第2回第3回


ダビデがゴリアテを倒したようにマーケティングは武器になる

フリーランスや個人商店、従業員が少ない会社など「小規模事業者」はハンディキャップを背負っている、と誰もが思っている。ヒトやカネなどのリソースは乏しく、それ故に競合への対抗力は弱く、知恵もなく、専門分野以外の知見もない。ないない尽くしだからこそ、「大きな企業にはない自由がある」などとうそぶいたりする。

ところが『小さな会社がルールを変える』の著者(麻生陽平氏)は、「とんでもない。『旧約聖書』で羊飼いの少年ダビデが屈強な巨人ゴリアテを倒したように、小さな会社だからこそ他社が真似をできない圧倒的な強みを持つことができる」と訴える。

少年ダビデが信念を持って投げた“つぶて”のように、巨人に立ち向かうには武器が必要だ。小ささゆえの弱点を補い、デメリットをメリットに変えるための武器である。麻生氏は、「それこそがマーケティング」であり、ポジショニングであると力説する。「マーケティングの理論やツールはすべて、『小さなビジネスの個性を活かし、勝ち抜いていく』ための戦略に他ならない」と。

経営理論特有の「圧」がない軽快な物語

『ポジショニングの教科書』は、ある街の商店街を舞台に、事業者がコンサルタントと共にマーケティング理論や手法を学んでいく過程を物語風に仕立てている。

カフェから始まった改革は評判を呼び、美容室、町工場、学習塾、独立系のフィナンシャルアドバイザー、お寺、そして商店街全体へと広がっていく。それらの取り組みを描く中で、マーケティングの大家たちの言葉やマーケティング分析の手法(ターゲットを絞り込む「STP分析」や自身の強みや弱みを知る「SWOT分析」、顧客価値連鎖分析「CVCA」等々)がわかりやすく解説される。

登場する理論は約50。洞察やエッセンスが紹介されているのはセオドア・レビット、マイケル・ポーター、フィリップ・コトラー、バイロン・シャープ、ケビン・レーン・ケラー等々のきら星の大家。コトラーは「(ポジショニングとは)ターゲットのマインド内に特有の位置を占めるように設計すること」と言い、バイロン・シャープは、「ブランドを成長させるにはロイヤルティの強化だけでなく、浸透率を高めることが欠かせない」と語るといった具合だ。

一方でドクターペッパーやアップル、パタゴニア、MOMOTARO・JEANS、ナイキ、ローソン、しまむら、ワークマン等々、理論を活用して成功を収めた実践例が織り込まれてくる。なかでも1984年の米スーパーボールの生放送時に流され、そのメッセージの鮮明さとインパクトの強さから後に伝説といわれたアップルコンピュータ「Macintosh」の60秒CMについては、「シグネチャー・ストーリー」と呼ばれるブランド論の神髄を学ぶ素材として提示される(このCMは、YouTubeにある)。

このように『ポジショニングの教科書』は、マーケティング理論の主立ったところをすき間なく網羅しているのだが、「大全」といった堅さはどこにもない。筆者もフリーランスのライターという小規模事業者だが、「SWOT分析」や「Value Graph」などは著者の勧めるままに何枚ものポストイットにメモ書きしていた。何度も自分に引き戻して考えさせられる著作なのだ。

「これがわからないと本書を買った意味はない」という専門書独特の圧力が本書にはない。むしろ理論や手法を自分なりに考えてみることが楽しい副読本的な軽快さがある。読者を引き込む足取りが非常に軽やかなのだ。

抽選で書籍『小さな会社がルールを変える』をプレゼント!お申し込みはこちら

既存の枠組みを超える鍵は「目標」と「システム思考」

この深さと軽やかさ、楽しさの同居はいったいなんだろうか。

本書の魅力の秘密は、実は著者がマーケティングの専門家として本書を書いていないことにある。略歴紹介にもあるように著者はさまざまな事業開発を経験しており、巻末の参考図書一覧を見てもマーケティング理論の学習にもひとかたならぬものがある。だから著者を、マーケティングの専門家と紹介してもなんら問題はない。

しかし本書は、マーケティングの専門家が書いたマーケティングの本ではないのだ。著者は、大学院でシステムデザイン・マネジメント(システム思考)を学び、その関連で大学院の非常勤講師を務めていたこともある。そうしたシステムデザイン工学の視点からマーケティングを解説してみせているのが本書なのである。

システムデザイン・マネジメントとは、目的を達成するために最適なシステム(仕組みや構造)を考える学問で、本書でもその一端として原因と因果とを結ぶ構造を視覚的に表現する「因果ループ」や「Value Graph」などが紹介されている。

『ポジショニングの教科書』では、既存のマーケティング理論や手法を解説するのではなく、システムデザイン・マネジメントの視点から「小規模事業者が勝てる戦略を得るために」という明確な目標を設定した上で、マーケティング理論や手法を整理し直し、各種のケースに適用させて活用ストーリーを展開している。

だから読者は、マーケティングの理論や手法そのものを学ばなければいけないという圧力から解放され、「こうすれば使えるでしょ」という著者の実践的な提案に沿って自分なりに楽しんで取り組めてしまう。これが「副読本的」と書いた意味であり、本書の画期的なポイントだ。

「マーケティングの入門書」ではなく、「マーケティングの啓蒙書」として紹介したい理由もここにある。

付箋とA3用紙から始まる、小さなビジネスの「必勝戦略」

まず必要なのは本書とポストイット、そして「2×2(縦線と横線で区切られた4マスグラフ)」を描けるA3判の用紙だけだ。あとは著者が導くままに自分自身や事業を考えてポストイットにメモし、それを「2×2」のグラフに貼り込めばよい。そこから自分は気がついていない自身の姿が浮かび上がってくる。

テレビ東京の人気番組『ガイアの夜明け』で取り上げられた企業の約8割が中小企業であるという。また先代からホテル業を引き継いだ星野温泉(現在の星野リゾート)の星野佳路社長が何年もかけて取り組んだのが、経営書など一生読まないだろうと考えていた従業員たちとともに、コトラーやポーターの理論を読み、自分たちに引き寄せて考える作業だった。その背景には「素晴らしい学者たちがまとめた経営理論は、真似するだけで私たちの力になるという確信があった」と、自著で語っている。

麻生氏は自身のホームページで、「davide marketing」という言葉を造語している。小さな事業者でもダビデのように必ず勝てる道がある。それを探す手伝いをしたい。冒頭に紹介した著者の言葉を再掲しよう。

「マーケティングの理論やツールはすべて、『小さなビジネスの個性を活かし、勝ち抜いていく』ための戦略に他なりません」

本書の著者について
麻生陽平(あそう・ようへい)さんは、1997年に青山学院大学国際政治経済学部を卒業。ウォルト・ディズニー・ジャパン(株)でサブスクリプションサービスの先駆けとなるディズニーモバイルコンテンツサービスや公式ECサイトの立ち上げとプロモーションを担い、デジタルビジネス・プロデューサーを歴任。また三菱電機(株)では国内初となるカメラ付き携帯電話開発のプロジェクトリーダーなど新規プロダクトの企画や工程管理に従事した。IFA(独立系フィナンシャルアドバイザー)であるGAIA(株)では取締役兼CMOとして同社ブランドの育成やマーケティング戦略を担い、フィービジネスの先駆者として預かり資産の拡大に貢献した。2012年に慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科を修了。2013年から2年間は同研究科イノベーション創出プログラム「デザインプロジェクト」の非常勤講師を勤めている。

【書誌情報】
小さな会社がルールを変える ポジショニングの教科書
麻生陽平 著
講談社(日刊現代)
1500円(税別)


▼『小さな会社がルールを変える』を抽選でプレゼント! EC運営に使えるフレームワークを手にしたい、現状を打破してさらなる高みを目指したい方へ。ぜひご応募ください(応募締切は2026年4月3日)

抽選で書籍『小さな会社がルールを変える』をプレゼント!お申し込みはこちら


次回のECのミカタカンファレンスは、
「ギフトEC」をテーマに、ビームスやTENTIAL、ギフトモールなどが登壇します!
お席には限りがあるため、詳細・お申し込みは下記よりお早めに。